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梅田芸術劇場「AIDA アイーダ」再出発の安蘭、大輪の花

2009年9月11日

 宝塚歌劇の男役が女優に転身するのは楽ではない。長年磨いた技と所作を捨てて新たな表現を体得する。このハードルを越え、なおかつ個性と合う役に巡りあったとき、初めて大輪の花が咲く。

 星組の前トップスター安蘭けいの再出発は異例かつ幸運だ。女優第1作「AIDA」は宝塚時代に出演した「王家に捧ぐ歌」(03、05年)のリメーク。男役ながらアイーダ役を好演した経験を生かし、より情感と深みを増した演技と歌唱で女優の天分を示した。

 同名オペラが下敷きのオリジナル作品。エジプトの将軍ラダメス(伊礼彼方)、捕虜のエチオピア王女アイーダ(安蘭)、エジプト王女アムネリス(ANZA)の三角関係がドラマの軸となる。

 脚本・演出の木村信司は、古代王国の戦乱を報復の連鎖が続く現代世界の縮図として描いた。強国エジプトには米ブッシュ政権が、侵略されるエチオピアにはイラクが投影される。「王家」ではこの主張が強すぎて、登場人物が作者を代弁する存在に思える場面が多々あった。本作では3人の愛の行方を前面に出し、個人の物語に変奏することに腐心している。

 多彩な曲想を自在に繰りだす甲斐正人の音楽が、この舞台の推進力だ。新鋭の伊礼は甘い声で情熱的な理想家を造形。ANZAは自尊心と嫉妬(しっと)の間で揺れる女心を繊細に歌い上げる。光枝明彦、沢木順、宮川浩、林アキラらベテラン男優の肉厚な存在感が、「王家」以上の迫力を醸しだす。安蘭は新曲「私は愛する」の絶唱で、卓越した心理描写を見せる。

 ただ、ほぼ全編を歌と音楽で運ぶ作品だけに、ト書きのように説明的で、標語を連呼するような歌詞が気になった。(藤谷浩二)

 13日まで、東京国際フォーラム・ホールC。その後大阪でも上演。

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