描く未来から逆算し、自分が最も力を発揮できる場を探す

<第5回> インタビュー 篠原真喜子

 夢を実現するまでの道筋をきちんと描きながらも、その場その場の結果を理論的に捉えて柔軟に動き、最終的に、大手外資系コンサルティング会社内定を勝ち取った岸さん。そんな岸さんが、就活の軸としていたことは何だったのでしょうか? モットーの原点となった意外な出来事や意識していた点について伺いました。

岸薫さん
プロフィル 岸薫さん

理学部 物理学科。受験業種はIT、コンサル、総合商社、ベンチャー等。ES提出数18社、面接まで進んだ会社数10社、内定先は外資系コンサルティング会社、ITの計2社。

道のり内定までの道のり

大学3年夏
将来的に起業の夢もあり、実現できそうな総合商社とコンサルに志望業界を変更
大学3年秋
新聞社のインターン参加。社員の方の言葉が大きな転機に
大学3年12月
漠然とした憧れから総合商社をメインに活動。大手に10人ほどOB訪問。同時に、コンサルやベンチャー企業の就活も継続
大学3年1月
コンサルの本選考。総合商社の冬インターンに応募するも通過ならず
大学3年3月
色々考えた結果、総合商社は合わないかもしれないと感じ、受験をやめる
大学4年4月
外資系コンサルティング会社、IT会社から内定獲得。キャリアプランにも合い、成長もできそうだと感じたコンサル会社に決定

夢を実現できる業界・企業

 ――岸さんは、当初ITのSEを目指していたけれど、3年生の秋頃からは総合商社とコンサルを志望業界に。そして、最終的にはコンサルに絞って活動していたのですよね。そのあたりの理由や経緯を教えてもらえますか?

 実は、将来的には起業したいという夢もありまして……。起業するなら「IT×金融でフィンテック」など、ITと何かを組み合わせるビジネスをしたいと思っていました。それで、最初の頃は、父がIT企業に勤めていたこともあり、ITのスペシャリストになろうとSEを目指していたんです。でも、よく考えると、大事なのはその掛け合わせのアイデアなので、ITと組み合わせる「何か」を見つけることのほうだと思って。それで、3年の夏頃には、幅広い商材に触れられる総合商社やコンサルに志望業界を変更しました。

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 ――いずれは起業したいという思いがあったのですね。そういう理由でその業界に。総合商社とコンサルでは、どのような就活をしていましたか?

 3年の冬頃までは総合商社に謎の憧れがあり、そちらをメインで動いていました。でも、複数の商社にOB訪問してみたら「ちょっと違うかも……」と。

 ――どのようなところに「ちょっと違うかも」と思ったのですか?

 OB訪問した総合商社は、体育会系の人が多かったんです。僕自身もスポーツを続けてきて、フェンシングをやっていましたが、いわゆる体育会系ではなかったのです。もちろん、文化系のエリート集団のような企業もありましたが、全体的に総合商社は、企業ごとのカラーや文化がかなりはっきりあると感じました。それで、起業したいと考えているような、ちょっと毛色の違う僕みたいな人間は採ってもらえないのでは、と思ったんです。

 実際、インターンも、ESに起業の夢を包み隠さず書いて出していたら、全然ダメで(笑)。もちろん、通らなかったのはほかの理由もあると思いますが、こうした結果も受けて「自分は総合商社ではないな」と思い、外資系のコンサルやベンチャーを中心にしようと決めました。

 ――外資系コンサルやベンチャーのほうが、雰囲気的にも合っていると感じたのでしょうか?

 そうですね、やはり考え方がフレキシブルな外資系やビジネスモデル自体が新しいベンチャーなどのほうが、僕のような考え方の人間も受け入れてくれやすいのかと。それで、そういう企業をメインに動くことにしました。内定をいただいた外資系コンサルでは、起業のことも話しましたが「どこへでも羽ばたいていってください」くらいの感じで、まったく問題なしでした。

自分の「得意」を伸ばす

 ――岸さんのお話を聞いていると、とても切り替えが早くて、いい意味ですごくドライに割り切って就活をしていると思うのですが、そのひけつは、ご自分ではどこにあると思いますか?

 さきほどもお話ししたようにフェンシングをやっていたんですが、もしかしたら、そのときの経験が関係しているかもしれません。

就活のひけつはフェンシングをやっていたときの経験が関係※ご本人提供
就活のひけつはフェンシングをやっていたときの経験が関係※ご本人提供

 ――フェンシングの経験?! どのような経験ですか?

 人には誰しも、向き不向きがありますよね。それを見極めて、向いていないものには執着せず、向いていることや自分にできることをやったほうが良い結果になるということを、フェンシングで学びました。自分の得意を見極めて、その種目を追求することで結果を出せたので。そのとき、苦手なものには執着せず、得意なものを見つけること、自分が最もパフォーマンスを発揮できる場がどこなのかを見極めることが大事だと思ったんです。

何紙もの新聞を読み比べ

 ――そのときの経験が、就活にも生きてきたわけですね。ブレないところがすごいですよね。そのほかに、就活のときに意識していたことはありますか?

