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これぞミュージカル「矢島美容室 THE MOVIE」

2010年5月7日

 「ウエストサイド物語」が私はどうも好きになれない。ミュージカルにリアリズムを持ち込んだと評価されているが、現実の物語と風景の中で、人が突然歌い出すのはやはり不自然に思えてしまう。

 テレビのバラエティー番組から生まれたこのミュージカルはリアリズムから遠く離れている。主人公は米ネバダ州に住む母娘。とんねるず木梨憲武の肉体を持つ母マーガレット(36歳)、石橋貴明は次女ストロベリー(11歳!)、DJ OZMAの長女ナオミ(17歳)。3人が日本に渡って歌手になるまでの物語だ。

 冒頭から終幕まで、物語は馬鹿馬鹿しさに満ちている。背景は異様にカラフルな米国の住宅街。だから私たちは安心して歌や踊りを楽しむことが出来る。父の家出、初恋のときめき、そして失恋、友情の確認などが、きちんと作り込まれた歌で表現される。

 馬鹿馬鹿しい物語には憎らしくて魅力的な悪役が不可欠だ。その意味で、この映画の成功は、金持ちで美人で性格の悪いラズベリーを演じる黒木メイサによるところが大きい。彼女はナオミの夢をあっさり粉砕し、ストロベリーの前に立ちはだかる。

 実は、木梨のマーガレットとOZMAのナオミはそれなりにサマになっている。彼女たちの演技にはリアリズムがある。一方、石橋のストロベリーは全く冗談としか思えない。しかし、中島信也監督はクライマックスにストロベリーのドラマを持ってきた。

 どでかい中年男のストロベリーが絶世の美女ラズベリー(こちらも11歳!)と対決する。ところが、私たちはそんなありえない物語に引き込まれている。感動さえしてしまう。これぞミュージカルの不思議。リアリズムはやはり必要ないのだ。(石飛徳樹)

 全国で上映中。

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