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「主権者教育と新聞」

明治大学文学部特任教授 藤井 剛

 今年の夏の参議院選挙から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられるため、各地で「主権者教育」に関心が集まっています。高校生が政治を学ぶ動きが進む中、「政治的中立」をめぐり、教育現場の先生方の模索が続いています。長年、公立高校で主権者教育やNIEに携わってきた、明治大学文学部特任教授の藤井剛氏に、「主権者教育における新聞の活用法」について解説してもらいました。


 2015年末から、全国の高等学校に「主権者教育」の補助教材が配付されています。主権者教育とは「国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者としての自覚を促し、必要な知識と判断力、行動力の習熟を進める教育」(明推協HPより)であり、現実の政治を教材とする教育ということができます。

 「さて、主権者教育の実践にあたり、最大の懸案である「中立」に関して教員のとるべき行動を2点提案したいと思います。

 1点目は、政治的対立がある問題を扱う際は、「A説」「B説」のように両論を説明し、生徒自身に考えさせることです。

 2点目は、複数の資料(新聞など)を利用して、対立点やその根拠などを、生徒が自分で調べ、まとめ、発表し、討論して判断させることです。この点が、本稿のテーマである「主権者教育と新聞」の関係となります。例えば、対立する立場の新聞から問題の争点を取り出させるとか、選挙公示日の「党首の第一声」から各党の一番の主張を取り上げ比較させることなどが考えられます。

 この2点目に関して、「活用のための指導書」の21頁には、このような指導を行うときには、「新聞等を活用する場合も多いと考えるが,新聞等はそれぞれの編集方針に基づき記事を記述していることから,現実の具体的な政治的事象を取り上げる際に副教材として使用する場合には,一紙のみを使用するのではなく,多様な見解を紹介するために複数の新聞等を使用して,比較検討することが求められる。」と、複数紙を比較させて考えさせるように記述されています。具体的には、例えば、安保法制の是非を議論するときは、賛成派の新聞(読売新聞など)と反対の立場の新聞(朝日新聞など)を配付して、生徒にそれぞれの主張と根拠などを比較させたり、討論資料として利用させたりすることになります。「複数の新聞」に関しては、私は全国紙2紙と地方紙1紙の計3紙を配付すると、多面的な視点が養えると考えています。もちろん、取り上げるテーマが対立的でない場合(例えば、北朝鮮の核実験実施など)については、提示は1紙でよいことになります。

 ただしこの手法の課題は、生徒の「メディアリテラシー」育成が必要性となりますし、指導する教員が複数紙を購読していることも前提になっています。複数紙を読むことが難しい教員の中には、ネットで拾い読みをして終わらせる危険性があります。

 もう1点、新聞利用のメリットとして「利便性」があげられます。例えば、教員が各党のマニフェストをまとめることは選挙期間以外は行えますが、選挙期間中は行えません。ではマニフェストの比較をどのように行うかというと、生徒がまとめるか、新聞の「マニフェスト一覧表」を印刷・配付することなら出来るのです。このように考えると、主権者教育を行うに当たっては、ますます新聞利用が期待されることになると考えています。


※略歴
藤井 剛(ふじい・つよし)
 千葉県内の高等学校教諭として長年勤務。元NIEアドバイザー。2015年4月から明治大学文学部特任教授。NIE、放送教育、主権者教育など幅広い分野を担当。

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 学校などの教育現場で新聞を教材として活用し、児童・生徒たちの学力とモノを考える力の向上を図るための活動です。歴史的にみると、1930年代にアメリカで始まり、世界各国に広がっています。日本では1985年の新聞大会で提唱されました。89年から、一定期間学校に新聞が無料で提供される「NIE実践指定校」制度がスタートし、その後少しずつ規模を拡大して現在にいたります。