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日本の大気、大丈夫? 中国の汚染、越境に不安も 予測サイトにアクセス集中

2月3日付朝刊39ページ 1社会

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 中国の大気汚染の影響が海を越え、日本にも及んでいる。環境省は「直ちに健康に影響はない」というが、識者からは懸念の声も上がる。自衛策に乗り出す動きも出始めた。

 先月からの深刻な大気汚染で、青空が消えた中国各地の模様が報道されると、環境省の大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」や、大気汚染微粒子や黄砂の飛来予測サイト「SPRINTARS」にはアクセスが集中した。

 幼稚園児の娘がいる福岡市内の40代女性も、「そらまめ君」や「SPRINTARS」をほぼ毎日チェックする。東京電力福島第一原発の事故後、関東から娘と避難してきたが、「私が過敏なだけかもしれないけど、目がゴロゴロする」。大気汚染が心配される日は洗濯物は外に干さないし、娘にはマスクをさせる。

 富山市の社会福祉法人すこやかこども福祉会は1月中旬から、汚染物質の数値が高い日には市内二つの保育園の園舎の窓を閉め、園児の外遊びをやめているという。

 越境してくる汚染物質は、直径2・5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の「PM2・5」と呼ばれる微小粒子状物質などだ。ディーゼル車や工場の排ガスに含まれるすす成分が代表的。髪の毛の太さの30分の1以下と微細で、ぜんそくや不整脈などを招く恐れがあり、肺がんのリスクも指摘される。

 国は2009年9月、年平均で1立方メートル当たり15マイクログラム以下、日平均で同35マイクログラム以下という環境基準を決めた。交通量が多く工場が密集する地域に近接した国内の都市部のほとんどが、この基準を上回るとみられていた。

 基準設置後、初めて結果が公表された10年度。全国46カ所の測定局のうち、川崎市や千葉市など、7割を超える34カ所で年平均濃度が基準を上回った。

 多くは西日本だが、90年代半ば以降、山形・蔵王の樹氷で中国からの汚染物質が確認されている。調査した山形大理学部の柳沢文孝教授(環境化学)は「冬場は酸性の雪、春は黄砂に付いて光化学スモッグや酸性雨になって降り注いでいる」と広がりを指摘する。

 ●「持病ある人、注意を」専門家

 福岡市では先月31日、PM2・5の測定値が6カ所の観測所で軒並み、1日平均の基準値を上回った。環境省は「基準を超えたらすぐに健康被害が出るわけではない」と説明。今年に入って基準値を大きく上回るような数値が数日間にわたって継続するような事態も確認できていないという。

 中国などからの越境大気汚染を研究する九州大応用力学研究所の竹村俊彦准教授(気象学)は「多くの健康な人には問題ないかもしれないが、疾患のある人には深刻な結果を招く引き金になりかねない」と指摘する。

 兵庫医科大の島正之教授(公衆衛生学)は「あまり過敏になる必要はない」とした上で、ぜんそくなどの持病を持つ人はPM2・5の数値が高い日の外出は控えることをすすめる。

 重いぜんそくで長期入院する8〜15歳の患者19人を対象に5カ月間、調査した結果、PM2・5の数値が日平均で24マイクログラムを超える日は、症状の出る割合が1割弱ほど増えたという。「完全に防ぐのは困難だが、屋外よりは室内、屋外ではマスクをするなどの備えがあっていい」と話す。(山本亮介、岩崎生之助)


北京に1日滞在=たばこ21本分 中国の環境企業幹部、大気汚染調査

2月3日付朝刊39ページ 1社会

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 大気汚染のひどい日に北京に1日いたら、たばこ21本吸うのに相当する――。中国の環境関連企業の幹部による調査結果を、中国誌「新民週刊」が報じた。大気汚染は、子供やたばこを吸わない人にも等しく影響するため、専門家はマスクの着用を呼びかけている。

 風力発電なども手がける企業グループ「遠大集団」の総裁が空気計測器を持って各都市の大気汚染の状況を調べた。調査した日の数値をタールの多いたばこに換算した結果、広州25本、北京21本、上海と南京がそれぞれ9本に相当したという。

 清華大学の教授も「PM2・5の指数が300に達したら、1日に20本吸わされたのと同じ」と指摘。北京では1月にPM2・5が300を超えた日が15日以上あり、大気汚染の深刻さを示す結果ともいえそうだ。(北京=奥寺淳)

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