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地元に根付く奄美の歌手 生きた歌、島に未来に

2009年8月3日

写真中村瑞希(手前)と麓憲吾理事長=中井征勝氏撮影

 元(はじめ)ちとせや中(あたり)孝介らを送り出して注目を浴びる鹿児島県・奄美地方の音楽。2人が東京での活動で全国的な知名度を得たのとは対照的に、奄美に根付いたまま音楽を続けていく新しい動きも生まれている。後押しをするのは開局2年の地元FMラジオ局だ。

 「私は島から出ません」というのは中村瑞希(みずき)。06年の日本民謡フェスティバルでグランプリを受けるなど、実力派の唄者(うたしゃ)(歌手)として知られる。

 02年に元ちとせのデビュー曲「ワダツミの木」がヒットすると、中村にも東京の大手レコード会社が競ってメジャーデビューを持ちかけた。

 だが、中村は「ちとせ姉ちゃんが東京で頑張ってくれてるなら、私は島で頑張る」と断った。この春に発表したミニアルバム「TSUMUGI」は島民の愛唱歌になっている。

 ミニアルバム「カサリンチュ」を出した男性デュオ「カサリンチュ」も同様だ。アコースティックギターとヒューマンビートボックスというユニークな構成。島唄の枠にとらわれない作品で注目を浴びているが、拠点はあくまでも奄美大島だ。

 中村らの後押しをしているのは07年に開局したコミュニティー放送「ディ!ウェイヴ」。NPO法人「ディ!」が経営し、島の方言や民謡を積極的に取り入れた自主制作番組などで住民に親しまれているFMラジオ局だ。音楽レーベル「ディ!レコード」も発足させて中村やカサリンチュのCDを制作した。

 奄美の唄者はこれまで、東京に出てメジャーデビューし、その歌は中央のメディアを通して島に届いていた。だが、東京でヒットが出ないと故郷に帰りづらくなる。

 「ディ!」の麓憲吾理事長は「これはおかしいとずっと思っていた」という。

 「島の人に直に歌を届けて島で一番でいることの方が、テレビに出るよりも価値がある。全国に放送されたものの、やがて忘れられてしまう歌より、10年後も島で聴かれ続ける歌の方がいいんじゃないか」

 その思いを実現する手立てが地元FM局だ。

 中村の「TSUMUGI」は奄美や沖縄への関心が高いミュージシャン、ハシケンとのユニットで作った。中村は「島にいてもハシケンさんと出会えた。島を出ないと音楽が出来ないというわけじゃない」という。

 麓理事長は「僕らが作ったCDは全国でも販売するけれど、生きた歌が聴きたければここに来てもらう。奄美全体を歌の島にして、彼らの歌が聴きたければ奄美にいらっしゃい、と言えるようになるといい。中村たちのあり方が一つのモデルになればうれしい」と話している。(篠崎弘)

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