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スペシャルインタビュー

メイクの力で芸術性を追求するスポーツを支援 日本の美を世界に発信【コーセー】

2018年12月5日

昨年12月の全日本選手権で3位と急成長の紀平梨花選手。
「とても表現力が豊かなので、かわいいメイクも大人っぽくセクシーなメイクも上手です」と石井勲氏=コーセー提供

一糸乱れぬ演技で水中の華と称されるアーティスティックスイミング、銀盤の舞にため息を誘われるフィギュアスケート。ともに高度な技とその完成度を競いながら、芸術性を追求するスポーツだ。コーセーは美を競うスポーツを化粧品を通じて応援しようと、両競技を2006年から支援している。選手たちのメイクの提案、指導を担当する同社のメイクアップアーティスト、石井勲氏は「衣装や楽曲と一体となって世界観をつくりあげ、選手の表現力を高めるようなメイクを心がけています」と語る。

――スポーツの支援に乗り出したきっかけを教えてください

インタビューに答えるメイクアップアーティストの石井勲氏

 コーセーは40年以上前から、スポーツを楽しむ女性向けの商品開発に取り組んできました。1976年にサンオイルや日やけ止めのブランド「スポーツ」を発売。1981年からはスポーツ専用ブランド「スポーツ ビューティ」を展開しています。スポーツをするときも美しくありたいという願いにこたえ、汗や水に強くて紫外線から肌を守る高い機能性が特長です。

 こうした流れもあり、芸術性の高い競技を中心に支援を続けています。コーセーは2006年、日本水泳連盟のアーティスティックスイミング日本代表「マーメイドジャパン」とオフィシャルコスメティックパートナー契約を、日本スケート連盟とオフィシャルパートナー契約を結びました。また、2017年には「新横浜スケートセンター」の3年間のネーミングライツ契約を結び、「KOSÉ新横浜スケートセンター」としてスケーターの育成を応援しています。

――選手たちをどのようにサポートされているのですか?

今年4月の国際大会「ジャパンオープン」に向け、アーティスティックスイミング日本代表のマーメイドジャパンにメイク講習会で指導した石井勲氏(写真右)=コーセー提供

 競技会で使用する衣装や楽曲に合わせたメイクを提案、指導しています。

 アーティスティックスイミングでは審査員から離れた場所でも映えるように、水中でも鮮やかでクリアな発色を意識しています。日本代表の井村雅代ヘッドコーチからは「水着の中で一番目立つ色をメイクに必ず採り入れてほしい」と依頼されています。さらに、楽曲を聴いて、「和テイスト」「女性らしい」「力強い」などといったイメージを引き出し、使う色や入れ方をデッサンします。本番まで1カ月を切ってから水着のデザインが決まることもあり、結構バタバタです。

 水中で激しく動いても落ちない耐久性も重要です。使用するアイテムはすべて市販されており、競技用に開発したものではありません。汗や水に強いウォータープルーフの商品を中心に工夫を凝らしています。目元のアイカラーは、ウォータープルーフのリキッドタイプをベースとしてまぶたにのせた後、発色に優れたパウダータイプをつけ、さらにリキッドタイプを重ねる。サンドイッチのような構造にするとピタッと密着して、発色が持続して落ちません。自分の顔に塗っては水で洗ってみて、試行錯誤を繰り返しました。

――選手を対象にメイクの講習会も実施されています

 我々は競技会場には入れません。そこで、講習会ではメイクを手早く美しく仕上げるテクニックを教えています。また、この競技は演技と同様に、メイクにも「シンクロ(同調)」が求められます。全員が同じような顔立ちに見えることが大切で、メイクを施した後に一列に並んでもらって、審査員席と同じくらい離れた位置から井村ヘッドコーチとチェックします。「こちらの選手は発色をもう少し強く」「お隣はアイラインを長めに」といった具合に、個々の顔立ちや肌の色に応じてアイラインの太さや長さ、眉の形、色みを微修正します。このメイクを自らの手で再現できるように練習してもらいます。