 あとは、新聞をかなりの数、読み比べていました。『池上彰の新聞勉強術』という本に、何紙か読み比べることが大事と書いてあったので「じゃあ、実践してみよう」と。でも、何紙も取るのは大変だったので、毎朝、大学の図書館に行って一般紙から経済紙まで色々と読みました。ひとつの新聞で気になるトピックを四つ、五つ見つけて、それを他紙でどう扱っているかのチェックをするんです。紙で読むのが好きだったので、机にバッと広げて、立って読んでいました。

毎朝、大学の図書館で一般紙から経済紙までをチェック
毎朝、大学の図書館で一般紙から経済紙までをチェック

 ――面白いですね! 立って読むのは、何か理由があったのですか?

 新聞紙って大きいので、立ったほうが全体を見やすいんです。紙の新聞は見出しの大小が一瞬でわかるところも好きですが、大きな扱いの記事が、必ずしも自分にとって必要な記事とは限りません。立って俯瞰(ふかん)して見ることで、自分に必要な記事も見つけやすいんです。

 ――何紙も読み比べてみて、感じたことはありますか?

 よく「就活=経済紙」と思われがちですが、経済紙だけだと難しいし、逆に足りないと思うこともありました。例えば「ブロックチェーン」の記事ひとつ取ってみても、経済紙ではブロックチェーンがどういうものなのかは、わかっているのが大前提。用語の説明などは基本的にありません。でも、一般紙だと用語説明も入っているし、幅広い読者を対象としているぶん、わかりやすく書かれていますよね。

 IT企業の面接で「テクノロジー系の話題で気になるニュースは?」と聞かれて、ブロックチェーンの記事を挙げましたが、ブロックチェーンとは何かをきちんと理解していないと、浅い話しかできないので、一般紙できちんと理解しておいてよかったと思いました。

「ブロックチェーン」の用語説明と記事
「ブロックチェーン」の用語説明と記事

 ――色々と読み比べていたからこその、気づきもあったということですよね。

 就活の面接対策という意味では、一般紙のほうが必要だと思いますね。僕は毎日、大学の図書館まで新聞を読み比べに行って、とても勉強になったのでよかったのですが、デジタルでも、一紙でいいから読めるとラクですね。就活を終えてから朝日新聞デジタルを読み始めましたが、いつでもどこでも読めて検索もできるって、やはり便利です。しかも、紙面の形でも読めるんですね。これなら、座ったままでも俯瞰できるじゃないですか(笑)! どの業界の面接でもよく聞かれる「気になるニュース」対策も、面接直前までできますし。もっと早くデジタル版の新聞にすべきだったかもしれません……。

 ――「気になるニュース」は、面接でよく質問されますよね。でも、この質問を苦手に感じている学生も多いようです。難しい話題を挙げてしまい、墓穴を掘ったという失敗談も聞きます。挙げる以上はよく勉強しておかないといけませんね。とはいえ、ネットニュースに出ているようなメジャーすぎる話題を挙げるのも考えものです。

 SNSなどでパッと見たくらいの付け焼き刃の知識だと、それを面接で言ったところで、面接担当者には響かないと思います。記事自体も、結局みんなが読んでいるものだから、差別化もできませんし。あと、最近僕がIT系の会社でアルバイトをしていることもあって、気づいたことなんですが、ネットニュースに出すのはページビューを稼げるという視点で選ばれたものなので、実は就活に必要なニュースとは違うんですよね。芸能関係のネタなどが多いですし。

 ――おっしゃるとおり(笑)。芸能関係の話題に詳しくても就活では活用できませんからね。では、後輩たちにメッセージをお願いできますか?

 就活には2パターンあると思っているんです。ひとつが、過去からの延長で考えるもの。もうひとつが、未来からの逆算で考えるものです。もちろん、自分の向き不向きを考えたり、自己分析したりすることは過去からの延長であり、それも必要ですが、それだけだと、おそらくそんなに大した人生は歩めないと思うんです。それで僕の場合は、起業という目標から逆算することにしました。目標は、例えば「年収1000万円」でも、何でもいいと思うんです。とにかく、何かしら定めることが大事。なので、就活では過去からだけでなく、未来からの視点も同じくらい大切にしてほしいですね。その視点があるだけで、きっと今よりもっと高いところまで、羽ばたけると思います。(構成 ライター・小元佳津江)

篠原真喜子(朝日新聞社 就活キャリアアドバイザー)
プロフィル 篠原真喜子(朝日新聞社 就活キャリアアドバイザー)

2003年入社。自身の就活経験を生かして、2004年に「朝日就職フェア」を立ち上げる。以降、同フェアの企画・MCとして活躍。雑誌「CanCam」「エアステージ」の就活特集にも「就活のプロ」として登場。キャリア支援した学生はのべ5万人。国家資格キャリアコンサルタント。

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