自分が何を伝えたいのか、とことん向き合って開けた道

<第4回> インタビュー 篠原真喜子

 大学1年の夏、親からもらった合宿免許代はカメラに……。申し訳ないと思いつつも、カメラを持って旅行したり、人に会いに行ったり、雑誌をつくったりして独学で写真を学びました。結婚式場でカメラマンのアルバイトもするようになり「写真の腕には自信あり!」と思っていたのです。しかし、マスコミを目指して就活を始めると壁にぶつかり「そういうことじゃないんだ」と気づかされました。庄司さんが気づき、学んだこととは? 当時を振り返りながら、語っていただきました。

庄司優太さん
プロフィル 庄司優太さん

経営学部 経営学科。受験職種は新聞、テレビ、映画、広告、メーカー。ES提出数45社、面接まで進んだ会社数35社、内定先は新聞社、テレビ局各1社の計2社。

道のり内定までの道のり

大学1年
入学時からなんとなく新聞社、テレビ局を志望
大学3年11月
新聞社のインターン参加。社員の方の言葉が大きな転機に
大学3年1月
お正月ボケからキー局本選考で失敗。インターン数社にES出せず、大反省
大学3年2月
インターン参加と筆記試験対策に追われる
大学3年3月
説明会はどんなものでも参加し、名刺を渡しまくる
大学4年4月
地元局面接、新聞社の宿泊試験などに呼ばれるもNGで大ショック!
大学4年5月
志望度の高い企業5社落ちが続き、絶望的に……
大学4年6月
ついに念願のテレビ局から内定GET!

マスコミで何かを伝えること

 ――幼い頃からマスコミへの思いがあり、大学時代は雑誌制作にも携わっていたそうですね。

 大学に入学してすぐ広告研究部に入り、学内情報誌の制作をしていました。カメラ担当で、最終的には編集長もやり、ビジュアル系の写真はほぼ僕が撮っています。この話をすると「昔からカメラやっていたの?」と聞かれることが多いのですが、写真を撮るようになったのは大学に入ってからです。実は、大学1年の夏に合宿免許代として親からもらったお金で、カメラを買ったのが始まりで……。

学内情報誌の制作に没頭。最終的に編集長も務めた※ご本人提供
学内情報誌の制作に没頭。最終的に編集長も務めた※ご本人提供

 ――合宿免許代でカメラを買ってしまったのですか?

 そうなんです。ずっとカメラが欲しかったので「買うならいまだ!」って(笑)。父親が新聞社でカメラマンをしているので、許してくれるかも、という思いはあったのですが、さすがにすぐには言い出せなくて。テレビ局の報道カメラマンに内定したあとに言いました(笑)。

 ――そのタイミングで打ち明けられたら、親も怒るに怒れないかもしれません。報道カメラマンに内定は珍しいですよね。どのような就活だったのですか?

 結果的に報道カメラマンに内定したのですが、ほとんど記者職で受験していました。もともとは記者志望でしたし、カメラマンとしての採用はしていない会社も多いので。就活を始めるまでは、結婚式場などでカメラマンのバイトもしていたので、普通の人よりは「写真撮れますよ」と思っていたんです。あと、父親の影響で何となくマスコミの存在が近くにあって、どこかで根拠のない自信みたいなものもありました。

 ――根拠のない自信ですか(笑)! でも、壁にぶつかったのですよね。

 はい。3年の11月上旬に新聞社のインターンに参加したんですが、そこで写真部の方が「腕は関係ありません。大切なのは、いま世の中で起きていることや、それに対する疑問、感じたことをどう伝えたいのか、自分の考えをもつこと。記者ならペン、カメラマンならカメラでそれをやるだけで、基本は同じ」と言われたんです。この言葉がすごく響いて。「そうか、マスコミで何かを伝えるのはそういうことなのか」と。これまでの自分、なんて浅はかだったんだろうって思いました。でも、自分が何を伝えたいのかなんて、それまで考えたことがなかったんで、すぐにはわかりませんでした。

 ――どのように見つけていったのですか?

 新聞を読むなかで、だんだんと気づいたんです。11月末に朝日就職フェアの「マスコミセミナー」に参加したんですが、周りの学生に比べて完全に出遅れている自分に気づき、相当焦りました。それで、とりあえず新聞を読もう、と。直感で気になった記事をスクラップすることから始めました。スクラップをあとで見返してみたら「五輪後のリオ 銃弾飛び交う」や「スポーツと食の苦しみ」など、スポーツ関連の記事、特に、その裏側や負の側面について書かれた記事が多くて。「ああ、自分はこういうことを伝えたいんだ!」と気づいたんです。

スクラップノート。面接中に見せたこともあり、反応は上々だった※ご本人提供
スクラップノート。面接中に見せたこともあり、反応は上々だった※ご本人提供

 ――やりたいことを見つけるために、新聞スクラップが役立ったのですね。

 それまでは、新聞は図書館で読めばいいと軽く考えていました。でも、内定者の話を聞いて、そんな甘い考えではマスコミ内定なんて無理だと思ったんです。それで、その日に申し込みました。翌日から毎朝、家に新聞が届く生活が始まったわけなんですが、郵便受けから新聞を抜いたときに1面が目に入りますよね。そのほんの数秒のルーティンが積み重なっていくうちに、いつの間にか世の中の動きが少しずつわかるようになっていて。どんな業界であれ、面接は自分のことだけではなく世の中のことをわかっているか、つまりは世間話ができるかどうかも見られるので、新聞を読んでいてよかったと思いました。

下手ならいい文章をまねする

 ――伝えたいことが見つかっても、今度はそれをどうアピールするかですよね。ESには、どのように書いていたのですか?

