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(長野・食材の旅)世界で諏訪地方だけが産地・角寒天 茅野市 (長野版)

1月26日付朝刊28ページ 長野全県・2地方

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「ニワ」と呼ぶ干し場に寒天を並べたり、集めたりするのはすべて手作業だ=茅野市宮川 「かんてん茶房きれい」の冬メニュー、角寒天の豆乳鍋。

 日が落ちると冷気があたりを包む。ぷるんと揺れていたところ天が、たちまち凍り始める。

 凍る時にできる霜柱状の筋が、繊維を束ねたような独特の形、模様を作り出す。

 「製品を見れば、干した時期の天気がわかります。うまく寒さが入ったな、と」。茅野市で角寒天を製造するイリイチ社長の小池隆夫さん(67)。業者を束ねる、県寒天水産加工業協同組合の組合長だ。

 江戸時代の初め、戸外に捨てたところ天が凍り、偶然から生まれた食材という。諏訪地方には約180年前に製法が伝わった。寒く、雪が少ない気候が格好の条件で、戦前の最盛期は250もの業者がひしめいた。

 テングサなどの海藻を煮て、ところ天を作る。田畑を利用した干し場に並べて凍らせ、日差しで溶かして、乾かして。

 自然に頼る工程は今も変わらないが、生産量はピーク時の10分の1だ。食事が洋風化し、調理の手間が敬遠されて消費は細っている。

 「レシピを添えて売っても、なかなか買ってもらえない。手軽に食べられる形も提案しなくては」と小池さん。組合は大学などと連携し「寒天プロジェクト」を始動。角寒天を使った主菜をレトルト化し、高齢者施設などで使ってもらう計画だ。

 メニューを開発するのは、茅野駅前にある寒天料理専門店の店長、両角和哉さん(33)。子どもの頃、磯の香りが強いところ天や、冠婚葬祭で出る、甘い寒天寄せが苦手だった。「魅力的なレシピがないから、地元でも寒天離れが進んだ」という。

 店ではサラダやパスタ、鍋物まで、華やかで意外性がある料理で、健康や美容に関心の高い女性をひきつける。

 年末には寒天づくしのおせち料理の依頼があった。「世の中の求めに合わせて、食べ方を変えればいい」。この土地でしか作られない素材の可能性を、さらに広げたいと考えている。(佐藤美千代)

   *

 気候を利用して冬の間だけ作られる角寒天は、諏訪地方が「世界で唯一」の産地。現在、茅野市や諏訪市の14業者で年約100トン製造しており、ほとんどはスーパーなどで販売される家庭用。業者の組合は2月16日を寒天の日と定め、ところ天の無料配布などのイベントを開く。


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