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サッカー大国デモ過熱/ブラジル、生活の不満が「反W杯」に

6月21日付朝刊11ページ 1外報

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スタジアム近くに集まったデモ隊。間近に手投げ弾が投げ入れられ白煙があがった=22日、ベロオリゾンテ、岩田誠司撮影

21日夜、ブラジル・ベロオリゾンテ中心部の記念碑に集まったデモ参加者たちは、政府へ抗議の声を上げていた=上田潤撮影

 サッカー大国ブラジルで、来年のワールドカップ(W杯)開催に異を唱えるデモが収まらない。W杯で経済成長の成果を世界にアピールしたい政府に対し、置き去りになっている教育や医療の制度の不備、物価高などに対する庶民の不満が一気に噴き出した形だ。

 「W杯よりも学校や病院が欲しい」「汚職はもうたくさん」――。

 W杯の予行演習を兼ねるコンフェデレーションズ杯でブラジルがメキシコと対戦した19日、北東部フォルタレザの試合会場周辺に約3万人が集まり気勢をあげた。一部は警察に投石するなどし激しく衝突、双方で20人以上が負傷した。

 こうしたデモが起こり始めたきっかけは、2日に行われたサンパウロでの地下鉄運賃の値上げだった。反発した学生らが、デモを呼びかけた。13日には一部が警察と衝突し100人以上が負傷、200人以上が拘束された。

 これで、警察の手荒な取り締まりへの反発が広がった。日本代表も参加したコンフェデ杯が15日に開幕すると、医師や教育施設の不足、政治家の汚職など日頃のさまざまな不満を訴えるデモ参加者が増加。W杯への巨額出費を批判する声が一気に高まった。17日には国内十数都市で計約25万人が街頭に繰り出し、リオデジャネイロやサンパウロでは商店の略奪まで起きた。

 サンパウロでデモに参加したタクシー運転手ジョゼ・ガブリエルさん(45)は「汚職でW杯関連の工事費用は不当に上がっている。その一部でも交通インフラ整備にあてて欲しい」。女優のグラウセ・ゴメスさん(38)は「病院では5時間以上待たされることが当たり前。手術が必要な人まで待たされる。医療の整備を進めるべきだ」と訴える。

 ■大会施設費1兆2千億円

 実際に、W杯関連予算はふくらむ一方だ。

 コンフェデ杯の開催地6カ所のスタジアム建設費は46億レアル(約2千億円)と当初予算から3割も増加。W杯開催に向けた施設整備などにかかる費用について、スポーツ省は、4月に想定していた約255億レアル(約1兆1千億円)でも足りず、280億レアル(約1兆2千億円)に達するだろうと認めた。

 一方、医師数は全国平均で千人あたり1・95人。地方では1人に満たない地域もあり、政府は5月、キューバ人医師6千人に国内での医師活動を認めると発表し、「医療の質を下げる」との反発を招いた。

 消費者物価指数は3月、中央銀行が目標とするインフレ上限(前年比6・5%)を超えた。その後も、上限値付近で推移しており、インフレ傾向だ。

 当のブラジル代表選手からも、デモに理解を示す声が上がる。貧しい家庭で育ったフレジ選手は「僕も家族も公共サービスの不十分さに苦しんだ」とツイッターで語り、フッキ選手も「彼らの主張には理がある」と擁護する。

 デモが一向に収まらない状況に、コンフェデ杯の日本対イタリア戦が行われたレシフェでは、試合前日に交通当局が値上げしたバス運賃を元通りにすると表明。19日にはサンパウロとリオデジャネイロもバスと地下鉄の値上げを撤回した。

 ルセフ大統領は「学校や医療施設の改善を求める皆さんの声に耳を傾ける」と述べ、事態収拾を急ごうとの姿勢を示し始めている。(レシフェ〈ブラジル北東部〉=岩田誠司)

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