働き方改革とは 過去のニュースをもとにその概要を知る

<第61回> 構成 篠原真喜子
taa22(Getty Images)
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就活生も知っておきたい「働き方改革」

 みなさんは、新聞やテレビのニュースを小まめにチェックしていますか? 就活をするにあたって、どの業界・企業を志望するとしても、話題のトピックについては押さえておく必要があります。

 いまチェックしておくべき話題のひとつが、「働き方改革」です。なんとなく聞いたことはあるけど…というだけではダメです。働き方改革についての基本的な知識はもちろん、必要な理由や働き方改革が社員に及ぼす影響など知っておくことで、面接対策だけでなく企業を選ぶときにも役立つでしょう。

 今回は「朝日新聞デジタル」の記事にもふれつつ、働き方改革について解説していきます。

働き方改革とは

Ooyoo(Getty Images)
Ooyoo(Getty Images)

 日本人は、世界的に見ても働き過ぎだといわれています。長時間労働のすえに命を落とす人も後を絶ちません。そこで国は、残業時間の罰則付き上限規制などを設けた制度を始め、労働環境の改善に乗り出しています。 企業側も、働く人の意欲や能力をあげるためにどうしたらいいのか、あの手この手の方策を繰り出しています。

課題について

 新聞やテレビのニュースで「人手不足」という単語を耳にすることが増えたと思います。

 たとえば深夜時間帯に働ける人を見つけられず、コンビニエンスストアやファミリーレストランなどが、次々に24時間営業を見直しています。最近では日光東照宮が神職などの働き手を確保できず拝観時間を1時間短くしたことも話題となりました。

 その理由として指摘されているのが「少子高齢化による労働力人口の減少」です。総務省の調査によれば、2060年の労働力人口は1970年の半分程度になると予測されています。すでに影響は出ており、人手不足を理由に倒産する企業が増えているというデータもあります。

 これらの課題をそのままにしておくと、GDP(国内総生産)の減少ほか、将来にわたって経済・社会的なデメリットを大きく被ることとなります。そのため、働く人の環境を変え、意欲や能力を十分に発揮できる環境を用意していく必要があります。また、その結果として持続可能な労働力を担保していくことが必要なのです。

 

働き方改革関連法案と施策について

 そうした課題を受けて、「働き方改革関連法案」が2018年に成立しました(参考記事:働き方法成立 懸念と課題が山積みだ )。日本の雇用の7割は中小企業によって成り立っているので、大企業だけではなく、中小企業に対しても浸透させていくことに、国は力を入れています。では、具体的にどのような施策を行っているのでしょうか。ポイントは3つあります。

有給休暇取得の義務化

 第1のポイントは、有給休暇取得の義務化です。有給休暇とは、労働基準法で認められた制度で、会社を休んでも出勤したとみなされて賃金が支払われる休暇のことです。

 2019年4月からは、年間10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、5日は確実に取得することが決まりました。これは管理監督者も例外ではありません。これまでは労働者側が申し出ないと有給休暇を取ることができなかったため、「会社に言い出しにくい」という理由から浸透しませんでした。日本は他国と比べて、有給消化率が極めて低いこととして知られるため、企業に義務付けることで制度の浸透をはかるようです。

時間外労働の上限規制

 次のポイントは「時間外労働の上限規制」です。

 時間外労働、いわゆる残業時間について、これまで法律で上限は定められていませんでした。企業における過労死などの社会問題をうけ、原則として、時間外労働の上限が、月45時間・年360時間と定められました。

 皆さんが生まれたころは、「24時間戦えますか」というCMが流行しました。休みなく働く「モーレツ」ぶりが美徳とされた時代もありましたが、いまは社員にきちんと休暇をとってもらい、ちゃんとリフレッシュしてもらおうという会社が増えています。

 大企業においては2019年4月から施行、中小企業でも2020年4月からというスケジュールで進められています。

正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止

 最後のポイントは、「同一労働同一賃金」という考え方です。正社員でもパートタイムや派遣社員などの非正社員でも、仕事が同じなら報酬は同じにすべきだというものです。大企業では2020年から、中小企業でも2021年から進められる施策です。

 国のこうした取り決めを受けて、自治体や各企業でも「働き方改革」の一環となる取り組みが進んでいます。ここからは、労務・技術とさまざまな観点からの取り組み事例や、いまだ残る課題など見ていきましょう。

過去記事から見る働き方改革の事例と課題

立ったままでもパソコン作業ができる昇降式の机を導入しているモバイルファクトリーのオフィス=2019年11月、東京都品川区(C)朝日新聞社
立ったままでもパソコン作業ができる昇降式の机を導入しているモバイルファクトリーのオフィス=2019年11月、東京都品川区(C)朝日新聞社

