伝える仕事とは何か、考え続けることで見えた就活の軸

<第6回> インタビュー 篠原真喜子

 高校時代から、広告や出版などマスコミ業界に興味があった森田さん。大学時代は、部活と就活の両立に悩んだそうです。ESもなかなかうまく書けずに苦労したという森田さんが、採用担当者の目に留まるESを書き上げ、マスコミ内定を手にするまでにしたこととは? 様々な失敗談も含め、就活についてホンネで語っていただきました。

森田葉純さん
プロフィル 森田葉純さん

文学部 文学科。受験業種はマスコミ(新聞、出版)、広告、建築、化粧品メーカー等。ES提出数20社、面接まで進んだ会社数7社、内定先はADKほか、広告、空間デザインなど計3社。

道のり内定までの道のり

大学3年夏~冬
部活が忙しくてなかなか就活準備ができず、インターン通過は3社のみ
大学3年2月
化粧品メーカーの早期選考ルートで面接に進むも、全く話せず撃沈
大学3年3月
就活解禁日は部活の合宿中。合同説明会に行けず、ESも書けず、焦る
大学4年4月
マスコミのGDや面接が開始するも、緊張してうまく進まず。出版社のES締め切りラッシュで徹夜も
大学4年5月
毎日の面接のお祈りメール続きで追い込まれる
大学4年6月
ついに、第1志望のADKから内定が!

すき間時間を上手に使うこと

 ――森田さんは、わりと早い段階から志望業界が決まっていましたよね?

 はい。高校生の頃から文章やデザインに興味があって、出版や広告業界に行きたいと思っていました。でも、所属していた応援部の部活がけっこうハードで、そちらも手を抜きたくなかったので、就活との両立が大変で。周囲が就活に向けて動き出す3年の夏頃は「やらなくちゃ」と思いつつも、なかなか準備できませんでした。

 ――部活生は両立に苦労している人が多いと思います。どのようにして克服したのですか?

 「部活生あるある」だと思いますが、私も、練習やミーティング、コンクール、合宿もあって、就活に割ける時間がほかの学生より圧倒的に少ないのが悩みでした。長期のインターンシップにも行けませんし。でも、部活も就活も頑張りたかったので、すき間時間を活用するようにしました。会社説明会は自分で企業研究をして補ったり、部活の移動中や待ち時間はブツブツ言いながら自己PRを考えたり……。部活に追われながらも、常に就活に意識を向けるようにしていましたね。

所属していた応援部※ご本人提供
所属していた応援部※ご本人提供

 ――限られた時間を有効活用できるよう、工夫したのですね。セルフマネージメントができているから、それ自体がアピールネタになりそうです。ところで、出版や広告業界はESの分量が多く、また自由記述欄やクリエイティブ問題もあって大変だと思いますが、いかがでしたか?

 忙しい部活の合間を縫って、インターンのESをたくさん出したのですが、通過は3社のみ。「どうしたらいいんだろう」と、焦りました。そこで、広告業界に内定した先輩に、ESを見せてもらうと、自分のESと全然違っていたのです。先輩のESは、自分の体験と志望動機がきちんと結びついていて、すごく説得力がありました。でも、私のESには自分の体験が丸々抜けていて。企業のことは調べたけれど「御社のここに興味があるので、インターンに参加したいです」と、ただの作文のようになっていました(笑)。「ESには自分がこういう体験をして、こう感じたから、何々をやられているこの会社で働きたい」というように、ストーリーがないとダメだと気づいたんです。

 ――企業側はそこを一番知りたいわけですからね。ほかにESを書くうえで工夫したことはありますか?

 3年生の12月に朝日就職フェアに参加したんですが、内定者の方が「新聞記事から企業研究をし、そこでわかったことをESに組み込んだ」とお話しされていました。「そうか、新聞はこんなふうに使えるんだ!」と、驚きました。元々、自宅で朝日新聞をとっていましたが、新聞と就活を結びつけて考えたことなどありませんでした(笑)。それからは、気になる記事のスクラップを開始。そのなかで印象に残った「新人マンガ家『発掘』の時代」という記事のことを、出版社のESに書くようにしました。

「新人マンガ家『発掘』の時代」が掲載された記事※ご本人提供
「新人マンガ家『発掘』の時代」が掲載された記事※ご本人提供

 ――反応はいかがでしたか?

 この記事は、マンガ家デビューの形が変わりつつあるという内容です。従来、マンガ家側から出版社へ持ち込むことが多かったのですが、同人誌即売会などで出版社側が発掘します。ネット媒体が広がったことで、こうした変化が起きているのです。出版社のESの頻出質問である「今後の出版社のあり方とは」という問いに、私はこの記事を挙げながら「今後は紙にとらわれず、デジタル媒体に注力すべきでは」と書きました。そうしたら、その後さらに通過率が上がったのです。新聞記事を挙げたことで説得力が増し、勉強している感もアピールできたと思います。

 ――「ESは企業へのラブレター」といいますからね。そういうESを見ると「こんなに色々調べてくれたんだ、勉強しているんだ」と感動します。

 某世界的自動車メーカーの説明会で、最後に出すアンケートにも、新聞で読んだことを書いたことがあるんです。そうしたら後日、人事の方から連絡があり「アンケートがよかったから」と早期選考ルートに乗せてもらえました。

 ――すばらしいですね! 説明会のアンケートは、本当に侮れません。すると、わりと選考は順調に進むようになったのでしょうか?

