【デザイン会社・出版社に内定】 内定者インタビュー「すし職人になりかけました(笑)」

インタビュー 篠原真喜子

出版系の仕事に憧れて上京した屋敷さん。でも、広告研究会の活動に全力投球しすぎて、就活スタートは遅れ気味…。就活を始めた当初は、うまくいかず苦戦したといいます。そんな屋敷さんは、どう自分の思い描く未来にアプローチしたのでしょう。その経緯や当時の思いを語っていただきました。

屋敷郁実さん
プロフィル 屋敷郁実さん

情報コミュニケーション学部情報コミュニケーション学科。受験業種は出版、出版取次、キャラクタービジネス、デザイン、広告等。ES提出数17社、面接まで進んだ会社数12社、内定先は出版系デザイン会社ビーワークス、出版社、出版取次、外食の計4社。

内定までの道のり

大学3年夏
出版業界を目指し、出版取次のインターンに参加
大学3年11月
大学のサークル仲間と一緒に運営していた学園祭の「ファッションショー」が終わり、やっと就活へ!急いで自己分析、ES準備、SPI対策など開始
大学3年2月
出版社(編集職)中心にESを出すも通過せず、インターン参加の取次会社も面接落ち。あっけなさすぎて落ち込むこともできず、がくぜん
大学3年3月
「本が好きだけど、編集ではなくPRやデザインに興味があるんだ!」と気づき、会社選びや職種を変更。ESが通り始める
大学4年5月
出版系デザイン会社の「ビーワークス」から内定獲得! その後、出版社、出版取次からも内定をもらい、OB・OG訪問を重ねて検討した結果、ビーワークスへの入社を決意

大学受験より猛勉強! 出版業界の筆記試験に涙

――屋敷さんは、大学受験時から出版業界希望だったんですよね。

 はい。実家は兵庫県の田舎なんですが、そのために上京させてもらったようなものだったので、何としても出版系に就職したくて。でも、所属していた広告研究会で運営していた学園祭のファッションショーの準備が忙しく、3年の11月ごろまで就活はほとんどできませんでした。

ファッションショーではMCを担当。自分の「好き」について考えるきっかけになったそう ※本人提供
ファッションショーではMCを担当。自分の「好き」について考えるきっかけになったそう ※本人提供

―― というと、就活のスタートはいつ頃?

 3年の夏に出版取次会社のインターンに参加しましたが、本格的に始めたのは11月後半です。気づけは周りの友人たちは必死にインターンのESを書いたり、面接を受けたりしていて、しかもベンチャーに早期内定したなんて話も聞くと「さすがにやばい!」と焦りました。自己分析、セミナー参加、OB・OG訪問、SPI対策などを急ピッチで進め、年明けからは『朝日キーワード』や『マスコミ漢字』を勉強。あまりのできなさに更に焦り、授業中やお風呂の中でもずっと勉強していました。でも、やはり遅すぎで。対策が間に合わず、出版社は筆記で落ちてしまったところもありました。

   ●就活に必須の現代用語解説集 「朝日キーワード就職2021」
使い込んだ『朝日キーワード就職2020』と『マスコミ漢字完全攻略本!!』
使い込んだ『朝日キーワード就職2020』と『マスコミ漢字完全攻略本!!』

―― 出版社の筆記試験はかなり出題範囲が広いですからね。

 はい。私は、わかってはいても漢字で書けない、というものが多くて。例えば、「『コンビニ人間』を書いた人は?」という問題。答えは、芥川賞作家の村田沙耶香さんなのですが、いざ書こうと思うと漢字が出てこない(汗)。私、この本が本当に大好きで。自分のお金で買って何度も読んだのに……! 紗耶香の「耶」の字がどうしても思い出せなくて。試験会場で泣きたくなりました。

 

―― 筆記試験で落ちるのは悔しいですよね。ESは、最初からうまく書けましたか?

 本当に悔しかったです。でも、筆記だけじゃなくESも苦労しました。最初の頃は全然ESが書けなくて。これには、OB・OG訪問でしてもらった添削が効きました。人が「面白い!」と思うポイントは、自分では思ってもみないところにあるんだとわかったんです。

 

50人にOB・OG訪問したからこそ気づけたこと

―― 例えばどんなことですか?