コンビニ業界の「時短営業」実験

 24時間365日営業が当たり前だったコンビニ業界でも、時短営業に向けた実験的な取り組みが進められています。

 たとえばローソンがそうです。2019年の大みそかから2020年1月3日にかけて、全国102の店舗が最大1日半程度の休業を実施しました。業界最大手のセブンイレブンも、ほぼ同時期に約50の直営店舗で時短営業を試行しています。またファミリーマートでは、加盟店に本部の社員を派遣する「店長ヘルプ制度」を積極活用して、加盟店オーナーの負担軽減に取り組んでいるそうです。

【参考記事】正月休業、コンビニが実験 ローソン加盟店102店 セブン直営50店

教育の現場でも広がる働き方改革

 働き方改革の波は教育業界にも影響しています。たとえば福島県の公立小中学校では「教員の働き方改革」として、部活動の休養日や教職員が一斉に退勤する日を設けるなど、授業参観やPTAなどの行事を削減・簡素化することを目指しているそうです。

【参考記事】福島)県小中学校長会が「働き方改革」宣言 多忙化解消

AI活用による業務効率化

 技術を活用した「働き方改革」も始まっています。

 滋賀県・大津市では、働き方改革の一環として「AI(人工知能)を使った新システム」を導入しています。システムは主に「録音記録から議事録を作成する作業」に使われていて、2019年度には前年度より4割ほど作業量を削減できる見込みとのことです。

 これまで長時間労働が当たり前だった日本の職場にとって、AIなどITテクノロジーの進歩は、働き方改革実現のカギとなるとも期待されています。

【参考記事】1500時間かかる議事録作成、AIで4割減へ 大津市

テレワークの導入で働き方改革

 テレワークの利用も、働き方改革を成功させるカギとなります。テレワークとは「自宅やカフェなど会社以外で働く」場所や時間にとらわれない働き方のことです。最近は新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受けて、従業員にテレワークを推奨している企業も増えています。

 テレワークを導入している企業の中には、NECやシャープといった大企業の名前もあります。地方自治体の中には、テレワーカー(テレワークで働く人)の誘致に取り組むところも出ているため、テレワーク活用の動きはこれからさらに活発になるでしょう。

【参考記事】ひろがるテレワーク ワーカー取り込みで自治体も競争

「立つ」ことで時短を実現

 とある東証一部上場のIT企業では「立ったまま仕事をする」というユニークな取り組みをしています。立ったままパソコンを操作することで、作業効率が向上し社員のリフレッシュにも役立つそうです。また立ったまま会議をすることで、会議がだらだらと長引くことも少なくなるとのこと。社長や管理職が高い意識を持っていることも、この企業が働き方改革に積極的な理由のひとつでしょう。

【参考記事】立って会議→東証1部上場 あるIT企業の働き方改革

一方でまだまだ課題も多く

 働き方改革に取り組む企業が増えている中で、さまざまな課題も明らかになってきました。そのひとつが「退勤後に仕事をする」とか「労働時間を少なく申告する」というものです。

 勤務表の上では法律順守をしていても、現実には長時間労働というのでは意味がありません。また一定時間を勤務時間とみなして賃金を計算する「裁量労働制」が悪用されているケースもあるそうです。
 働き方改革にのっとった適正な労働時間を実現するには、現場責任者(課長クラス)の意識改革から取り組む必要があるといえるでしょう。

【参考記事】残業規制、終わらぬ仕事は「退勤」後 会社は「働き方改革」、でも5割は「実態変わらず」

 また、働き方改革の中には「社員に有給休暇を取得させる」ことを義務付ける法改正もありました。これに対し一部の企業では、就業規則を変えて年間休日を減らしたうえで、目減りした分を有給休暇として取得させているそうです。これでは結果として全体の休日数が変わらないばかりか、社員が自由に有給休暇を使えなくなるため、実質的には働き方改革に逆行することになるでしょう。

 こうした企業の姿勢に厚生労働省は「望ましくない」という見解を公表していますが、法改正の趣旨がきちんと反映されていくかどうかは不透明です。

【参考記事】休日減らされ有休取得「うちでも」 残業規制も背景か

最後に

 今回は、働き方改革についての基礎知識からさまざまな事例について見ていきました。グループディスカッションで取り上げられることもあるので、賛成の場合・反対の場合などそれぞれの立場から、意見とその根拠を言えるようにしておきましょう。そのさいには、具体的な事例についても押さえておかないとディベートが成立しませんので、今のうちからしっかりと調査・準備をしておいてくださいね。

篠原真喜子(朝日新聞社 就活キャリアアドバイザー)
プロフィル 篠原真喜子(朝日新聞社 就活キャリアアドバイザー)

2003年入社。自身の就活経験を生かして、2004年に「朝日就職フェア」を立ち上げる。以降、同フェアの企画・MCとして活躍。雑誌「CanCam」「エアステージ」の就活特集にも「就活のプロ」として登場。キャリア支援した学生はのべ5万人。国家資格キャリアコンサルタント。

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