朝日新聞社 NIE - 教育に新聞を -朝日新聞社 NIE -教育に新聞を-
朝日新聞社 NIE -教育に新聞を-

 印刷印刷  l  記事  l  学習のポイント  l  ワークシート(PDF) l  この記事を手がかりにトップへ  




この記事を手がかりに

 ニュースQ3
「国の伝統文化と違う? 消えた『パン屋』に憤り」
 (朝日新聞社発行 2017年 4月 6日付 朝刊29ページ)


 パンにかかわる人たちが怒っている。2018年度から使われる小学校1年の道徳の教科書で、教材として登場する「パン屋」が「和菓子屋」に差し替えられた。文部科学省の検定で教科書に「物言い」が付き、出版社が修正したためだ。同省は「伝統文化の尊重や郷土愛などに関する点が足りなかった」と説明する。パンは伝統文化ではないのか――。


■給食用に赤字でも

 「こんな失礼な話はない」。全国約1500のパン製造業者が加盟する全日本パン協同組合連合会(東京)の西川隆雄会長(74)は憤る。加盟社の多くは学校給食のパンを製造する。「赤字が出ても『子どもたちの給食は守らないと』と頑張っている経営者もいる。その学校の教科書でなぜこんな扱いをされるのか」。連合会は近く文科省に抗議する予定だ。
 今回の検定では、東京書籍の教科書の「にちようびのさんぽみち」という教材で、パン屋のイラストや記述が、和菓子のイラストや和菓子屋に関する記述に変わった。


■日本らしさを体現

 パンマニアで「パン屋さんめぐりの会」代表の片山智香子さん(45)=横浜市=も疑問を持つ。片山さんによると、あんパンやクリームパンなど、具を包むタイプは「日本独特のパン」だという。「日本のパンは、海外から来たものをカスタマイズするのが好きな日本らしい文化の表れでは」と話す。
 愛知県蟹江町は人気のパン店が集中していることから、店めぐりに便利な地図を作り、町歩きに利用してもらっている。町の担当者は「町にはおいしい和菓子もありますし、パンと和菓子は本来対立するものではないのでは……」。
 日本にパンが伝わったのは、16世紀にポルトガル人が来航した際とされる。その後、国内でのパン製造は下火になったが、江戸時代末期の伊豆・韮山で代官をしていた江川英龍(ひでたつ)が兵士の携帯食としてパンに注目。農兵に自ら研究して作ったパンを持たせ、訓練などを実施した。今も「パン祖」とたたえられ、地元の静岡県伊豆の国市では「パン祖のパン祭」が毎年開かれている。
 英龍についての著書がある公益財団法人「江川文庫」学芸員の橋本敬之さん(64)は「パンは実は歴史のある食べ物。西洋や中国大陸の進んだ文化を取り入れてきた、すばらしい日本の文化の一つなのでは」と話す。


■文科省「指示せず」

 今回の修正について、文科省の担当者は「文科省が書き直しを指示していない。誤解だ」と反論する。3月24日の教科書検定の公表以降、同省には抗議の電話が約30件あったという。
文科省がつけた検定意見と、出版社による修正の一例
 小1の道徳で教えなければならない項目は正直や感謝、礼儀など19ある。東京書籍の教科書は約120ページに及ぶ本全体で「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持つ」との項目に照らして不適切と指摘され、パン屋の記述も含め数カ所が修正された。
 文科省の担当者は「個別の記述の変更はあくまでも教科書会社の判断だ」。一方で、ある教科書会社の編集者は、19にも及ぶ項目が細かく決められていることを踏まえてこう話す。「低学年が読みやすいように文章量を増やさず、欠けていると指摘された要素を補わなければならない。工夫の余地は、おのずと限られる」

 (日高奈緒、前田育穂)

★ NIEとは ★

 「Newspaper in Education(教育に新聞を)」の頭文字をとった略称のことです。
【→つづきを読む】


★ 新着ニュース(随時更新)★

NIE事務局から


★ 新聞授業実践ワークブック ★
  改訂版を発行 new

新聞授業ガイドブック 改訂版

朝日新聞社ではNIEの実践に向け、授業ですぐに使えるワークシートを盛り込んだ「新聞授業実践ワークブック改訂版」を発行しました。解説編の「新聞授業ガイドブック」とともにご希望の学校に無料で提供しています。【→詳しくはこちら】


★ 新聞出前授業 ★

新聞出前授業


天声人語 書き写しノート


語彙・読解力検定


朝日新聞デジタル



リンク一覧


★ NIEとは ★

 学校などの教育現場で新聞を教材として活用し、児童・生徒たちの学力とモノを考える力の向上を図るための活動です。歴史的にみると、1930年代にアメリカで始まり、世界各国に広がっています。日本では1985年の新聞大会で提唱されました。89年から、一定期間学校に新聞が無料で提供される「NIE実践指定校」制度がスタートし、その後少しずつ規模を拡大して現在にいたります。