「新聞効果」ここに出た 京都で27・28日に学会

教材の新聞記事を手にする大阪府寝屋川市立第四中学校の野村理恵教諭 「救急車の有料化」について新聞記事をもとに授業で児童の意見を募った=高松市立屋島小学校提供

 新聞を教育に生かすNIE(エヌアイイー)活動について報告する「日本NIE学会」が27、28の両日、京都教育大(京都市)で開かれる。「新聞の活用」を盛り込んだ新学習指導要領=キーワード=が来年度以降、小、中、高校で順次本格実施されるのを前に、一足早く新聞を授業に採り入れている学校の実践が報告される。このうちの3校の取り組みを紹介する。

 高松市立屋島小学校は2009年度、教員、保護者、地域住民による「連携新聞」を発行した。

 担当した田中義人教諭(44)=現・同市立太田南小=は、教員が作る「学校だより」があまり読まれていないと感じていた。「保護者の関心事を募って一緒に新聞を作ってみたらどうだろう」。呼びかけたら、1年間に延べ218人の保護者が集まった。

 紙面では、新聞記事をもとに保護者と子ども、担任がノートに意見を書き合う「ファミリーフォーカス」という実践を取り上げた。授業で使った新聞記事を大学ノートに張り、そのノートに保護者と子ども、担任が意見を書き合うやり方だ。

 3年生が読んだのは「救急車に有料化の動き」という記事や「子どもの肥満防止のためハンバーガーセットにおもちゃをつけるのを禁止した」という米国の話題を紹介した記事。児童たちは「お金がなくても急病になるよね」「おもちゃに釣られて食べ物を買うのはおかしい」などの感想を添えた。我が子のしっかりした意見に驚き、「親子の会話が増えた」という保護者も多かったという。

 田中教諭は「新聞作りは交流や集団活動を活発にする。直接参加しない人にも新聞を通して情報発信ができ、輪が広がった」と話す。

 大阪府の寝屋川市立第四中学校は、国語の授業で新聞を活用している。世の中の動きを知り、自分なりの意見を持って、それを表現できる力を養うのがねらいだ。記事に登場する人たちの思いを想像し、背景にある社会問題について考えさせるようにしているという。

 2年生の授業では、「広島市の小学校で、原爆の被爆者が家族の安否を尋ねるため壁に残した伝言が見つかった」という記事を配り、伝言の主の気持ちを想像させた。「家族愛」「戦争」「核」など、関連テーマを扱った記事を自由に選ばせ、その記事を要約するとともに自分の考えも書くという課題も与えた。

 トルコでの爆弾テロの記事を取り上げた生徒は「本当の戦争の終結は、この世から争いが消えるときだと思う。悲惨さを語り続けていくことが大事だ」と記した。指導した野村理恵教諭は「本質に迫った意見が多く、子どもたちの感性にはっとさせられる」と話す。「きっかけさえあれば、子どもたちは社会に目を向け、自分の頭で考えることができる。新聞記事はその格好の素材だと思う」

 社会科の授業に新聞を使っているのは、兵庫県の宝塚市立宝梅(ほうばい)中学校。「脳死」や「食料自給率」を採り上げた記事を題材に、4人1班で共同で感想文を書かせた。周囲との対話がポイントで、「読む」「書く」「話す」「聞く」の四つの力を総合的に育てることを目指しているという。

 夏休みや冬休みの宿題にも新聞を活用した。生徒らが記事を切り抜き、自分がその記事を選んだ理由について、教師や家族ら年齢や職業の異なる4人に説明する。その上で説明した相手から意見を聴き、最後に自分の考えや感想をまとめる。自分とは異なる意見があることを知り、対話を通して考えを見つめ直させることをねらったという。

 岡本光子教頭(54)は「新聞を読むことで、学校で学んだことが社会の動きとつながる。テレビやインターネットと違って、立ち止まってじっくりと考えることができるのが新聞の利点」と話す。(阿久沢悦子、阪本輝昭、左古将規)

 ◆キーワード
 <新学習指導要領とNIE>
 小学校は2011年度、中学校は12年度、高校は13年度から新学習指導要領が完全実施される。新聞の活用は、従来の社会科資料の用途に加え、国語で「編集の仕方や記事の書き方に注意して新聞を読む」(小学校)、「新聞、書籍、インターネットで得た情報を比較する」(中学校)が加わる。高校では公民で「新聞記事を主体的に読み取り、解釈する」ことが求められる。