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 沖ノ島、一括で世界遺産
 ユネスコ 「除外」4資産も復活
 (朝日新聞社発行 2017年 7月10日付朝刊30ページ)


 ポーランドのクラクフで開かれているユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産委員会は9日、福岡県の「『神宿る島』宗像(むなかた)・沖ノ島と関連遺産群」を世界文化遺産に登録することを決めた。構成8資産のうち、ユネスコの諮問機関が4資産を「除外」するよう勧告したが、世界遺産委は逆転で一括登録を認めた。

 国内の文化遺産は17件、自然遺産と合わせた世界遺産は21件になる。

登録が決まった8資産/「復活」した4資産  構成資産は、本土から約60キロの玄界灘に浮かび、宗像大社沖津宮(おきつみや)がある沖ノ島と、島に付随する小屋島(こやじま)、御門柱(みかどばしら)、天狗岩(てんぐいわ)(以上宗像市)の4資産のほか、本土から約11キロ沖の大島にある中津宮(なかつみや)と沖津宮遥拝(ようはい)所▽本土にある宗像大社辺津宮(へつみや)(同)▽信仰を支えた宗像族の墓とされる新原(しんばる)・奴山(ぬやま)古墳群(福津市)の計8資産。沖津宮と中津宮、辺津宮には「日本書紀」にも登場する海の3女神をまつる。

 諮問機関「国際記念物遺跡会議」は5月、後者の4資産を除外勧告したが、この日は各国から「すべての要素が互いに機能し価値がある」など一括登録を支持する発言が相次いだ。

 沖ノ島は4~9世紀、朝鮮半島や中国大陸への航海の安全などを願う国家的祭祀(さいし)が行われた。8万点にのぼる奉献品(国宝)が出土し、「海の正倉院」とも称される。 (後藤洋平)


■喜ぶ地元市長ら

 日本政府代表団の席には各国から祝福の握手が相次ぎ、日本側は満面の笑みで応じた。谷井博美・宗像市長は「長いようで短かった。どう保護し管理していくかきちんとしたルールをつくらないと」。宗像大社の葦津敬之宮司は「正直、ホッとした。ありがとうの一言に尽きます」と喜びをかみしめた。



 裸で海に入り、体清める    凜とした空気、異界のよう 


■上陸ルポ

 沖ノ島は古来、厳格な宗教的タブーによってその姿が守られてきた。宗像大社から許可を得て上陸した。

(上)全裸で身を清める人たち(下)宗像大社沖津宮=いずれも2017年、福岡県宗像市、小宮路勝撮影  福岡県宗像市のターミナルから高速船に乗り、まずは大島の宗像大社中津宮へ。沖ノ島にある沖津宮、本土の辺津宮を加えた三宮一体となった宗像三女神への信仰が息づく場所で、沖ノ島への航海の安全を祈る。大島からは1時間余り。荒々しい岩肌と濃い緑に覆われた島影が視界に飛び込んできた。

 本土の沖合約60キロにぽつんと浮かび、周囲わずか4キロ。沖ノ島は、絶海の孤島という言葉がぴったり合う。波止場に船が着き、全裸になって海に入り身を清める。

 鳥居をくぐり、沖ノ島の心臓部へ。浜から続く急な参道を上り、森に入ると昼間でも薄暗い。約400段の石段を進み、パッと視界が広がった先に現れたのが沖津宮の社殿だ。田心姫神(たごりひめのかみ)がまつられた社は頑強な巨岩群の合間にあり、巨岩に見守られているかのようだ。

 3次にわたる学術調査で、岩陰などから馬具や鉄製品など8万点に及ぶ奉献品が出土。すべて国宝だ。4~9世紀には岩上→岩陰→半岩陰・半露天→露天と場所を変え、国家祭祀(さいし)の変遷が明らかとなった。

 さらに社殿の横から続く道へと歩みを進めると、金製指輪などが見つかった岩陰遺跡にたどり着く。

 祈りの場となった岩陰の近くに立ってみた。聞こえるのは風で揺れる木々の音と鳥のさえずりだけ。凜(りん)とした空気が場を包み、どこか異界にいるような気分に襲われた。 (安斎耕一)


■<解説>一体的な結びつき、説明奏功

「沖ノ島」の世界遺産登録が決まった。審議に先立つイコモスの評価で除外勧告を受けた本土の社殿や古墳群も無事「復活」。政府や地元の丁寧な説明が功を奏した格好だ。

 焦点は除外対象の4資産の処遇だった。一時は古代信仰が継続して現代に至るとの主張に疑義が唱えられ、世界というより国内的だとされた。古墳群にも学術的な裏付けの乏しさを指摘する声があった。

 それだけに一括登録は厳しいとの見方もあったが、資産同士の密接な結びつきを、共通する出土遺物や史料の記述で強調し、長い年月にもかかわらず信仰の本質に変化はないと説いた。その結果、8資産を一体でとらえて初めて沖ノ島の価値がわかるとの主張が各国に理解されたようだ。

 だが、むしろ新たな課題を突きつけられたといえる。登録で認知が高まり、禁断の島が好奇の目にさらされる懸念は否めない。これを機に、触れずに静かに見守る姿勢も保護につながることを周知し、社会全体で守っていく枠組みの構築が必要だ。 (クラクフ=編集委員・中村俊介)

■日本の世界遺産

登録年記載物件名
1993年法隆寺地域の仏教建造物(奈良)       
     姫路城(兵庫)               
     屋久島(鹿児島)*
     白神山地(青森・秋田)*
  94年古都京都の文化財(京都・滋賀)
  95年白川郷・五箇山の合掌造り集落(岐阜・富山)
  96年原爆ドーム(広島)
     厳島神社(同)
  98年古都奈良の文化財(奈良)
  99年日光の社寺(栃木)
2000年琉球王国のグスク及び関連遺産群(沖縄)
  04年紀伊山地の霊場と参詣(さんけい)道(三重・奈良・和歌山)
  05年知床(北海道)*
  07年石見銀山遺跡とその文化的景観(島根)
  11年小笠原諸島(東京)*
     平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群(岩手)
  13年富士山―信仰の対象と芸術の源泉(山梨・静岡)
  14年富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬)
  15年明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島・山口・岩手・静岡)
  16年ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献(東京)〈国立西洋美術館〉
     (*は世界自然遺産)

◆キーワード

<世界遺産>
 1972年の世界遺産条約に基づき、各国政府の推薦の中から、諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)や国際自然保護連合(IUCN)の調査・勧告を経て、21カ国でつくる世界遺産委員会が年1回、「顕著な普遍的価値」や「真正性」、保全措置などの観点から登録の可否を決める。世界遺産の総数は1052件(昨年7月現在)

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