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スペシャルインタビュー

「ラグビーで一つに」丸の内15丁目プロジェクトの仕掛け人【三菱地所】

2018年12月27日

東京千代田区丸の内。本来は1~3丁目までしかない日本有数のビジネス街に2018年秋、突如「15丁目」が出現した。その街の「役場」はこう呼びかける。世の中のラグビー熱を一緒に高めていく仲間を募集します―。来年、日本にやってくるラグビーワールドカップのオフィシャルスポンサー、三菱地所グループが仕掛ける「ラグビー×街づくり」プロジェクトだ。街ににぎわいと話題を呼んだ企画の仕掛け人たちに聞いた。なぜ丸の内、なぜラグビーなのか。

丸の内15丁目ってなんだ? という興味や期待を持っていただけたのかな、と感じています

インタビューに答えるラグビーワールドカップ2019プロジェクト推進室統括の高田晋作さん

 そう話すのは、このプロジェクトの仕掛け人。ラグビーワールドカップ2019プロジェクト推進室統括、高田晋作さん(40)だ。「15丁目」は、ラグビーチームが15人で成り立つことにちなんでいるという。

まずは、ラグビーが持つ本質的な魅力を伝えるというのは、ぶれないでやったつもりです。その目標は達成できたと思います

 身長191センチ。1999年度、慶大蹴球部(ラグビー部)が創部100周年の時、大学選手権で優勝したチームで主将を務めたバリバリのラガーマン。現在もLOコーチとして現役を指導している。

 今年9月に丸の内をラグビー一色に染めた「丸の内15丁目プロジェクト」では、美術館、ビジネススクール、映画館など、街にある様々な機能とラグビーをかけあわせて、新たなラグビーの魅力を体感できるイベントを企画した。ラグビーに興味がない人にも「好き」になってもらう様々な入り口を設けて工夫した。

 例えば、「ラグビーアート展」を開いた美術館では、前回のワールドカップで日本が強豪の南アフリカを大逆転した試合のラスト4分間の細かな戦術の軌跡を240枚の連続ポスターでアートとして表現した。

ラグビーW杯1年前を迎える9月に「美術館」アート展が丸の内にお目見えした =三菱地所提供

 ビジネススクールの「RUG BIZ SHOW」ではビジネスの最前線で活躍する元ラガーマンや現役選手を講師に招き、ビジネスにも共通する「リーダーシップ」、「マネジメント」、「戦略的思考」等をラグビーを通じて学べる場を提供し、盛況だった。

ラグビーから学ぶビジネススクール「RUG BIZ SHOW」には世界的選手のダン・カーターらが講師で登場した=三菱地所提供

 丸ビル1階などで上映した南ア戦の大金星を描いたドキュメンタリームービー「JAPAN WAY」には来場者からSNSで「涙ものだ」というコメントも寄せられた。

 来秋のワールドカップ期間中には、丸の内を世界中のラグビーファンや観光客に楽しく回遊してもらう計画があり、大会1年前の今回は、そのいわばキックオフだった。

 ところで、なぜ、ディベロッパーの三菱地所グループがラグビーを応援するのか。

 社内外から「それって組織委員会の仕事じゃないの?と突っ込まれることもある」と笑うのは、ラグビーワールドカッププロジェクトの推進室長、渡辺昌之さん(47)だ。

スポーツの魅力って、ものすごく強いものがありますよね。楽しいし、見ていて爽快感がある。暮らしに活力や潤いを与えるし、実際に運動をしてみようというモチベーションにつながれば、健康にも寄与する。みんなが関心を持つスポーツに対しては、企業として応援したいという気持ちが強くあって、もともとスポーツ協賛には興味を持っていたんです

インタビューに答えるラグビーワールドカッププロジェクトの推進室長の渡辺昌之さん

 「人を想う力。街を想う力」をスローガンに企業広告を長年発信してきた一方で、2014年夏からは体操日本代表(体操ニッポン)もオフィシャルスポンサーとして支援している。

企業広告は、割とうまくできていましたが、東京で2020年にビッグイベントの開催が決まって、スポーツの価値がさらに高まってきた。ただ、いまのスポンサーシップやマーケティングライツの仕組みでいうと、総花的に応援するというのがなかなか難しい

 そこで同社が目をつけたのがラグビーだった。

我々は街づくりの会社。その成り立ち、大切にしているものと、ラグビーにはたくさん共通点があるんです。街を作っていく時もコンセプト、機能を考える人。建物を設計する人、建設する人、警備、管理、清掃する人……。それぞれの持ち場でいい街を作ろうという、一つの目標に向かって一生懸命がんばって行かなければなりません

ラグビーのチームにもかなり多様な役割の選手がいますよね。体が大きい人、目配りができる人、足が速い人……。いろんな機能のプレーヤーがいて、組織として有機的に機能できるかどうかが鍵になる。以前から三菱地所では、『As One Team』(一つのチームとして)というフレーズを使ってきたんですけれど、そういうものと、ラグビーの「One for All, All for One」が合致するんです

