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(首都圏発)江戸野菜、学び、つなぐ /首都圏

2013年10月13日付 朝刊 33ページ (首都圏版)

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宮寺さん(左)からタネまきの指導を受ける子どもたち=東京都荒川区の尾久宮前小

青茎三河島菜のタネをまく子どもたち=東京都荒川区の尾久宮前小

雑司ケ谷ナスの2度目の収穫をする生徒たち=東京都豊島区の西池袋中学校

 10・11月は「食」

 かつて東京近郊で栽培されていた三河島菜や砂村一本ネギなどの伝統野菜を通して、地域の食文化や歴史を知ろうという授業が東京の小中学校で始まっている。子どもたちは伝統野菜を自ら育てて食べ、タネを採り、命のつながりも学ぶ。

 ●児童育て、タネ継承

 9月末、東京都荒川区立尾久宮前小学校の4年生が学校の畑に「江戸東京野菜」=キーワード=の青茎三河島菜のタネをまいた。小平市の栽培農家宮寺光政さん(64)の指導で、ごま粒のようなタネを1人5粒ずつ「小指の爪の深さ」にまいて土をかぶせた。

 約70日で葉の長さが60センチほどに育つ。同区のHPなどによると、江戸時代から漬け菜として生産された三河島菜が昭和に入って白菜に代わり、姿を消した。だが、子孫が仙台芭蕉(ばしょう)菜として残っていることを江戸東京・伝統野菜研究会(大竹道茂代表)が突き止めた。参勤交代の際、タネを仙台に持ち帰ったらしい。

 そのタネを同会が青茎三河島菜と名付け、会員の宮寺さんが栽培。同小はタネを分けてもらい、児童が育てている。宮寺さんは「子どもたちに地域の食文化や歴史を伝える有意義な取り組み」と話した。

 江東区立第5砂町小学校は毎年、砂村一本ネギを育てる。8月末、5年生が自家採種したタネを4年生に手渡す贈呈式があった。4年1組の永井万羽衣さん(10)は「大切に育てようと思った。この気持ちを次の代にも伝えたい」。

 砂村一本ネギは千住ネギのルーツといわれる。プランターで15センチほどに育ち、まもなく畑に定植だ。2組の小薗珠梨さん(10)は「協力して育てる」。3組の田中勇輝君(9)は「毎日観察している」。

 豊島区立西池袋中学校では2年生が雑司ケ谷ナスを育てた。校舎裏の浄化槽を覆う盛り土を利用。土作りをし、無農薬で育てた。

 辻野晴香さん(14)は家で天ぷらに。「くわず嫌いだった。自分で育てたナスはおいしかった」。佐々木利奈さん(13)は「身が崩れず食感がいい」。加嶋美佐子さん(14)は肉詰めのレシピを同区の食のコンクールに応募した。

 フランス料理の三國清三シェフは今年6月、来日したオランド仏大統領を招いた首相官邸の昼食会で金町小カブなど5品種を使用。「みずみずしい地元産が一番」と自分の店でも使う。

 食育にも熱心だ。世田谷区の小学校で行う授業では児童が伝統野菜を育てる。三國シェフは「自然の摂理や食文化、歴史を学んで伝統野菜のある地元を誇ってほしい」と話す。

 ●流通適さず入手困難

 いま青果売り場に並ぶ野菜の大半は一代雑種のF1だ。収量増、形や収穫時期の均一性が利点だが、自家採種できず、農家は種苗会社から毎年タネを買う。

 一方、伝統野菜の多くは農家が自らタネを採って育てる固定種だ。土地に適した品種に改良して地域の食文化を支えてきた。風味や栄養面はF1より上とされるが、大きさがふぞろいで流通に適さず、F1に代わられていった。

 「固定種が消えれば、生物多様性の幅が狭まる」と埼玉県飯能市で種苗店を営む野口勲さん(69)。店では固定種の野菜のタネ約500種を扱うが、タネの入手が困難になっているという。「固定種を家庭や学校の菜園で栽培すれば、健全なタネを未来に残せる」と話す。(斯波祥)

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  ◆キーワード

  <江戸東京野菜> 江戸から昭和の各時代に東京近郊で栽培されていた伝統野菜で、いずれも固定種。生産が激減したが、最近は個性的な食材として注目され、JA東京中央会が2011年に「江戸東京野菜」を商標登録。34品種が認証されている。

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