 小学生の頃、近所の山に住む、山の主みたいなおじいさんと、ホットケーキミックス一つもってサバイバル生活のようなことをしたんです。夏休みの2週間くらい。木で家を作って、火を起こして。食べ物は、山にある食べられそうなものを見つけて。あとは持って行ったホットケーキミックスを、焼いたり蒸したりして何とかしました。そんなの別に面白くもなんともないと思っていたのですが、人に話すとすごく面白がってくれたので、「へぇ~、こんな話がウケるんだ」と意外でした。

―― いや、かなり面白いですよ(笑)! 人に話して「こんなのが使えるんだ!」って気づく人は多いですね。訪問したOB・OGは何人くらいいますか?

 40~50人くらいにはしました。訪問してよかったなと思うのは、たくさんの人に話を聞いたことで、自分が本当にやりたいことが見えてきたことです。私、本が好きだからと最初は編集職で受けていたんです。でも、OB・OG訪問で大好きな雑誌や本を作っている人たちの思いを聞くうちに、「どうしてこんなに素敵なものが売れなくなって、出版不況なんて言われるんだろう」ってすごく悲しく、悔しくなったんです。だったら私が出版物の魅力を伝えたいな、と思って。自分がやりたいのは本をつくることではなく、デザインやPRで本の魅力を伝えることだと気づいたんです!

OB・OG訪問で大活躍した名刺。名刺を渡すと「本気で就活に取り組んでいる」と感じてもらえたそう
OB・OG訪問で大活躍した名刺。名刺を渡すと「本気で就活に取り組んでいる」と感じてもらえたそう

―― それは、とても重要な気づきですね。

 実は私、モー娘。の追っかけを4歳ごろからしていて、とにかくかわいい女の子が大好きなんです(笑)。出版に興味をもちつつも広告研究会に入っていたし、ファッションショーでかわいい子をより輝かせたり、魅力をアピールしたりするのが楽しくて。私は何かをつくり出すことより、今あるものを素敵な形にしたり、その魅力を伝えたりすることが好きなんだと気づいたんです。そこからはESがすごく書きやすくなりました。

広告研究会の活動でもプライベートでも仲良しの友人(右)と。お気に入りのショット ※本人提供
広告研究会の活動でもプライベートでも仲良しの友人(右)と。お気に入りのショット ※本人提供

―― 大きなターニングポイントですね。ESの通過率も上がったんじゃないですか?

 そうなんです! でも、ESでは色々な失敗もありました。ESラッシュの頃は、速達の締め切り日の朝10時半に向けて徹夜もしょっちゅう。最後のほうはミスも多くなるし、書き上げた達成感でコピーを取らずに送ってしまったことも多くて。「コピーは絶対取っておけ」と先輩に何度も言われていたのに。写真で残していても面接会場でスマホを眺めているわけにいかないし、先輩に添削してもらうこともできないので、本当にコピーは必須です。

新聞でESや面接に変化が!

―― 屋敷さんのES、はじめの頃と終わりの頃ではだいぶ変わっているようですが、他に工夫していたことはありますか?

 3年の年明けくらいから新聞を、紙とデジタルで取り始めたのですが、これもすごく役立ちました。特に「天声人語」はお気に入りで毎日必ずチェックしていました。マスコミ系は作文の課題もよく出ますが、天声人語の書き出しや文章構成を見ていたことで、自然と語彙(ごい)力や文章力が身についたのではないかと思います。

記念すべき、天声人語デビューはこれ!この日から毎日欠かさず夢中で読んでいたそう。 ※本人提供
記念すべき、天声人語デビューはこれ!この日から毎日欠かさず夢中で読んでいたそう。 ※本人提供

―― 天声人語は短くて読みやすいので、まずここから始めるという人も多いです。

 また、私は「結論ファースト」が苦手だったのですが、新聞はとても簡潔な文章で書かれているので、自然と結論ファーストがクセづいてきて、ESの書き方も変わりました。

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「どの項目も、結論ファーストで簡潔な書き方になっています。ティーン誌を評する「田舎のスーパーに月一回届く、都会のキラキラ」というキャッチにもセンスを感じますね」(篠原)
「どの項目も、結論ファーストで簡潔な書き方になっています。ティーン誌を評する「田舎のスーパーに月一回届く、都会のキラキラ」というキャッチにもセンスを感じますね」(篠原)

―― 「結論ファースト」は苦手な学生が多いですね。

 私もかなり苦労しました。日頃は自分の感覚重視で生きているので論理的思考が大の苦手! でも、短い面接時間で自分のことを伝えなきゃいけない面接では結論ファーストの話し方が必須だと気づいて。「結論ファースト」を習慣化するために、常にその形で話す練習をしていました。例えば、ランチに「はなまるうどん」を食べるなら、「私は、はなまるうどんで食べたいです。理由は三つです。一つ目は安いから。二つ目は…」というように(笑)。ふざけているみたいですが大まじめですよ!

