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警戒情報6時間滞る 都、首長らに直接連絡へ 伊豆大島・土石流被害

10月22日付朝刊1ページ 1総合

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台風の接近を前に「砂防ダム」は樹木や土砂でいっぱいになっていた=21日、東京都大島町の神達地区、本社ヘリから、河合博司撮影

伝わらなかった土砂災害警戒情報

 台風26号の大雨による伊豆大島(東京都大島町)の土石流被害で、都が土砂災害の危険を伝えるファクスが町担当者の手元に届いていないことを知りつつ、担当者に危険を伝えられない状態が約6時間続いていたことが分かった。都は市区町村長らの携帯電話に直接連絡できるよう伝達方法を見直す方針を固めた。

 都によると、土石流が起きる約9時間前の15日午後6時5分、気象庁と都が「土砂災害警戒情報」を共同発表。都は総合防災部と河川部の2ルートで、発表内容を町総務課に防災用ファクスで送信した。

 市区町村の担当者がファクスを受け取ったかは、都のパソコン画面上で確認できる仕組みになっている。今回は受領の確認がなく、不審に思った都総合防災部の職員が約1時間後に町総務課に電話したが、つながらなかったという。

 都はさらに大島支庁を通じて、町総務課に電話。町側から「防災担当者が不在で、16日午前1時半に集まる」と言われたため、回答者の名前やファクスの受領を確認しなかったという。

 一方、町によると、町担当者は16日未明の台風接近に備え、15日午後5時半ごろに一時帰宅。16日午前0時ごろ、再登庁した総務課長がファクスに気付いた。ファクス送信の約6時間後で、既に1時間あたり50ミリ以上の非常に激しい雨が降っていたため、町は夜間の避難は危険と判断。避難勧告などを出さなかった。

 都の伝達方法の見直しでは、今週末までに市区町村長や幹部の携帯電話番号を入手。台風27号の風雨が強まる前には直接、電話連絡ができる態勢を整えるという。

 (前田大輔、赤井陽介)



お父さん、いつ帰ってくるの 7歳息子を実家へ、その夜土石流 伊豆大島

10月22日付朝刊39ページ 4総合

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雨の中、日没後も捜索活動が続けられた=21日午後5時42分、東京都大島町、山本壮一郎撮影

伊豆大島からの高速船で竹芝客船ターミナルに到着した人たち=21日午後4時37分、東京都港区、内田光撮影

 避難勧告が解除された伊豆大島(東京都大島町)が再び動き出した。行方の知れない家族を捜して歩く人。台風27号の接近を前に島を出る人。二次災害を避けるため、町は高齢者らを島外へ避難させる準備を始めた。

 21日午後、元町神達地区で、土石流に削られた山肌を登る男性がいた。行方不明となっている柳瀬忍さん(37)の父政明さん(61)だ。避難勧告が出た20日をのぞき、毎日来ている。

 忍さんの自宅は全て流された。「次に台風が来たらどうしようもない。早く見つけないと」。発生から5日、政明さんの言葉に焦りがにじむ。

 台風26号が迫った15日夕、忍さんは長男の海(かい)君(7)を約5キロ離れた実家に預けた。「台風が来ているし、そこにいた方が安全だよ」。その夜、忍さんの自宅は土石流にのまれた。妻の光海(みつみ)さん(28)は一命をとりとめたが、大けが。3人家族で、海君だけが無傷だった。

 「お父さんはいつ帰ってくるの」。海君は最近、そう尋ねてくる。「本人はうすうす父親がもういないことに気付いているのかもしれない。このままじゃ孫がかわいそう」と政明さん。

 これまでに見つかったのは、3人の衣類や海君の絵本、ぬいぐるみなど。この日も2時間ほど歩き回ったが手がかりはなかった。政明さんは「明日は浜辺でも見に行くか」と言って、山を下りた。

 「お父さんは丸太に乗って海にいるのかな」。ニュースで父の行方不明を知ったのか、海君はそう話すようになったという。政明さんとともに孫の面倒を見ている祖母の竹美さん(60)の胸は痛む。「泣いてばかりはいられない。流された勉強道具をそろえてあげなくては」

 父親そっくりの顔をしている海君に、いつの日か伝えなければならないと思っている言葉がある。「お父さんがあなたの命を守ってくれたんだよ」

 ■台風避け、続々船に

 伊豆大島北部の岡田港。21日、東京・竹芝行きの高速船乗り場に、台風27号の接近に備えて島外へ脱出する住民が詰めかけた。

 大島町元町1丁目の江崎秀隆さん(50)夫婦は、孫の小学5年生柳瀬和博君(10)を連れ、埼玉県の親戚宅に身を寄せる。キャリーバッグに1週間分の荷物を詰めてきた。

 家から約50メートルまで土石流が迫り、避難所暮らしも経験した。和博君の両親は共働きで島を離れることができず、「せめて一人息子だけでも」と頼まれた。

 江崎さん自身、16年前に鹿児島県で起きた土石流で母を亡くした経験を持つ。「子どもに怖い思いはさせたくない」

 被災地から離れた大島町差木地に住む神保勝彦さん(71)も、妻とともに島を離れることにした。

 「被災現場を見て言葉を失った」。食品などの物流や医療機関への道路が新たな土石流で遮断されることを心配した。1戸1戸訪ねてきた消防団員からも避難するよう促されたという。

 土石流の被害現場に近い元町2丁目の高木三千代さん(54)は、親族を頼っていく母親を見送りに来た。高木さん自身も22日に3歳の孫と義理の娘を連れて島を出る。「台風が通り過ぎるまでは戻らない」

 東海汽船は21日、1日2便の竹芝行き高速船(定員253人)を臨時に1便増やした。22日は臨時便を2便にする。「被災や台風27号の接近で利用客が多いため」という。


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