先輩たちの就活ストーリー⑤ 地方在住、“エアラインオタク”からGSに内定

<第32回> 文 ライター・小元佳津江
chanawin88(Getty Images)
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 本シリーズも5回目となりました。今回は、地方にいながらにしてエアラインを目指した美咲(みさき・仮名)さんのお話を紹介したいと思います。

 美咲さんは静岡県在住で、県内の大学に通っていました。幼い頃からCAに憧れていたようですが、地方ではやはり、都心に比べ圧倒的に情報が少ないのが現実です。スクールなどももちろんあるのですが、CAに求められる洗練された身だしなみ、雰囲気などをつくっていくうえでは、どうしてもハンデがあると言わざるをえません。

東京の学生は「人種が違う」

 私が美咲さんに初めて会ったのは、彼女が大学3年生の10月。東京で開かれた朝日就職フェアのエアラインセミナーに参加してくれたときのことでした。

 実は、9月のフェアにも参加していたそうですが、私に話しかける勇気がなかったのだそう(笑)。それもそのはず。初めて東京に出てきた美咲さんは、参加者たちのハイセンスな雰囲気にすっかりのまれ、けおされてしまっていたのです。

 内定者だけでなく、自分が一緒に試験を受けることになる就活生たちも、ものすごくキラキラしている。「私とは人種が違う。私はどこからどう見ても田舎者丸出し、こんなところにいるのは場違いだ……」。そう彼女は感じたと言います。そのため、9月は話しかけることなく帰ってしまったそうですが、「このままでは前に進めない」と勇気を振り絞り、翌月は私に話しかけてくれたのでした。

 しかし、当時の美咲さんは、彼女自身が痛感していたように、CA志望者とにわかには信じがたいほどの格好をしていました。シワシワのシャツにヨレヨレのスーツ、ほぼすっぴん状態のメイクに、整髪料の塊がべっちょりとついた髪。お団子は下の方までずり落ちてブラブラと揺れ、まるで疲れた仲居さんのよう……。私は頭を抱えました。

 もちろん、地方にも洗練された人はいます。でも、それはその人が相当の情報に触れ、自らセンスを磨いているからにほかなりません。洗練された人々が普通に歩いている東京と比べれば、地方在住者はどうしても不利になります。そこで私はまず、「とにかく東京に出てきなさい」と彼女に言いました。

 「エアラインスクールなら、地元のスクールでいいじゃないの」という親御さんを説得し、美咲さんはその後すぐ、私のスクールに通い始めました。週1回のレッスンに静岡から通い、合宿にも参加しました。

 本当は、彼女自身も東京に来るのが怖かったのだそうです。周りの学生との差に圧倒され、やる気が保てなくなるのではないか、と思っていたようです。

 周囲との差が気になるとき、多くの学生がこういう考えに陥りがちです。でも、それは間違い。「恥ずかしい。場違いだ」。そう感じるところにどんどん混じっていけなければ、変わることなどできません。当然、就活で闘っていくこともできないのです。

 彼女も覚悟を決め、ストラッセ東京で学ぶ生活がスタートしました。

 まず、身だしなみについては、一番目立つヘアから指導。整髪料は適量をきちんと伸ばし、アホ毛は整える。お団子はUピンでしっかりとめる。基本の“き”からの指導です。

 「第一印象をよくするための基本的な考え方」の回でもお話ししましたが、基本的に人は、ひとつ整えると全てが整っていくもの。髪が整えばメイクが気になり、メイクが整えば服装が気になるようになるからです。そうやって全体のブラッシュアップを図りつつ、「シャツはノンアイロンをクリーニングに出して着るぐらいの気持ちで」と具体的指導もしていきました。

「エアラインオタク」では太刀打ちできない

 さて、彼女にはもう一つ課題がありました。それは極度のエアラインオタクだったということです。地方にいると情報が得にくいため、自分が得られる情報だけでなんとかしようとし、間違った方向のマニアになってしまうケースが、しばしば見られます。彼女もその典型的なタイプでした。業界誌『エアステージ』を何年分も読み込んでいて、どんな細かな内容でも知っている。羽田なら「HND」、成田なら「NRT」といったスリーレターコードも山のように覚えている……。