 いえ、ESはだいぶ通過するようになったんですが、その後が……。2月に、就活イベントから早期選考ルートに乗った化粧品メーカーの面接がありましたが、あまりにも話すことができずに撃沈。しっかり準備しておかないと普通に落ちる、と痛感しました。3月に本選考が始まるときも「とうとう始まってしまった」と、不安しかなかった記憶があります。

筆記試験で大失敗……

 ――では、そこからさらに険しい道のりでしたか?

 はい。その後も筆記、特に出版社の筆記試験で大失敗。先輩から出版社の試験が難しいことを何度も聞いていて、時事問題は参考書で勉強していたのですが、それ以外のこともかなり出されます。エンタメや芸能、ファッション、スポーツ、社会問題まで本当に幅広く、かつかなり細かい問題です。たとえば、お笑いコンビの顔写真が4枚あって、どちらがボケでどちちがツッコミかなど。時期的にも、私が筆記対策を始めたのは2月からでしたが、全然間に合いませんでした。結果、筆記試験でかなり落ちてしまいました。

 ――筆記で落ちるのは悔しいですよね。

 あのような問題が出されるなら参考書だけでは無理ですし、対策としてはやはり新聞がいいと思いました。そして、もっと幅広く読んでおけばよかったと後悔しました。マスコミ志望者はどんなに忙しくても絶対に、せめて1面は読んでおくべきです。4年生になった頃にはだいぶ持ち駒が減ってしまったので、まだエントリーできる会社を探しながら、企業の面接を続けました。でも、毎日お祈りメールの嵐(涙)。つらかったです。

 ――その時期だと、もう就活を終える学生もいますよね。

 はい。でも、5月中旬にやっと一社から内定をいただけて、だいぶ精神的に楽になりました。以降は広告、出版の面接対策に集中できるようになったのです。

画像4

アンテナを張り情報収集!

 ――面接対策では、どのようなことをしましたか?

 出版社では、おすすめの本や雑誌を聞かれることが多いので、できるだけ色々と目を通したり、マンガ編集に興味があったので、朝日新聞デジタルで「マンガ」「出版」「本屋」などのキーワードで過去記事検索して、関連記事を読んでいました。広告会社では、最近気になる広告を聞かれることが多いので、電車内、街、新聞、動画サイトなど、あらゆる媒体の広告を幅広く見て、気になるものをストックしました。とにかく、時間の許す限り様々なメディアを見て、アンテナを張るようにしていました。

 ――広告では、どのようなものが気になりましたか?

 新聞では、新潮文庫の全面が黄色い広告や、コミック『東京喰種』最終巻のコラージュ風の広告、動画サイトではネットフリックスの「目を見れば、わかる。Netflixアニ“目”特別映像 篇」というCMが好きでした。これは、人気のアニメキャラの目だけを集めたものなんですが、アニメがすごく好きだったので、とても印象的で。広告はスキップされることが多いのですが、力のある広告は思わず見てしまいますよね。自分もそんな広告をつくりたいと思い、面接でも例を挙げながら話していました。でも、うまく話すことができないタイプなので、面接前は必ず好きな広告とその理由や、志望理由などを簡単なメモにまとめて、頭を整理していました。面接は場数を踏むしかありません。そのためにも、早いうちから面接のある業界も受けておくとよいと思います。

「新潮文庫の100冊」が掲載された全面広告※ご本人提供
「新潮文庫の100冊」が掲載された全面広告※ご本人提供
『東京喰種』が掲載された全面広告※ご本人提供
『東京喰種』が掲載された全面広告※ご本人提供

 ――そんな努力が実り、ついに第1志望企業から内定ですね!

 はい。ADKは、広告会社の中でも私が好きなアニメコンテンツがとても強い会社です。広告会社も会社ごとにカラーがあり、OB・OG訪問で「ここは合わないかもしれない」と感じた会社もありましたが、ADKは当初から「何となく感覚が合う」と感じ、一番行きたい会社だったので、すごくうれしくて。面接ではつい見栄を張ってしまうこともありますが、それがまったくなく、ありのままの自分を出し、そのうえで先方からも「一緒に働きたい」と言っていただけたので、最高の気持ちで就活を終えることができました。

 ――「ありのまま」といっても、就活当初のありのままの森田さんではなく、努力によって自分を「高めて高めて高めたあとの、ありのまま」の森田さんだから、受かったと思いますよ。

 ありがとうございます。就活は人と比較されたり、企業との相性や運もあったりで、自分の力だけではうまく乗り切れずに、つらい思いをすることもあると思いますが、あきらめずに努力し続ければ道は開けます。自分に最も合った企業と巡り合えるよう、自分らしく頑張ってほしいと思います。(構成 ライター・小元佳津江)

篠原真喜子(朝日新聞社 就活キャリアアドバイザー)
プロフィル 篠原真喜子(朝日新聞社 就活キャリアアドバイザー)

2003年入社。自身の就活経験を生かして、2004年に「朝日就職フェア」を立ち上げる。以降、同フェアの企画・MCとして活躍。雑誌「CanCam」「エアステージ」の就活特集にも「就活のプロ」として登場。キャリア支援した学生はのべ5万人。国家資格キャリアコンサルタント。

この記事をシェア