インフラ企業の志望動機に体験を盛り込む

<第35回> 文 木之本敬介

 関東を直撃した台風15号の影響による、千葉県中心の大規模停電。台風通過の翌日には、鉄道などの交通網がマヒして首都圏は大混乱に陥りました。災害でライフラインが寸断されると、暮らしが脅かされ命にもかかわります。今回のように復旧が遅れると、電気、水道、ガス、通信、交通などを担うインフラ企業の対応に非難が集まります。一方で、ふだんは気づかない「あって当たり前」のインフラのありがたさを感じる機会でもあります。社会貢献度が高いインフラ関連企業は就活生に人気です。こうした機会に「なぜこのインフラ企業か」を考えてみてください。困った体験や改善策を交えて志望動機を語れたら、きっと響きますよ。

鉄塔2基倒れる

 台風15号は千葉県に上陸し、猛烈な強風で各地に被害をもたらしました。君津市で送電用の鉄塔2基が倒れたほか、あちこちで送電線の切断や電柱の倒壊も。停電は最大時で90万戸を超え、東京電力管内で起きた台風によるものでは、規模、期間とも過去最大級となりました。暴風から4日目の9月12日午後10時すぎの時点でも約26万5100戸で停電が続きました。停電にともなう断水も約3万戸でした。厳しい暑さの中で、エアコンが使えない不便な生活を強いられ、熱中症による死者も出ました。当初、11日中の復旧を目指すと発表したのに、東電の対応に批判が集まっています。

交通大混乱

 鉄道各社は今回、事前に運転見合わせを決める「計画運休」を実施しました。JR東日本(東日本旅客鉄道)は「9日午前8時ごろまで運転を見合わせる」と説明していましたが、復旧や再開に手間取り、8時に運転を始められた路線はわずか。8時を目指して駅に向かった人で各地の駅はあふれ返り、身動きできない状況になりました。成田空港は、鉄道、高速道路が不通となり「陸の孤島」に。1万数千人がターミナルビルで一夜を明かす事態となりました。

インフラって?

 インフラはインフラストラクチャー(infrastructure)の略で、広辞苑には「産業や社会生活の基盤となる施設。道路・鉄道・港湾・ダムなど産業基盤の社会資本、および学校・病院・公園・社会福祉施設等の生活関連の社会資本など」とあります。

 インフラ関連の企業というと、電力、ガス、上下水道関連の会社、電機では重電メーカー、道路や橋、港湾を造るゼネコンなど建設会社、通信、鉄道・バス・航空・海運、物流……といったところが代表的です。インフラをわかりやすく言えば「ないと基本的な暮らしに困るもの」。ライフラインも同じような意味で使われます。一方で、インフラ以外の業界・仕事は「あれば暮らしがより便利になったり、豊かになったり、楽しくなったりするが、なくても生きていけるもの」といったところでしょうか。

体験を志望動機にいかす

 「日本の大動脈」を担うと自負するJR東海(東海旅客鉄道)の採用担当者は、鉄道というインフラ事業について「人事のホンネ」で「できてほめられることは決してないが、できなかったときに周りにかなりの影響を与えてしまう事業」と表現しました。社会での存在意義と責任の大きさを感じます。

 つい先日「人事のホンネ」でインタビューしたJR西日本(西日本旅客鉄道)の採用担当者は、求める人材について「インフラ企業なので、地域交通も含めて担っていく、社会性の高い仕事をする使命感」と強調しました。高い志が必要ということですね。学生の志望動機にも「日々利用する中で社会を支える重要性を感じる」といったものが多いそうです。ただ、そんな中で印象に残るのは、企業を持ち上げるより改善点を指摘する学生だとも言っていました。

 通学途中に交通機関の混乱に巻き込まれた人や、千葉県内で不便な暮らしを強いられている人がいたら、今回のことを単なる「被害体験」に終わらせず、志望動機などで「もっとこうしたらいい」と語れる材料にできないか、考えてみましょう。志望動機は体験にひもづけることで、説得力がぐっと増すものです。被害復旧ボランティアに行ける人がいたら、それも貴重な体験になりますよ。

木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)
プロフィル 木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)

1986年入社。政治部記者、採用担当部長などを経て就職情報サイト「あさがくナビ」編集長。「朝日学生キャリア塾」を立ち上げて就活生の指導も。サイト「就活ニュースペーパーby朝日新聞」では就活に役立つ情報を日々発信中。大学などでの講義・講演多数。著書に「最強の業界・企業研究ナビ2017」(朝日新聞出版)がある。

この記事をシェア