 ESは、ものすごく苦労したんです。もともと理系で、国語が大の苦手。本もあまり読まないし、文章にはまったく自信なくて。かといって、内定した先輩のESやES対策本も見ませんでした。文章力がなさすぎて、見たらそのままを書いてしまいそうだったので……。

 ――となると、どうやって克服したのですか?

 朝日新聞の「天声人語」で鍛えたんです。新聞を読み始めてから、どんなに忙しくても「天声人語」だけは読んでいました。別の話題から始まるのに、ちゃんと本題に寄せていって、最後はきれいに着地するんです。たった603文字なのに、きちんと起承転結もあります。例えば、僕のお気に入りなんですが、ちょっと読んでみてください。書き出しは「肉まん」と「豚まん」の話。同じものなのに名前が違うという切り口です。読み手は、これから何の話が始まるんだろうと思いますよね。そこから、森友学園の土地売買について、国会で「金額のやり取りはしたが、価格の提示はしてない」という珍答弁をした財務省理財局長の話を例に展開していきます。そして、最後は「冗談でしょ/うそやろ」と結ぶ。すごいですよね。「天声人語」の文章構成は、いつも本当に衝撃的でした。文章ってこう書くんだ! って初めて知りました。それで、文章が下手ならまずはいい文章をまねしてみようと思って書いていたら、少しは立派な文章が自然と書けるようになってきたんです。

お気に入りの「天声人語」
お気に入りの「天声人語」

 ――マスコミには論作文試験もありますからね。その対策にもなりそうですね。

 作文がだいたい800字なんで「天声人語」の構成に慣れていると、それより少し多い800字でまとめる作文も書けるようになりました。「天声人語」をまねする前は、自分がやってきたことの自慢や押し売りみたいなESでした。でも、そういうESを書く人はいっぱいいると思うし、読む側もあまり読みたくないですよね(笑)。

効果的な名刺の使い方

 ――ほかにやっていたことで、後輩におすすめしたいことはありますか?

 名刺を活用することですね。これは本当に効果的でした。どんな説明会でも終了後、人事担当者に話しかけ、渡しました。裏面を埋めるくらいに感想やその会社に対する思いなどを書いて渡すと、そんな人はほかにいないので、それだけで目立ちます。こちらが名刺を出すと人事の方の名刺もいただけますし、面接会場でお会いしたときも「お久しぶりです」と、あいさつできるのもよかったです。

 ――企業側もそのようなことをされたらうれしいので、覚えていますよね。

 実際、名刺だけの効果なのかわかりませんが、説明会後に人事部から電話があって、相談役に会えたことがありました。名刺の裏には、スポーツ関連の取材をしたいという志望動機に近いことを書いたこともあります。ESをその1カ月後くらいに出すので、その前哨戦のつもりで。すると面接時に「スポーツをやりたい庄司さんね」と言ってもらえることも。説明会で名刺を渡した企業のESは、ほぼ落ちてないと思います。名刺の使い方は、朝日就職フェアで教えてもらったんですが、あのとき習ったことでこれが一番役立ったかも(笑)。

人事担当者に名刺を渡すためだけに説明会に出席したことも。それほど効果的だった※ご本人提供
人事担当者に名刺を渡すためだけに説明会に出席したことも。それほど効果的だった※ご本人提供

メディアを見続けた毎日

 ――面接のときは、なにか工夫されていたことはありますか?

 企業研究は手を抜かなかったです。受験する会社はもちろんですが、普段からできるだけいろんなメディアに触れておき、面接のときも説得力のある話ができるようにしていました。新聞で読んだことは、テレビ、YouTubeなど、他メディアでも確認して。例えば「朝日新聞の朝刊で1面だったことをテレ朝が大きく取り上げているが、日テレはどう扱っている? AbemaTVは?」などと日頃から気にするようにしていましたね。

 ――見比べることで、いろいろな気づきもありそうですね。

 はい。テレビ局、新聞社、映画会社、地元の局、広告会社を受けていたので、ニュースアプリやスポーツ新聞、テレビ番組のチェック、映画を1日1本鑑賞、親に地元局の近況確認、というのを毎日やっていました。4年になってからは、すべての時間を面接対策に費やしていました。最終面接ぐらいになると「いま大きく取り上げられているニュースについて思うこと」「最近ひどくむかついたこと」「昨日のニュース、自分ならどういう撮り方をするか」など鋭い質問がバシバシ飛んでくるんですが、これだけやると、スラスラと答えられるようになっていましたね。

3年生の11月にサークルを引退。就活に向けて本腰を入れようと決意した※ご本人提供
3年生の11月にサークルを引退。就活に向けて本腰を入れようと決意した※ご本人提供

 ――就活を終えたいま、後輩にどのようなアドバイスをしたいですか?

 根拠のない自信は危険、ということですかね(笑)。内定した先輩のESを見なかったのも、僕の場合は結果オーライといえますが、決しておすすめできません。それと、志望業界に精通している人やその業界にいる先輩には、絶対見てもらうべき。そのほうが僕も、早く自分の希望する道にたどりつけたかもしれません。就活は、一人でやり遂げるものではありませんから。大学受験とは違うので、周囲からいっぱいアドバイスをもらいながら、思う存分やりきってほしいと思います。(構成 ライター・小元佳津江)

篠原真喜子(朝日新聞社 就活キャリアアドバイザー)
プロフィル 篠原真喜子(朝日新聞社 就活キャリアアドバイザー)

2003年入社。自身の就活経験を生かして、2004年に「朝日就職フェア」を立ち上げる。以降、同フェアの企画・MCとして活躍。雑誌「CanCam」「エアステージ」の就活特集にも「就活のプロ」として登場。キャリア支援した学生はのべ5万人。国家資格キャリアコンサルタント。

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