独裁下で発展する「中国モデル」って? 「隣の大国」を知る

<第37回> 文 木之本敬介

 中国が建国70年を迎え、10月1日、北京の天安門広場で記念式典が開かれました。米国に次ぐ世界2位の経済大国で、14億人近い人口は世界一。大規模な軍事パレードでは、新型兵器を披露して軍事大国であることを誇示しました。中国は経済では市場開放政策で発展を続ける一方、政治面では共産党による一党独裁体制のままです。かつては「経済成長にともなっていずれは政治体制の民主化も進むだろう」とみられていましたが、独裁体制のまま経済成長する「中国モデル」で米国をしのぐ世界一の大国になるのでは、との見方が強まっています。「隣の大国」について、もっと知りましょう。

軍事大国

 記念式典で習近平(シーチンピン、日本語読み・シュウキンペイ)国家主席は「いかなる勢力も中国人民と中華民族の前進の歩みを阻止できない」と演説しました。軍事パレードでは、極超音速弾道ミサイル、極超音速巡航ミサイル、新型大陸間弾道ミサイル、最新鋭ステルス戦闘機、ステルス無人機など、最新兵器が次々に披露されました。小野田治・元航空自衛隊航空教育集団司令官は「極超音速とステルス性能、無人機の技術を急速に発展させ、すでに米国を追い抜きつつある」「いずれの新型ミサイルも米国や日本の防衛システムでは迎撃することは難しい。米軍の空母や基地を攻撃する能力が急速に高まっている」と分析しました。

 習主席は、建国100年を迎える30年後に米国をしのぐ実力を備えた「社会主義現代化強国」を築くと宣言しています。中国は軍事パレードで、目標に向けて着々と歩を進めていることを世界に誇示したわけです。

経済大国

 第2次世界大戦後の世界は、米国を中心とする自由主義陣営とソビエト連邦を中心とする社会主義陣営が対立する冷戦時代の後、1990年前後にソ連や東ヨーロッパの社会主義国が次々に崩壊。自由主義と民主主義を基盤とした「欧米モデル」の勝利ともいわれてきました。

 一方、1978年に経済で「改革開放路線」にかじを切った中国は1990年代以降、急激な発展を続け、2010年には国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界2位の経済大国に成長しました。今では、中国のGDPは日本の2倍を超えています。

民主化に逆行

 「経済成長で国が豊かになる→国民の政治意識が高まる→独裁体制への反発、批判が強まる→独裁体制が倒れて民主化される」

 これまで世界各地で起こってきた流れです。中国でも同じことが起こるのではないかと、かつては考えられていましたが、そうはなりませんでした。

 1989年の天安門事件後、中国での民主化の動きはストップ。習体制になってからは、民主化運動への押さえ込みが厳しくなり、人権派弁護士の拘束など人権侵害が絶えず、西部の新疆ウイグル自治区チベット自治区では少数民族への弾圧が続いています。もちろん、報道の自由もありません。

ビッグデータ大国

 マーケティング人工知能(AI)開発などにビッグデータが極めて重要な時代になり、「中国モデル」が優位な状況も生まれています。中国は、14億人近い世界一の人口を抱える一方、一党独裁で共産党や政府が実現したい政策を上から強力に推し進めることができます。個人の人権などには配慮しませんから、あらゆる個人データを世界で最も多く集め、自由に処理・分析することができるからです。米国のトランプ大統領が中国に「米中貿易戦争」を仕掛けた背景には、人権を無視した施策や国有企業優遇など、「中国モデル」による不公正への反発もあります。

台湾に注目

 中国国民の多くは、この「自由なき発展」を受け入れているようにみえます。生活が豊かになれば多少の不自由は仕方ないということでしょうか。でも、すでに政治的な自由を享受し、人権尊重の社会に生きてきた人たちには、絶対に受け入れられません。いま香港で続いている大規模デモは、中国政府による香港の「中国化」への戦いなのです。

 今後注目してほしいのは、台湾です。台湾統一は中国建国以来の共産党政権の悲願。中国政府は台湾にも一国二制度による平和統一を呼びかけており、とりわけ習主席は台湾統一を自らの政治使命ととらえているともいわれています。しかし、今の香港の状況を見た台湾の人々が応じるわけがありません。台湾にも反中派と親中派がいますが、香港デモは来年1月の台湾総統選にも大きな影響を与えそうです。

木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)
プロフィル 木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)

1986年入社。政治部記者、採用担当部長などを経て就職情報サイト「あさがくナビ」編集長。「朝日学生キャリア塾」を立ち上げて就活生の指導も。サイト「就活ニュースペーパーby朝日新聞」では就活に役立つ情報を日々発信中。大学などでの講義・講演多数。著書に「最強の業界・企業研究ナビ2017」(朝日新聞出版)がある。

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