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絶対零度ってなんのこと?

東京都・橋口兼成(はしぐちかねしげ)さん(74)からの質問(朝日新聞社発行 2013年3月2日付be)

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 ●それ以下(いか)がない最低(さいてい)の温度(おんど)よ

 ◇ののちゃん お兄(にい)ちゃんにおやつを分けるのを断(ことわ)ったら「絶対零度(ぜったいれいど)のオンナめ」だって。そういえば「絶対零度」ってドラマもあったね。どういう意味なの?

 ◆藤原先生 天気予報(よほう)などで言うセ氏(し)の零度、つまり0℃は水が凍(こお)る温度だけど、絶対零度は零下約273℃。それ以下はない最低(さいてい)の温度のことなの。お兄ちゃんは「最低に冷(つめ)たいなッ」って怒(おこ)ったんだよ。

 ◇のの それ以下はないって?

 ◆先生 低温になるにつれ温度計の目盛(めもり)りが下がるのは、中のアルコールなどの体積(たいせき)が縮(ちぢ)むからよ。空気などの気体なら、もっとどんどん縮んでいくの。でも、仮(かり)に零下約273℃まで冷やせるとすると、気体の体積は0、体積というものがなくなる計算になっちゃうの。

 ◇のの それは妙(みょう)だね。

 ◆先生 ましてや、それ以下の低温はないはず、というわけで絶対の零度なの。0K(ケルビン)と書き、ここから高温に向け数(かぞ)えるのが「絶対温度」。南極(なんきょく)の最低温は零下約90℃、つまり約180K。宇宙(うちゅう)に自然(しぜん)にある最低温なら約2・7K。でも、最新の冷却技術(れいきゃくぎじゅつ)を使えば100億(おく)分の数(すう)Kって、小数点以下に0が9個も並(なら)ぶレベルまで0Kに迫(せま)ってるの。

 ◇のの すごい! けど、何のためにそこまで冷やすの?

 ◆先生 限界(げんかい)という水平線の向こうに、未知の大陸(たいりく)があるかもしれないでしょう。昔の人は金やコショウを求めて船を進めたけど、極(ごく)低温の大きな魅力(みりょく)の一つは「静(しず)けさ」よ。

 ◇のの はあ?

 ◆先生 少し回り道に思えるかもしれないけど、聞いてね。水に垂(た)らしたインクや、スプレーした香水(こうすい)は、かきまぜなくても広まっていくね。それは、インクや水などの分子や原子が勝手(かって)に乱雑(らんざつ)に動き回るからよ。でもその動きは温度が下がるほど鈍(にぶ)って、そうなると人間は「冷たい、寒(さむ)い」と感じるわけ。

 ◇のの そうなってるんだ。

 ◆先生 でも、分子や原子の動きの活発(かっぱつ)さには「限りなく近づけるけど、そこまでは鈍くなれない壁(かべ)」があって、そこが絶対零度なのよ。

 ◇のの あり得ない低温なわけね。

 ◆先生 分子や原子の乱雑な動きは、いわば雑音(ざつおん)。雑音をゼロに近づけてこそ聞こえる響(ひび)きがあるの。たとえば、物は原子などの小さな粒(つぶ)の集まりなんだけど、極低温になると、1個1個の粒の姿(すがた)はかすんで、波としての性質(せいしつ)のほうが目立ってくるのね。ふつうの温度では隠(かく)れていた姿よ。そんなふうに自然界の本質が見えてくるのよ。

 ◇のの おもしろそうね。ところで温度には高い方の限界もあるの?

 ◆先生 人間は、宇宙誕生(たんじょう)直後のような約4兆(ちょう)度まで達成(たっせい)しているけど、本当に上限がないかは不明よ。

 (取材協力=久我隆弘・東京大教授、田崎晴明・学習院大教授、構成=武居克明)

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