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(地域発・企業発)黄金のヤマ 健在/産出量最多 鹿児島・菱刈鉱山

4月2日付朝刊8ページ 2経済

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掘削の先端部「切り羽」の岩盤に、白い筋状の鉱脈が露出する=鹿児島県伊佐市の菱刈鉱山、溝脇正撮影

 かつて黄金の国・ジパングと言われた日本で、大規模な金山がただ一つ、鹿児島県に残る。江戸時代の小判にも使われた佐渡の金山の2・4倍の量を産出し、国内最多をなお更新する。新たな鉱脈も見つかり、金価格の高騰とあわせて地元の期待はふくらむ。

埋蔵9千億円分 地元潤す

 菱刈鉱山は、山と田んぼが広がる農村地帯の地下に、「迷宮」のように広がっていた。全長約100キロの坑道はアリの巣のようで、最も深いところは地下300メートルもある。

 ふだんは公開していない内部を、運営する住友金属鉱山に案内してもらった。山肌に開いたトンネルから、ワゴン車で幅4メートルの長い坂道を下る。坑内をLEDランプが照らし、地上から送られる空気で、それほど蒸し暑くない。

 30分ほどで、地下約200メートルにある掘削の最先端の「切り羽」に着いた。岩盤に最大数十センチほどの幅の白い筋がタテに入っている。鉱脈だ。触ってみると、すべすべしている。

 白い部分は石英で、金はこの中に含まれる。1日4回の発破で崩し、鉱石を30トンダンプで地上へ運び出して選別する。それを愛媛県の工場で製錬して、ようやく金塊になる。

 鉱石1トンのなかに、金はたった40グラムしかない。それでも、世界の鉱山の平均は数グラムというから、「ピカイチ優秀な金山」(後根(うしろ・ね)則文・資源事業本部副本部長)と言える。毎年、ほぼ一定の7トンの金を産出する。

 人口約3万人の地元・伊佐市の金山にかける思いは特別だ。産出された金の価格の1%は、「鉱産税」として市税収入の1割を占める。金の平均小売価格は右肩上がりに伸び、2012年は10年前の3・3倍、最近は約4倍の1グラム5千円を超す。11年度の鉱産税もこの恩恵で、約2億8千万円と10年前の4倍に増えた。高齢化で福祉予算がふくらむ時代に貴重な財源だ。

 隈元新(しん)・市長は、もう一つの主要産業の畜産を支える子牛の価格と金の価格をいつもチェックする。「このまま高値が続いてほしい」と期待は大きい。

 昨年10月、菱刈で新たに30トン分の鉱脈が見つかり、埋蔵量は計約180トンに増えた。1グラム5千円の小売価格で換算すると9千億円分が眠る。さらに新たな鉱脈が見つかる可能性も、なお秘めている。

現存4カ所、集中/鹿児島

 菱刈鉱山は1750年ごろ発見され、長らく山田金山と呼ばれていた。住友金属鉱山が採掘を始めた1985年から約27年間だけでも、産出量は計203トンにのぼる。産出量2位の佐渡金山は、江戸時代から89年の閉山までの388年間で約83トンだから、断トツだ。

 日本の金山開発は戦国時代から盛んで、明治には外国から採掘技術を採り入れて近代化が進んだ。昭和の半ばまでは、小規模なものを含めて100ほどあった。だが、次第に資源が枯渇し、70年ごろには鴻之舞(北海道)や土肥(静岡県)など大規模な金鉱山が次々と閉山した。

 現在、国内に残る金山は四つとされ、いずれも鹿児島県にある。太古の火山活動が豊かな鉱脈を生んだようだ。赤石(あけし)、春日、岩戸の産出量は、それぞれ菱刈の数十分の1以下と小さい。

(記者の視点)海外展開へ技術者育成の場

 海外の鉱山開発に力を入れる住友金属鉱山にとって、菱刈は異国の採掘現場などに巣立つ若い技術者を育てる場でもある。菱刈で長期間にわたって採掘を続ける意義は大きい。

 最近、メタンハイドレートなど、資源開発の関心は海底に集まる。だが、ヤマの技術も輝きを失ってはいない。鉱脈探しや公害防止といった日本の優れた技術は、海外でも十分生かせるはずだ。(平林大輔)

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