 ラグビーワールドカップは来年9月20日に開幕、11月2日が決勝と、長期間にわたる。渡辺室長が発想をめぐらせる。

特にヨーロッパからたくさん人が来そうだし、試合間隔も空く。そうすると、合間に日本を色々見て回ってくれそうだな、と。東京一極集中ではなく、大会が全国12都市で開催されるのもメリット。三菱地所グループも、日本全国でビジネスを展開しているので、地方の方にもいろんな施設を見ていただきたいし、海外の方にも

 高田さんも同調する。

街づくりとラグビーは親和性が高い。しかも、2020年の前に、2019年がやってくる。ラグビーを通じて、日本全国で展開ができることが、三菱地所にとっては最良の機会ととらえてます

 近年、商業施設やオフィスビル、空港のターミナルビルなど、地方での仕事も増えているという三菱地所グループにとっては、ワールドカップの12都市での分散開催が、追い風になると渡辺さんは強調する。

この秋には札幌、仙台、横浜、静岡、名古屋、大阪、神戸、福岡でも、ラグビーのアクティベーションイベントをやりました。地域がにぎわい、活性化することが、魅力的な街づくりにつながります

 ワールドカップ開催都市の子供たちに、タグラグビーで使う4号球のボールを贈る活動も展開している。

オフィシャルスポンサーとして、『普及』にも貢献し、レガシーを残していきたい。私たちにとっても、いままでなかなか接点を持てなかった地方自治体の方などと、ラグビーを通じて知り合い、世界が広がるメリットもあります

ラグビーW杯へ向け、開催都市の熊本県の小学校にボールを寄贈する三菱地所の杉山博孝会長(写真左)=三菱地所提供 熊本の地元小学校では三菱地所社員によるラグビー体験イベントを開いた=三菱地所提供

 三菱地所グループがラグビーワールドカップ2019のオフィシャルスポンサー契約を結び、発表したのは今年4月。その数カ月前、昨年暮れに大会組織委員会が実施した調査では、大会の国民の認知度が56%にとどまっていた。渡辺さんが振り返る。

当初は社内にも色んな意見があった。『ラグビーがディベロッパーの理念にマッチするのはわかるが、協賛金も高額だし、そこまで踏み切るのは簡単じゃないね』という声も

ただ、『やろう』となってからはネガティブな意見は聞かないですね。みんなが関心をもって支援してくれています。スーパーラグビーのタイトルスポンサーにもなっていますので、サンウルブズの5月の試合は、ファミリーデーとして、グループの従業員約800人で、そろいの赤いTシャツで応援しました。そんな、インナーコミュニケーションとしても活用しています。当社はラグビーに大きく舵を切った。やるからには、やれることをやる。そんな思いでまとまっていると感じています

 9月の「丸の内15丁目プロジェクト」を仕掛けた高田さんは、ビル営業部に所属しながら、ラグビープロジェクトを兼務する。現在は次なるラグビー応援企画に知恵を絞っているが、その中心メンバーは、意外にもラグビーチームにも満たない小所帯だ。

社内にはラグビー好きがけっこういるんですが、それだけでまとまるのはよくない。今、ラグビーワールドカッププロジェクト室は12人態勢ですが、もちろんそのメンバーで完結するわけではなく、12人を軸に、社内全体に協力をお願いしながら、動かしています

 1月中旬には「丸の内15丁目プロジェクト」の次なる企画を検討中という。

 慶大時代に日本一を経験した、高田さんのラグビー愛は深く、理想は高い。

そもそもまだまだ、ラグビーワールドカップは盛り上がっていないと感じます。自分たちだけで課題を抱えるのではなく、いろいろな人が関わって行く仕組みを作らないと。ラグビーそのものや大会が盛り上がらないとスポンサーの価値も半減すると思うんです
『4年に一度じゃない、一生に一度だ』という大会キャッチフレーズの通り、自分が打ち込んできたラグビーのワールドカップの日本開催なんて、個人としても二度とない機会。
自分の会社も巻き込みながら、街づくりにつなげるチャレンジでもある。ラグビーの魅力を最大化して、自分たちの会社と社会にどう生かすか、という視点を欠かさないようにしたい

 最後に、このプロジェクトの要を担う高田さんに聞いてみた。ラグビーを通じて学んだ事で、現在の自分に最も生きていることとは―。

ちょっと無理かなということもとりあえず、突き進んでいく。ピンチの時こそ自分から前に出ること、ですかね

三菱地所株式会社

左:ラグビーワールドカップ2019プロジェクト 推進室長 渡辺昌之氏

右:ラグビーワールドカップ2019プロジェクト 推進室統括 高田晋作氏

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