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20年五輪、東京は高評価 IOCが報告書

6月26日付朝刊1ページ 1総合

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 国際オリンピック委員会(IOC)は25日、2020年夏季五輪を目指す3都市の開催計画に関する評価報告書を公表した。IOCは前回16年招致とは違い、各都市の優劣を示さない報告書を作成したが、東京は根幹部分での指摘がなく、全体的に高い評価を受けた。一方、ライバルであるイスタンブール(トルコ)やマドリード(スペイン)は、計画の一部に懸念が示された。

 報告書は3月に実施された評価委員会の現地視察の結果を分析し、開催理念、競技会場、輸送など14項目について文章で評価している。このため、4月に猪瀬直樹東京都知事が「イスラム諸国はけんかばかり」と発言したことや、6月に本格化したトルコ反政権デモは評価に含まれていない。

 東京は、輸送や財政、施設建設など運営の根幹に関わる項目で評価された。ただ、一部の競技会場周辺の狭さなど、細かい部分での指摘が少なくなかった。

 イスタンブールは明確な開催理念が評価された。だが、ボスポラス海峡を挟んで欧州側とアジア側に会場が分散するため「選手村から40分未満」とする輸送計画が「楽観的」とされた。マドリードは既存施設の活用が評価されたものの、一方で追加工事が必要なものも多いことが指摘された。

 招致活動はこの後、7月3、4日にスイス・ローザンヌでIOC委員に対するプレゼンテーションがある。9月7日にはブエノスアイレスでIOC総会があり、約100人の委員による投票で開催地が決まる。(酒瀬川亮介)


3都市、つばぜり合い 2020年五輪招致・IOC評価報告

6月26日付朝刊24ページ スポーツ2

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 国際オリンピック委員会(IOC)評価委員会が25日に公表した報告書では、東京、イスタンブール、マドリードともにいくつかの改善点を指摘された。リオデジャネイロ(ブラジル)有利の大きな流れができた2016年招致時の報告書のようなIOCの明確な意思は見えず、9月7日の開催都市決定までつばぜり合いが続きそうだ。

 ■東京、「低支持率」「電力不足」覆す

 東京は昨年5月の1次選考で指摘された低支持率、原発事故の影響による電力不足などのマイナス点を覆した。都民の支持率は3都市で最低ながら70%に届き、電力は「現時点で十分」。地震や津波の懸念も「地政学的に津波の影響は少なくなり、必要な備えもある」と評価された。以前からの強みだった財政面やコンパクトな会場配置、輸送や宿泊など都市基盤や治安についても高い評価を得た。

 東京は16年招致でも開催能力の高さをアピールしていた。しかし報告書は「要旨」で東京に多くの問題を指摘し、将来への期待感からリオデジャネイロを高く評価した。今回は要旨はなく、100ページ強の本文のみ。3都市の優劣に踏み込んでいないが、詳細に読むと、東京を一番高く評価しているとも受け取れる。招致委員会の竹田恒和理事長は「前回のIOCの懸念をすべて解決できたので、高い評価を得た」と話した。

 一方で、細かい部分での指摘は多い。「1964年東京五輪会場の日本武道館などは狭く、運営に支障が出る可能性がある」として、臨海部の会場は観客への配慮が必要と指摘した。東京がアピールする環境への取り組みは「達成手段が不明確」とされた。また、放射線量については評価は避けたが、水や食品のモニタリングが行われており、招致委は国際機関との協力を確約したと明記された。これらについて竹田理事長は「大問題とは思わない。改善に努める」と話す。

 招致委は報告書で大きな問題が指摘された場合、来月のプレゼンテーションの内容を変更する準備をしていた。しかし、水野正人専務理事は「この方向でいける自信を得た」と、従来通りの方針で臨む考えを示した。(阿久津篤史)

 ■イスタンブールとマドリード、開催計画の弱点露呈

 イスタンブールとマドリードは開催計画の根幹に関わる部分で、懸念を指摘された。

 好調な経済と明確な理念が強みのイスタンブールは、成長都市につきものの交通渋滞が深刻だ。招致委員会は「時速60キロで車が走行した場合」を元に選手村から各会場への移動時間を示したが、評価報告書は「この試算は楽観的すぎる」と指摘した。確かに、3月にIOC評価委が訪問した際にも主要道路は渋滞していた。