 井村ヘッドコーチの指導はメイクに関しても厳しいですよ。ですから、リオデジャネイロ五輪では選手たちのメイクに不安はありませんでした。テレビで演技を見守り、デュエット、チームともに復活の銅メダルに輝いたときは感動しました。帰国後、マーメイドジャパンのみなさんがメダルをもって報告に来てくれました。「メイクが全然落ちないので、安心して演技ができました」という言葉が私にとって最大の喜びでした。

――フィギュアスケートでは、全日本選手権など競技会のエキシビジョンやアイスショーの会場にメイクルームを設けています

昨年12月の全日本選手権のエキシビジョンで、コーセーのメイクルームを訪れた紀平梨花選手。部屋にはカラフルなメイクアイテムがずらり=コーセー提供

 メイクとヘアの3人体制で、30分刻みで予約表を貼り出し、名前を書き込んでもらいます。シーズンが始まる直前になると、忙しくなりますね。新しいプログラムの衣装や楽曲、テーマを聞いたうえで、トレンド感を取り入れたメイクを提案しています。海外の選手が立ち寄ったり、男子選手にヘアセットを頼まれたりすることもあります。

 メイクルームを通じて親しくなり、選手側からメイクの相談を受けることも増えてきました。カナダで12月6日に開幕するグランプリファイナルに出場する宮原知子選手、坂本花織選手、紀平梨花選手もそうです。

 3選手ともジュニアの頃からの付き合いです。紀平選手は、最近はご自身の顔の特徴をつかんでセルフでメイクされるようになりました。さらに表現力を高めるために、ラインの強弱やリップの色味などをアドバイスさせていただくこともあります。坂本選手は、シーズンに合わせて衣装と曲に合わせたメイクデザインを考え、提案しています。コミュニケーションは密にとっており、メイクに関しては全体的に任せてくれます。眉を中心に、アイラインやカラーバランスの提案に対して毎回喜んでくれ、それを自分でも再現できるように頑張っています。

 宮原選手は長いまつ毛を魅力的にみせるメイクがポイントです。出会った頃はおとなしい印象でしたが、今では夫婦漫才のように楽しくやり取りしています。平昌五輪のショートプログラムでは、映画「SAYURI」の音楽にのせて強く生きる芸者を演じました。踊る芸者さんのイメージで、目元に赤を差し、こめかみから赤いチークを入れました。ピンク系からレッド系の色を使って妖艶な雰囲気を出そうねと話し合いました。

――メイクのサポートを通じて感じたことを教えてください

 メイクは得点に直接結びつきませんが、選手の表現力を高めることで演技を後押しすることができます。また、メイクは意識を内側から変え、自信をもたらす効果があるといわれます。「アイラインが決まったから今日はうまくできた」と話してくれる選手もいて、戦いのモードのスイッチを上手に入れてくれるのがメイクかなと感じています。

 また、メイクの講習会に当社のグローバルな接客・メイクコンテストで優秀だった美容スタッフを応援に呼ぶことがあります。世界で活躍する選手をサポートする経験によって仕事に誇りをもつことができ、「入社してよかった」「もっとメイク技術を磨きます」と、モチベーションの向上にもつながっています。

――2020年に向けて期待されることは?

 日本開催ということで、選手たちに自信をもって競技に挑んでもらえるように、汗水に強く、美しいメイクが持続するよう、サポートに力を入れたいです。また、ウェアの機能やデザインが進化して、スポーツをファッショナブルに楽しむ人はますます増えていくと思います。東京2020オリンピック・パラリンピックでは、選手だけじゃなく、応援する人もメイクを楽しむことで、日本の美を世界に発信してほしいですね。

KOSÉ SPORTS BEAUTY NEWS

株式会社コーセー

メイクアップアーティスト

石井 勲氏

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