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歌舞伎や能 漫画で脚光 若手を描き身近に

2010年5月7日

 歌舞伎や能などの古典芸能を題材にした漫画が、人気を呼んでいる。若手役者がテレビ出演するなどして認知度が上がっていることも背景にあるようだ。等身大の若者を主人公にし、「敷居が高い」と思われがちな世界を分かりやすく描くのが特徴で、古典芸能の世界への入り口にもなっている。

 同じ芸能でもバレエなどに比べて漫画の世界で目立ちにくかった、歌舞伎や能などの古典芸能。

 しかし、「週刊少年サンデー」(小学館)で今年1月に連載が始まった「國崎出雲の事情」(ひらかわあや作)は、歌舞伎俳優一家の美少年・出雲を主人公にした。

 幼なじみや舞台の共演者と繰り広げる騒動を軸にしたコメディーだが、歌舞伎の有名な演目が採りあげられたり、出雲が女形として奮闘する様子が描かれたりもする。

 作者ひらかわさんの地元は島根県。歌舞伎の創始者とされる出雲の阿国の伝説がある地域だ。ひらかわさんは、阿国をテーマにした演劇に出演したことをきっかけに歌舞伎に興味を持ったという。

 同誌の読者層の中心は小中学生。子どもたちにとって身近とは言い難い歌舞伎を題材にすることには不安もあったという。しかし「初めて見るからこそ魅力的に映る部分もあるようだ」と担当編集者は語る。絵柄のかわいさもあって「男女を問わず反応は良好」といい、4月に単行本の第1巻が発売された。

作品の世界を深く

 大人向け漫画誌では、古典芸能そのもののありように触れた作品が目をひく。

 週刊「モーニング」(講談社)連載中の「かぶく者(もん)」(原作デビッド・宮原、漫画たなか亜希夫)は、門閥外の駆け出し役者・新九郎が保守派に妨害されつつも御曹司や人気役者と対等に渡り合い、「かぶく」ことを極める物語だ。

 新九郎の型破りな行動が一番の魅力だが、物語中で上演される「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」など、作品世界そのものも深く描写する。宮原さんは「自分なりの解釈。僕が見て感じたことを書かないと、初めて見る人には分からない」。歌舞伎座で若い観客が「かぶく者」を読んでいる姿を見かける時が「うれしい」と言う。

家族・恋愛の悩みも

 能の若手シテ方を主人公にした「花よりも花の如(ごと)く」(成田美名子著)は、隔月刊「メロディ」(白泉社)で連載中の人気作だ。成田さんが能を好きだったこともあり、装束の決まり事から面の角度にまで正確さを期す丁寧な取材が特徴。「伝統芸能の魅力はその厳しさにある。大切にしたい」と成田さん。

 主人公が役者として一人前になっていく過程以上に、家族との関係や恋愛といった「普通」の悩みの描写に重きを置いているという。

 「能楽師の話を描こうと思ったのではなく、描こうとしたキャラクターの仕事が能だったという感じ。読者も、人間を描いたストーリーとして見てくれているようです」。読者からは、作品がきっかけで能を見たという反応も寄せられているという。(増田愛子)

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