リスニング力をつけるための音読のコツ

<第7回> 文 武田菜穂子
bee32(Getty Images)
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 前回からリスニングをテーマにお話ししています。リスニング力をつけるには、まず、単語の正しい発音を確認し、その発音と意味を結びつけることが大切であること、とくに難しい単語よりも中学校レベルの単語が鍵になることを強調しました。また、あらかじめ内容がわかっている文章を英語で何度も聞き、聞き取れる範囲を徐々に増やしていく方法も紹介しました。今回は、リスニング力をつけるための音読のコツについてです。

「意味の塊」がわかる

 みなさんは、中学校や高校の英語の授業で教科書を音読したと思います。音読の方法はいろいろありますが、ネイティブ・スピーカーの講師や録音されたCDの音声に合わせて発話する「オーバーラッピング」が、最もポピュラーでしょう。

 筆者自身、英語の講師として音読を積極的に活用し、生徒たちには繰り返し音読の効用を説いてきました。長年の経験から言うと、音読が上手な生徒は、長いセンテンスでも「的確な箇所」で息継ぎをします。この「的確な箇所」というのは「意味の塊(かたまり)」のことです。

 「意味の塊」とは、単語同士を組み合わせてまとまった意味を持っているもののことです。英文を一読して「意味の塊」がわかるためには、単語や熟語の知識だけではなく、文法の知識が必要になります。

リスニングにも文法力が重要

 さて、「The Asahi Shimbun Asia & Japan Watch(AJW)」(8月29日配信)に、東京五輪での熱中症対策の記事(OLYMPICS/ Fans, athletes warned to be prepared to avoid heatstroke)がありました。

 この記事の冒頭部分にある文を引用します。みなさんはこの文をどこで区切って音読しますか? 区切るところに「/(スラッシュ)」を入れてみます。

One year before the 2020 Tokyo Olympics, / joggers around the Imperial Palace / in the central part of the capital / were raising concerns about the danger / posed to spectators and athletes / from the sweltering summer heat.(2020年の東京オリンピックまで1年となり、首都中心部の皇居周辺では、うだるような夏の暑さが観客や選手たちに及ぼす危険性について、ジョガーたちは心配していた)

 「,(カンマ)」直後に「/」を入れるのはすぐにわかると思いますが、他の箇所はいかがでしょうか? 「/」を入れる位置は、単なる息継ぎではなく「意味の塊」となっている部分です。例えばin the central part of the capital(首都中心部の)は「前置詞+名詞」です。文法を勉強していれば、どこが区切りなのか容易にわかります。文法の重要性については<第2回>のコラムでもお伝えしましたが、このようなところにも文法力が生きてくるのです。

 英文の音読は、どこで区切るか意識せざるをえません。「意味の塊」がわかるようになれば、この感覚がリスニングにも生かせます。前回もお話ししましたが、TOEICの設問は発音が似ている単語を意図的に混ぜていますから、聞き取れる単語だけに頼って解こうとするのは危険ですし、スコアがなかなか上がらない原因にもなります。

 もちろん音読が上達すれば、リスニング力もスピーキング力も上がります。音読は、覚えた英語の表現をからだにしみこませてくれるような効果があるからです。スピーキング力を上げる方法としては、聞き取ってすぐに復唱する「シャドーイング」が知られていますが、少々ハードルが高いかもしれません。

 注意しなければならないのは、TOEICテストは学校のテストとは異なり「初めて聞く」「初めて読む」内容であることです。常に新鮮な情報に触れられる英字新聞は、この意味でもとても頼りになります。

 次回も引き続きリスニングについてお話しします。

武田菜穂子(グローバル・エデュケーション・ネットワーク 代表取締役)
プロフィル 武田菜穂子(グローバル・エデュケーション・ネットワーク 代表取締役)

上智大学外国語学部卒業・同大学院修士課程修了(国際関係)。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得満期退学(政治学)。公立高校英語教員、証券会社調査部勤務を経て予備校講師に。女性予備校講師の草分けとしてのキャリアは30年以上になり、テレビ、ラジオ、新聞などで取り上げられる。2005年にグローバル・エデュケーション・ネットワーク設立。大学受験塾(AOアカデミー、GENアカデミア、日芸受験.COM)経営と、大学・高校での講演活動及び大学入試問題コンサルティング事業を手がける。博士論文も執筆中。

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