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AC、自分を広告 政府の機関?いいえ、民間

7月14日付朝刊38ページ 2社会

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7月に始まったCM。民間の組織だということを強調している=ACジャパン提供

 マナーや慈善活動などの「公共広告」を流すACジャパン。東日本大震災直後に大量に流れたCMで「エーシー♪」のフレーズもおなじみになった。だが「政府の団体」などと誤解する人がいまだに少なくない。人々がメディアの表現に敏感な時代になり、内容を素直に受け止めてもらえない悩みもある。今月から「自分広告」を流し始めた。

 「ACジャパンは40年以上にわたり、広告を通じて社会にメッセージを届けてきました」。CMはそんなナレーションで始まる。

 古いソファに自転車、熊のぬいぐるみ……。ゴミが山積みの裏通りの映像にキャッチコピーが重なる。

 「捨てる世紀」で終わるんですか。1999年度

 ほかにも、公園を駆ける子どもたちの映像に、「子どもは、あなたのコピーです」(81年度)。神戸ポートタワーの夜景には「人を救うのは、人しかいない」(94年度)。阪神淡路大震災の被災者支援を呼びかけた言葉だ。

 今月から流れている「AC広報キャンペーン」のテレビCMで、制作した電通西日本広島支社の大崎祐宣(まさのぶ)ディレクターは「これまでのメッセージを振り返り、これからも皆さんと考えていきたい、と伝えたい」。

 ACジャパンは71年、サントリー社長だった故佐治敬三氏が米国の公共広告を参考に、関西の企業に呼びかけて発足。74年に全国組織となり、現在は1千を超す会員企業・団体が支える公益社団法人だ。

 しかし、どういう団体かを知る人は多くない。昨年の調査で64%が名称を知っていたが、「活動内容まで知っている」のは8%。「政府の団体」という誤解は、09年に「公共広告機構」からACジャパンに改称して減ったものの、依然6%ある。東日本大震災直後、ACのCMが洪水のように流れた際は「税金の無駄遣い」といった苦情が殺到した。AC事務局の高島邁(すすむ)さん(65)は「誤解されたままでは、聞く耳をもってもらえない心配がある」と話す。

 ■社会映すメッセージ 表現と配慮、板挟み

 マナー、環境、子育て、ボランティア――。これまでACが発信してきたメッセージは、時々の日本の世相を反映してきた。

 だが近年、ACは広告の表現にも悩んでいる。「思いもしない苦情」が来るケースが増えているためだ。

 例えば、04年度の「抱きしめる、という会話」。母親が娘を抱きしめる映像で愛情表現の大切さを描いたが「母親を亡くした子が傷つく」などの苦情があり、「父親編」が追加された。

 06年度は骨髄バンクへのドナー登録の呼びかけで、白血病と闘った歌手の本田美奈子さんを登場させた。だが、本田さんは闘病の末に亡くなったことから、「私も助からない」と傷ついた患者らの声があった。

 09年度にオレオレ詐欺対策を呼びかけた「したたかおばあさん」では、「オレオレ」で電話が始まる場面に実際の被害者がショックを受けたと苦情が相次ぎ、中止に。ACは同年度、審査基準に「傷つく人がいないように配慮されているか」を追加した。

 それでも震災時は様々な苦情が寄せられた。活字を読んで蓄積される知識を「知層(ちそう)」と表した広告に、「地震を想起させる」と批判があがった。

 震災から半月弱で、これを含む八つのCMの中断をテレビ局に依頼。結果、限られたCMがより高い頻度でお茶の間に流れた。

 ACの高島さんは「誰がみても納得できるものは平凡でインパクトが弱くなる。最近面白くないという声もある。痛しかゆしです」と話す。(井上恵一朗)

 ■批判の目も必要

 <雑誌「広告批評」元編集長でコラムニストの天野祐吉さんの話> 広告を通して公共問題について発言してきたACジャパンの活動は評価している。阪神淡路大震災後に被災地を励ましたCMなど表現力のあるメッセージも出してきた。ただ、限界もある。本来、公共広告というなら、例えば公害問題では企業への批判も必要だ。自己批判できる度量がほしい。

 ◆キーワード

 <ACジャパン> 毎年度、時事の社会問題から全国と地域のテーマを選んで公共広告を制作し、テレビやラジオ、新聞などに出す。公共性が高い活動に取り組む非営利団体を取り上げる支援キャンペーンも展開する。

 1千超の会員企業・団体の会費で運営。広告会社などが広告を作り、広告枠は会員メディアが無償提供する。年度末に東日本大震災が起きた2010年度は広告主のCM自粛で穴埋めに大量に流れた。

 ■ACジャパンの主なキャンペーン(年度)
1971  みんなで考えましょう(公共マナー)
79  言葉が凶器になる(教育)
82  もったいないお化け(教育)
87  僕は、スピードを卒業した(交通)
93  地球のために、始めよう(環境)
96  いじめ、カッコ悪い(教育)
99  ジコ虫、増えてます!(公共マナー)
2001  大人を、逃げるな(親子問題・教育)
05  カレシの元カノの元カレを、知っていますか(エイズ予防財団)
10  こだまでしょうか(コミュニケーション)

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