 5月末にイスタンブール中心部で起きた反政権デモも、元はと言えば、五輪に向けた再開発で公園をショッピングセンターに変えることに、市民が不満を爆発させて始まったものだ。このデモに対するエルドアン首相の強権的な対応もまずかった。トプバシュ市長が「このままでは五輪招致は夢となってしまう」と懸念を示すなど、イスタンブールはこの先、止まらないデモとその対応についての審判を受ける。

 ユーロ危機に直面したマドリードは「競技会場の8割が既存またはすでに建設中」が売りだった。だがこの点を逆に突かれた。

 評価報告書は「既存といっても追加工事が必要なものが多い」とし、さらに「一部施設は、五輪開催の規格を満たしていないのでは」とまで書かれた。「緊縮五輪」に綻(ほころ)びが見える。

 報告書は「2020年までに財政危機は克服されるだろう」と期待を込めた。一方で「国内のスポンサー企業が招致委の想定通りにつくのか」との懸念は指摘。財政面の不安が一掃されたとまでは言えない。

 「4千億円の基金」や「夜中でも女性1人で歩ける街」を背景に、東京が訴えてきた財政や治安面での「安心・安全」が、相対的に浮かび上がりそうな流れだ。(平井隆介)

 ■東京

 2016年招致に続く挑戦。国内では「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」、海外では「未来をつかもう」をスローガンとするが、開催理念の弱さをカバーするため、東京都が持つ約4千億円の開催準備基金をはじめ、宿泊施設、交通インフラの充実など、開催能力の高さを全面に押し出す。東京圏33会場のうち28会場が選手村から8キロ圏内とコンパクトさも売り。(7月24日開幕)

 ■イスタンブール

 2000年招致を皮切りに、5度目の挑戦。過去4度は泡沫(ほうまつ)に近い扱いだったが、この10年で国内総生産(GDP)を3倍に伸ばす高い経済成長率を背景に、今回は最終候補に残った。スローガンは「ともに橋を架けよう」で、欧州とアジアの境界に広がる街の利点を最大限に生かす戦略。ただ5月末からトルコ国内各地で吹き荒れた反政府デモの影響がどう出るか。(8月7日開幕)

 ■マドリード

 3大会連続の挑戦。スローガンは「未来を照らそう」。ユーロ危機にさらされ財政不足に苦しむことを逆手に取り「緊縮五輪」を訴える。35の競技会場のうち8割が既設もしくは建設中。前回招致はスペイン出身で当時89歳だった故サマランチ前IOC会長が最終招致演説で「私は人生の終わりに近づいている。母国に五輪を開く名誉を」とスピーチしリオとの決選投票まで進んだ。(8月7日開幕)

 ■開催地こう決める

 IOC委員100人(6月25日現在)のうち、ロゲ会長を除く99人が投票権を持つ。ただし候補都市の国の委員(スペイン3人、日本とトルコが各1人)は、その都市が落選するまでは投票できない。投票は無記名で、過半数を得る都市が出るまで最下位を振り落とす方式で繰り返す。1回目に投票する委員は94人が予定され、3分の1超の32票が通過確定ライン。1回目で過半数の48票に届く都市がなければ、最下位を除く2都市による決選投票が行われる。

 ■2016年リオ開催こう決まった

 1次選考で4都市のうち最も高い評価を受けていた東京は、評価報告書では「選手村用地の狭さや騒音」「招致委は施設の3分の2が既存と説明するが、実際には半分」など厳しい指摘を受けた。代わって浮上したのは、1次選考で最低評価だったリオデジャネイロ。「計画の質は高く、インフラ整備が街の遺産として恒久的に残る」などと書かれ、マドリードやシカゴよりも高い評価を得た。その流れのままリオはIOC総会で最も多くの委員の票を集め、勝利した。

 ■立候補都市の住民の開催支持率
 イスタンブール東京マドリード
強く賛成46%(41%)36%(35%)46%(44%)
賛成37%(35%)34%(32%)30%(37%)
どちらでもない14%(22%)14%(21%) 4%( 6%)
反対 2%( 2%) 9%( 7%) 9%( 8%)
強く反対 1%( 0%) 7%( 5%)11%( 5%)
 (IOC調べ。カッコ内は国内の支持率。調査は今年1月14〜25日に実施)

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