 もちろん、情熱があること、志望する業界や企業に詳しくなること自体はすばらしいことです。でも、航空会社が求めているのはそういうことではないはずです。美咲さんは、面接練習でも質問者の意図を無視し、知識の披露に走ってしまうことがよくありました。「美咲さん、ちょっと1回ストップ!」。暴走する彼女を止めたことも一度や二度ではありません。

 「例えば、あなたが化粧品を買いに行ったとき、その細かな成分をひたすら語られて、買う気になる? あなたの顔立ちにはこの色をこう使うと似合いますよって説明してもらわないと、買う気にならないでしょう。それと同じだよね?」

 面接でアピールすべきは知識ではなく、その仕事をするうえで必要とされるスキルや素養があるかどうかです。当時の美咲さんには知識しかアピールポイントがなかったため、余計にそこに固執してしまったのでしょう。

自分の本当の素質、魅力に目を向ける

 そこで、まずは彼女のアピールポイントを整理すべく、過去の体験やエピソードを洗い出しました。

 美咲さんはずっとサッカーをやっていて、大学2年生の7月から1年間、中国の広州に留学していました。広州でも、現地の仲間を率いてリーダーとして活躍していたのだそう。日本人は彼女1人という環境でリーダーを務めたことにより、中国語のスキルも磨かれ、中国語検定「HSK」では6級。非常に流暢(りゅうちょう)に話すことができました。実は彼女、TOEICは200点台でなかなか上がらず。語学に関しては中国語をウリにし、他の部分で勝負するしかありませんでした。

 まず、多国籍な環境下、外国人のなかに1人で入っても臆することなくリーダーシップが発揮できること。これから先はお客様だけでなく、一緒に働く仲間も多国籍になっていく時代。そのときに、そうした多様な人々と仲良く働いていくことができる。将来的に彼らの教育係などもすることができる。さらには、サッカーで鍛えた健脚で走り回ることもできる、という方向でアピールすることにしました。

 しかし、英語力が致命的なことに加え、美咲さんの素質、魅力を改めて見直してみたときにわかったことは、どう考えても彼女はCAではなくGS向きだということでした。そこで私は、わりと早い段階からGS受験を彼女に勧めることにしたのです。

 元々、CAに憧れていた美咲さんではありましたが、彼女自身もあるときからそれに気づいていたようです。「私はよくよく考えると、余裕をもっておしとやかに振る舞ったりするのは苦手。サッカー部のときのように、走り回っているほうがやっぱり好きだ。CAよりGSのほうが向いているのかもしれない」。

 美咲さん自身も納得したことで、GSとして働くイメージがどんどん具体的に描けるようになっていったようです。また、自分のアピールポイントがわかったことで、変な力が抜け、彼女本来の持ち味が出せるようになっていきました。

 当日は、メイクもよく頑張りました。エアライン受験用写真を撮ったスタジオでしてもらった完璧なメイク。そのメイクを、写真を見ながらまね、面接に臨んだそうです。

 こうした努力が実り、美咲さんは見事GSに内定。他業種を含めて計5社から内定を手にしました。彼女は今、GSとしてバリバリ働いています。気になる企業はみんな受け、失敗も成功もしたことで、自分の立つべきスタートラインがハッキリ見えたようです。

 人は本気で自分と向き合い、努力し続ければ、大きく変わるものです。私はそんな学生を何人も見てきました。みなさんも、「今の自分」で判断したりあきらめたりせず、今日からでもできる努力を一つひとつ重ねていってほしいと思います。

就活生応援マガジン「PreBiz」
古澤有可(エアラインスクール進化系「ストラッセ東京」主宰)
プロフィル 古澤有可(エアラインスクール進化系「ストラッセ東京」主宰)

1988年10月、エアラインを目指す女性の支援活動を開始。自身も超難関である欧州航空会社の客室乗務員となり、9年半、ドイツ語、英語を駆使して世界のお客様へ接客をする。2018年には、支援者一人では困難といわれるエアライン内定数延べ100名超え(120名)を達成。年間2000名以上に、内定の術を指南する。女性のキャリア支援のパイオニアとして、幅広く活動。ストラッセ東京 公式HP http://strasse-tokyo.com

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