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教科書、開くと新聞 読む力・考える力を養う

教科書、開くと新聞 読む力・考える力を養う

様々な新聞記事を活用した新しい教科書

 学習指導要領改訂を受け、2011年度からの新しい小学校の教科書には、新聞記事の読み比べや書き手の視点の違い、災害報道、報道被害まで、取り上げるページが増えた。「新聞を読む」ことが取り入れられたからだ。子どもたちが活字に親しみ、読解力や表現力をつけられるようにと、授業に使う学校も広がっている。 (相原亮、井上秀樹)


 新学習指導要領では、国語の解説で「新聞を読む言語活動」という項目が入った。ここでは「編集の仕方や記事の書き方に注意して読むことが大切である」としている。

 実際、新しい国語の教科書を開くと、記事が目をひく。

 ●野球記事を比較

 東京書籍では、こんな使い方をしている。5年で多摩川のアユについての二つの記事を紹介した。一つ目は、アユの季節がやって来るという季節感を前面に出した記事で、もう一つは、地域の努力で川の自然が戻ったという環境に焦点を当てたもの。記事や写真の扱いを比べて、書き手の意図などを探る。

 担当の編集者は「従来は『何が書かれているか』に力を入れて読んでいた。今回は、より踏み込み、『どのように書かれているか』を読み取れるよう心がけた」。

 学校図書は5年で、高校野球の試合の記事を紹介。勝った側と負けた側の両方から書かれた二つの記事を示し、視点の違いを伝えた。

 社会でも、新聞やテレビなどの情報産業を学ぶ5年で各社が工夫をこらした。

 重大ニュースを知らせるために臨時に作る「号外」や、締め切り時間の違いで同じ日の紙面に違う記事が載ることを紹介した教科書が登場。光村図書は、新潟県中越沖地震を題材に、実際の災害報道を通じて、地元の新聞社がどんな仕事をしているか、どんな情報を伝えようとしたかなどを学ばせる。

 ●報道被害も言及

 誤った新聞報道や報道被害も教えている。ある教科書では、第一通報者を犯人のように扱って報道し、被害者だった通報者に大きな精神的なダメージを与えた松本サリン事件の紙面写真を載せた。最初の情報だけで判断せず、続報を読むこと、複数の発信元から情報を確かめ、情報の質を見極めるよう説いている。

 情報を自分で読み取り、判断する「メディアリテラシー」について、東京書籍はコラムで「たくさんの情報の中から必要なものを選び出し、利用する力」と説明。本文では、女子のセリフで「わたしたちも身につける必要があると思います」と呼びかける。

 東京都目黒区立油面(あぶらめん)小学校では、総合的な学習の時間で、5年全員がスクラップ帳を作った。自分でテーマを決め、記事を切り抜く。「食」をテーマに選んだ児童は、食品の偽装問題やダイエットなど幅広い記事を集めた。児童が交代で話をする「朝の会」の1分間スピーチは、4年までは友だちの話をする児童が多かったが、5年で新聞を授業で使ってからは、選挙などニュースの話題が増えたという。鈴木裕二先生(33)は「世の中の動きに敏感になって、社会に目を向けるきっかけになる」と感じている。

 ◆NIE教育に新聞を、のべ5千校に広がる

 学校で新聞を教材とするNIEは1930年代にアメリカで始まり、日本では85年の日本新聞協会の新聞大会で提唱された。協会からNIE事業を引き継いだ日本新聞教育文化財団は毎年、学校ぐるみで新聞活用の授業を進める「NIE実践校」を指定。89年に東京の小中学校3校で始まり、96年から本格化した。09年度は全国47都道府県の小中高校536校が実践校だ。これまでに延べ5千校以上が指定を受けている。