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 常磐線で破水「もうダメ」
 覚悟決めた 取り上げた隣席の女性
             (朝日新聞社発行 2018年 1月20日付 夕刊 7ページ)


赤ちゃんを取り上げた最上都寿美さん  電車で隣に座っていた女性が産気づき、破水した――。
 19日、千葉県内を走るJR常磐線で、乗り合わせた最上都寿美(つづみ)さん(40)はとっさに対応し、車内で生まれた女の赤ちゃんを取り上げた。自らも5人の出産経験がある最上さんは「無我夢中で、勝手に体が動いていた」と振り返る。

 女性が産気づいたのは、19日午後1時30分ごろ。電車が松戸駅を発車してすぐだった。日暮里駅で多くの乗客が降り、車内はさほど混雑していなかった。

 最上さんは、都内の病院から外泊許可がでた四男(4)を連れ、茨城県取手市の自宅に帰る途中。優先席に座り、ひざの上で四男を寝かせていた。

 ふと、隣の女性が気になり、目を向けると、顔を赤くして手すりにつかまっていた。

 「大丈夫ですか?」

 声をかけると、女性から思わぬ返事が来た。

 「陣痛が来ちゃいました」

 松戸駅から、次の停車駅の柏駅までは約8分。女性のおなかを触らせてもらうと、まだ張っていない。「3人目なんです」「柏で降りて病院に行きます」など、話もできていた。

 ところが、柏駅に到着する頃、女性は座っていられないほど苦しみ出した。腰をおさえるように体を反らせ、言葉を絞り出した。

 「破水しちゃいました」

 くずれるように、床に座る女性。四男の着替えと一緒にバスタオルを持っていた最上さんはその1枚を取り出し、女性の体の下に敷いた。別のタオルを近くの女性客にも渡し、周りから見えないように持ってもらった。

 電車が柏駅のホームに滑り込むと最上さんはいったんホームに出て「発車しないで止めて!」と叫んだ。すぐ車内へ戻ると、バスタオルの上で横座りしていた女性は「もうダメです」と言った。最上さんは覚悟を決めた。元看護助手だが、お産に立ち会ったことはない。「ここで生まれるんだ。なんとかしないといけない」。5人を産んだ経験が背中を押した。

 「もう生まれる」と女性が言うと、赤ちゃんの頭が「ポンと出てきた」。最上さんが慌てて頭に手を添えると、体もするりと続いた。駆けつけた駅員から毛布をもらい、くるんで抱き上げると赤ちゃんは足をバタバタとさせて「オギャー」と泣き声を上げた。

イラスト・下村佳絵  「生まれましたよ。元気そうです」と伝えると、女性はほっとした様子でうなずいた。

 最上さんは難産が多く、出産に34時間かかったこともある。電車内の出産だったが、思わず女性に「安産で良かったですね」と言葉をかけた。座席に座らせていた四男は黙ったまま、出産の様子を見つめていた。

 やがて救急隊員が到着し、母子を病院に搬送した。電車が走り出してしばらく経ち、女性の乗客が「拭いてください」とウェットティッシュを渡してくれた。初めて、ジャンパーが羊水まみれになっていることに気づき、「自分が赤ちゃんを取り上げたんだ」と実感した。

 自宅に到着し、長女の桃花さん(20)に話すと、「5人も産めば、次は取り上げる側になったのね」と冷やかされた。最上さんはこう話す。「お母さん自身が冷静でいてくれたから、私も取り上げることができました。尊敬しています」
(円山史)

 

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 学校などの教育現場で新聞を教材として活用し、児童・生徒たちの学力とモノを考える力の向上を図るための活動です。歴史的にみると、1930年代にアメリカで始まり、世界各国に広がっています。日本では1985年の新聞大会で提唱されました。89年から、一定期間学校に新聞が無料で提供される「NIE実践指定校」制度がスタートし、その後少しずつ規模を拡大して現在にいたります。