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(天声人語)消えていく方言

大阪市立昭和中学校・植田 恭子

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 大阪市の学校教育ICT(情報通信技術)活用事業のモデル校である勤務校(大阪市立昭和中学校)では、1人1台タブレット端末iPadを持って学習活動を進めています。石川県から大阪へ来られたICT支援員の方が授業でのサポートをしてくださっています。

 そのICT支援員の方が、画面の砂嵐の状態を見て、「じゃみじゃみ」という言葉を発せられました。「えっ。じゃみじゃみって何?」と一瞬思いました。が、石川県の方言である「じゃみじゃみ」はぐちゃぐちゃの状態にぴったりくる表現です。

 今回は天声人語をもとに「方言」について考えていきましょう。

 1 標準語と方言の違いを考えよう。

 標準語とは「一国の規範となる言語として、公用文や学校・放送・新聞などで広く用いられるもの。日本語では、おおむね東京の中流階級の使う東京方言に基づくものとされている」(広辞苑第6版)と定義されています。では、方言はどのようなものでしょうか。光村図書の中学校「国語2」の教科書では、「語句・表現、文法、発音などに、地域ごとの特色が表れた言葉」が方言と記されています。

 白井恭弘さんは『ことばの力学――応用言語学への招待』(岩波新書)で、ことばは知らない間に人間の行動を左右すると述べています。「標準語に対して、方言の価値が低いと感じる人が多いのはなぜでしょうか」とも。あなたはそう感じますか。そう感じるならなぜでしょうか。

 2 「ふるさとの訛り」を詠んだ作品を鑑賞しよう。

 天声人語で取りあげられているのは寺山修司の若い頃の一首「ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし」です。

 「ふるさとの訛り」をインターネットで検索すると一番に出てくるのが、石川啄木の『一握の砂』の「ふるさとの訛りなつかし/停車場の人ごみの中に/そを聴きにゆく」です。寺山修司、石川啄木それぞれに、ふるさとの言葉へどのような思いを抱いているのかを考えてみましょう。

 3 新しい方言、復興する方言について考えよう。

 天声人語には、方言について「共通語では言い換えのきかない」「陰影に富んで、懐が深い」と書かれています。そんな「方言と訛り」について、調べてみましょう。

 方言、訛りというと、高齢者が使うもの、古い言葉、というイメージがあるかもしれませんが、そうとは限りません。

 『現代若者方言詩集――けっぱれ、ちゅら日本語』(大修館書店)は浜本純逸さんによる本です。全国各地の若者から集めた方言詩が編纂されています。浜本さんの解説には「方言と遊んでいると、ひとりでにつぎつぎと言葉が連想され、思いが飛躍し、リズムが生まれる」とあります。

 若者は新語づくりの達人というのは『方言は気持ちを伝える』(岩波ジュニア新書)を書かれた真田信治さん。方言をアレンジした言葉にはどのようなものがあるのかについても調べてみましょう。

 4 東日本大震災の言葉への影響を調べてみよう。

 天声人語にもあるように、東日本大震災の被災地で消えかかっている危うい方言が143語もあるそうです。東北大学の小林隆教授の研究を読んでみましょう。

 5月14日付の朝日新聞朝刊に載った記事はこちらです。
 http://digital.asahi.com/articles/TKY201305130682.html?ref=comkiji_redirect

 NHKの朝の連続小説「あまちゃん」で注目を集めている「じぇ」のような言葉もありますが、一方でこうやって消えていく方言があるのです。言葉の背景にある文化、伝統を尊重しながら残していきたいものです。

 辞書編纂(へんさん)者の飯間浩明さんが書いた『辞書を編む』(光文社新書)には、東日本大震災と原発事故の影についての記述があります。専門用語で、国語辞典に載ることのなかった「除塩」が震災以降は残念なことに、ふつうに聞かれることばになってしまったのです。もっとよく聞く「除染」は国語辞典に載っていたそうですが、さらに丁寧な説明が必要だと感じているということです。

 東日本大震災によって、言葉にどのような影響があったのかについて調べてみましょう。そしてふるさとに受け継がれてきた言葉とともに、伝統、文化、暮らしについて考えてみましょう。

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