―― すごい! 気合を感じます(笑)。面接の進み具合も変わりましたか?

 そうですね。でも、4月の時点ではまだ出版系企業の内定はなくて。私はすしが大好きなので、「研修ですし職人になれる」という理由だけで外食サービスを受けたこともあるんです。そうしたら内定はいただけたんですが、「出版系に就職するために上京させてもらったのに、このままじゃすし職人になってしまう!」という謎の背水の陣が始まって(笑)。

―― 謎のプレッシャーですね(笑)。出版系企業の面接ではどんなことを聞かれましたか?

 「〇年後の出版界は?」という質問をよくされました。このときにやはり紙とデジタルの話になるのですが、私は、朝日新聞を紙とデジタル両方で取っていたので、それが役立ちました。やはり、出版社の方は紙にプライドを持っているし、なにより好きなんです。でも、デジタル化の重要性もわかっているし、そこに対する若者の意見も知りたいと思っているんですね。「自分よりはるかに年上の面接担当者の方々が、私みたいな若造の意見を聞いてくれるのは、やはりそこにも理由があるのだろう」と思ったので、紙とデジタル両方について意見が言えるようにしていました。デジタルは簡単に持ち歩けて検索もできて便利。なにより私たちの生活になじんでいます。一方で紙は、バッと広げるとほしい情報だけでなく周辺の情報も手に入って視野が広がる。その意味では、スマホは逆に世界を狭めているのかもしれない、というようなことを面接で話したこともありました。

―― かなり深い考察です。なかなか同じものを両媒体で見る人はいないので、説得力がありますね。

 はい! 実際に両媒体に触れるのはとてもいい経験になりました。そして新聞というところもとても良かったポイントだったと思います。新聞やニュースで得た情報は、選考で会う社会人の方との一番身近な共通の話題なんです。何か話すにしても、いきなり自己PRはできませんし。それに、たとえ面接で時事の話題が出なくても、「わかっている」という安心感があるとだいぶ違います。ニュースに触れずに面接に臨むのは、丸腰で戦場に行くようなものなのかなと。

―― きっと、自信や安心感が表情や受け答えにも出るのだと思います。屋敷さんもそんな努力のかいあり、ついに出版系デザイン会社からの内定が。よかったですね!

 はい! とてもうれしかったです。でも、人生に一度の就職活動だからと、選考が進んでいる会社は就活を継続しました。

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―― その後、出版社、出版取次からも内定獲得! ここから最終的にビーワークス(出版系デザイン会社)に決めたのは、どういう理由だったんですか?

 元々とても入りたい会社だったのもありますが、大きく2つの理由があります。まずは、出版物の魅力を伝えたいという軸で就活をしていたので、これから出版が媒体的に変化していくことがあっても、この会社ならWEBも紙も扱えるのがいいなと思いました。もう一つは、内定後に多くの社員の方と何度もお話しする機会を頂いたのですが、どの人と話していても波長が合うと思ったんです。社会人になったら、これまで学生生活を共に過ごしてきた友人達よりもずっと長い時間を過ごしますよね。だから、会社の雰囲気とか波長が合うかって大事な気がして。

―― なるほど!そういう理由で決めたのですね!

 実は、内定をいただいた会社すべてに、またOB・OG訪問して、色々質問させてもらったんです。やりたい業務を担当できる確率や月の平均労働時間、転勤、給与など、かなり突っ込んだ質問も。人事の方から現役社員を紹介してもらったり、選考段階でお世話になった方に再度連絡したりして、徹底的にリサーチしました。

―― そこまでやってきちんと納得のいくところを選べたなら、本当に理想的ですね。

 はい。OB・OGの方には本当にお世話になりました。その中の一人から、「就活中は世界で一番自己中になっていい」という言葉をいただいたんです。もちろん、自分が最大限の努力をすることが大前提ですが、そのうえでESを見てもらったり、意見を聞いたりするために先輩はどんどん頼るべき。思う存分やり、悔いのない就職活動にしてほしいと思います。(構成 ライター・小元佳津江)

篠原真喜子(朝日新聞社 就活キャリアアドバイザー)
プロフィル 篠原真喜子(朝日新聞社 就活キャリアアドバイザー)

2003年入社。自身の就活経験を生かして、2004年に「朝日就職フェア」を立ち上げる。以降、同フェアの企画・MCとして活躍。雑誌「CanCam」「エアステージ」の就活特集にも「就活のプロ」として登場。キャリア支援した学生はのべ5万人。国家資格キャリアコンサルタント。

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