英語のグローバル・スタンダードは文法にあり

<第2回> 文 武田菜穂子
sqback(Getty Images)
sqback(Getty Images)

 前回は、日本を取り巻く環境の激変によって、異文化コミュニケーション能力の高い人材がいっそう求められるというお話をしました。また、就活生にとってこの能力を示す物差しとしてTOEICスコアが重要になることを強調しました。英語力を上げるためのポイントは、英語に触れる機会を増やすことなのですが、今回からは具体的に英文素材を使いながら、TOEICテストの実践的な対策についてお話ししていきます。

 TOEICテストはリスニング・セクション100問とリーディング・セクション100問からなっています。今回はそのリーディング・セクションの短文空所補充形式20問(PART5)について解説してみます。

英文法の頻出分野

 実は、PART5で問われている知識は、大学受験の英語問題と同じです。違っているのは、問題文の英文の表現がビジネス関連であることです。

 大学受験の英文法でよく出題されている分野はおわかりでしょうか? 長く受験英語の指導に関わってきた筆者の経験からすると、だいたい次の5分野になります。

1.時制
2.準動詞(不定詞・分詞・動名詞)
3.関係詞
4.品詞の識別
5.前置詞

 文法用語は忘れてしまったという方もいるかもしれませんが、心配いりません。ちなみに品詞の識別問題で多く出されるのは、形容詞と副詞の違いです。形容詞は名詞の前に、副詞は動詞の前に置かれる修飾語ですね。副詞は語尾が「-ly」で終わるので簡単に見分けられます。

品詞の識別問題にトライ

 「The Asahi Shimbun Asia & Japan Watch(AJW)」の5月4日に配信された記事に、京都東山の長楽寺秘蔵の准胝観音(じゅんていかんのん)が天皇の即位に合わせて公開された(Kyoto temple shows off hidden statue to mark new emperor)というものがありました。この記事から一部を引用し、TOEICテストのPART5の形式にしてみます。空所に入れるのに最も適当なものを(A)~(D)から選んでください。

The(   )exhibition marks the ascension of Crown Prince Naruhito as new emperor after Akihito abdicated in favor of his son at the end of April.(今回の公開は、4月末に息子を後継者として明仁天皇が退位後、徳仁皇太子が新しい天皇に即位するのを記念するものだ)
(A)current (B)currency (C)currently (D)currents

 もちろん正解は(A)です。Exhibition(公開、展示)は名詞(語尾が「-tion」であれば名詞)なので、形容詞のcurrentになるわけです。ちなみに(B)currencyは「通貨」で、(D)currentsは「流れ」を意味します。

 リーディング・セクション100問中の半分近くが、こうした文法の知識を問う設問になっています。TOEICでスコア・アップを目指すのであれば、まずは文法の基本事項をおさらいする必要があるのです。

文法問題が多い理由とは

 なぜTOEICテストでこんなに文法が重視されているのでしょうか? 文法を重視しすぎていると悪名高い日本の大学受験問題とさほど変わらない問題が、実用英語のTOEICに出されるのは不思議ですよね。

 それは英語が「世界語」になっていることと大いに関係があると思います。英語の発音や語彙(ごい)はけっこうローカル色が強く、筆者自身、大学時代からこれまで、同じ英語圏出身とは思えないほど多様な英語の発音や語彙に出あってきました。言語学的には「標準英語」(Standard English)ですら一種の方言(dialect)扱いなのです。

 世界の人々が「英語」で情報を発信している現代では、それぞれの国や地域で、私たちが想像する以上に多様な英語が生まれてきているはずです。けれども、多様化する一方の英語において、やはり意思疎通に最低限必要な共通のルールのようなものがなくてはならない。それが文法なのではないか? と考えることができるでしょう。

 文法という共通ルールがあるからこそ、時代も場所も異なる者同士のコミュニケーションが何とか成立しているのです。TOEICテストはこの共通ルールの理解度を試していると言えますね。次回も引き続き、文法についてお話ししたいと思います。

武田菜穂子(グローバル・エデュケーション・ネットワーク 代表取締役)
プロフィル 武田菜穂子(グローバル・エデュケーション・ネットワーク 代表取締役)

上智大学外国語学部卒業・同大学院修士課程修了(国際関係)。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得満期退学(政治学)。公立高校英語教員、証券会社調査部勤務を経て予備校講師に。女性予備校講師の草分けとしてのキャリアは30年以上になり、テレビ、ラジオ、新聞などで取り上げられる。2005年にグローバル・エデュケーション・ネットワーク設立。大学受験塾(AOアカデミー、GENアカデミア、日芸受験.COM)経営と、大学・高校での講演活動及び大学入試問題コンサルティング事業を手がける。博士論文も執筆中。

この記事をシェア