【最終回】ESの文章構成を考える ~序破急でいってみよう

<第45回>

 前回は「起承転結」をそのまま使うのではなく、結論を前に持ってくる、言わば「“結”起承転(+結)」というやり方について書きました。今回皆さんにぜひ試してもらいたい文章構成術は……「序破急(じょはきゅう)」です。
 序破急。ご存じでしょうか。起承転結ほどは耳にしないかもしれません。少し長くなりますが、今回も辞書を引いてみましょう(参照:大辞林)。
(1)日本の音楽・舞踊・演劇などで、楽曲構成・演出・速度などに関して三部分または三段階を想定する理論用語。(ア)を原義とし、各種の芸能に採用され、多様な意味・用法がある。
(ア)
雅楽の管絃・舞楽の曲で典型的構成とされる、序と破と急の三つの楽章。曲名に付して「五常楽の急」「太平楽の急」などと呼ぶ。序(冒頭楽章)は緩徐かつ非拍節的。破(中間楽章)は緩徐ながら拍節的。急(終楽章)は急速で拍節的。
(イ)
演奏速度の三段階。序・破・急の順に速度を増し、拍節的性格が強まる。「序の舞」「急の位」など、主に能で用いられる。
(ウ)
楽曲構成・番組編成・演出などの理念上の三区分。上演の時間経過に伴う趣向変化の典型を想定したもので、序・破・急は導入・展開・終結とみなせる。能・浄瑠璃の脚本構成、能の五番立の番組などがこの理念による例である。
(エ)
楽曲中の速度の緩急、技巧の繁簡、表情の静動などの変化を包括的にさしていう語。三味線楽・箏曲などの近世邦楽や講談などの話芸で用いられ、三区分不明確な一語として「序破急」ということもある。
(2)物事の構成。はじめと中間とおわり。
 前回の「起承転結」が漢詩由来だったのに対し、「序破急」は日本雅楽(舞楽)由来。特に大事なのは(1)の(ウ)。要は「3部構成」なんですね。
 「起承転結」は、前回も書いた通り文章構成の基本というか「骨格」としては便利です。しかし、(漢詩よりは)長いESや作文にはやや不向きな面も。そこでいっそ、3部構成でシンプルに! という提案です。普通に考えると
・序=イントロ 破=本文 急=結論
 なのですが、これも前回を応用して「“急”序破(+急)」でいきましょう。「主張をきっぱり(急)」→「前提条件を説明(序)」→「エピソード(破)」といったイメージですね。エピソードが複数あって、それぞれが同じようなことの並列ではなく、お互いを補強し合うような「強い」ものであれば「起承転結」の「転」として生きますが、多くの場合、なかなかそうはいかないでしょう。どちらかと言えば、「とっておき」のエピソード「一つ」をしっかり語った方が良いもの。その点からも「序破急」はオススメです。
 実は「序破急」には、「3部構成」以外にもう一つ就活のヒントになる提案が隠されています。(1)の(ア)を見てください。
・序=緩徐かつ非拍節的 破=緩徐ながら拍節的 急=急速で拍節的
 そう。「テンポ」です。ものすごくざっくりとまとめると……序は「ゆっくり」、破も「ゆっくり、ただし序よりはリズムを持って」、急は「急速でリズミカル」。文章ではこれを表すことはなかなか難しいですが、面接ならどうでしょうか? そうです。結論(急)はやや早口に力強く(もちろん聞き取れるレベルで。笑)で言ってみる。それを受けたイントロは少し抑えた感じで。エピソードに入ったら、気持ちテンポを上げて。
 話す方としてもメリハリがつきますし、何より聞き手(=人事担当者)があなたの話す内容への「準備・予想」をもって臨むことができます。演技過多になる必要はありませんが、平板な話し方になりがちな人は、少し意識してみましょう。
 これも「3部構成」だからできる技。4段階にテンポを変えるのは、ちょっと難しいですからね(笑)。(文 中原光一)

中原光一(なかはら・こういち)
プロフィル 中原光一(なかはら・こういち)

1998年朝日新聞社入社。東京校閲部、大阪校閲部、高松総局、大阪編集センター(地域面・本紙)、教育総合本部などを経て、東京校閲センター次長。専門職である校閲記者採用ながら、取材執筆、整理編集とマルチに(あくまで自称)経験。「とりあえず何でもやってみる」精神でここまで乗り切ってきた。言葉とアイドルとお酒が好き。

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