プラごみは世界の大問題! 「脱プラ」で新ビジネスも

<第50回> 文 木之本敬介
漂着ゴミが押し寄せる和歌山県・友ケ島の地ノ島=2020年3月19日(C)朝日新聞社
漂着ゴミが押し寄せる和歌山県・友ケ島の地ノ島=2020年3月19日(C)朝日新聞社

 プラスチック製レジ袋の有料化が7月1日にスタートしました。プラスチックごみによる海洋汚染が世界の大問題になり、「脱プラ」を進める第一歩です。私たちの身の回りには、テイクアウトの弁当箱やお菓子の袋、洗剤やシャンプーの容器など、使い捨てプラスチックがあふれています。適切に処理されずに捨てられたプラごみが川を経て、海を汚染しています。特に紫外線で劣化し、波で砕けて5ミリ以下の粒になった「マイクロプラスチック」が生態系に影響を及ぼすのではと心配されています。日本は、1人当たりの使い捨てプラごみ排出量が米国に次いで世界で2番目に多い「プラごみ大国」です。マイバッグやマイボトルでプラごみを減らす努力が一人ひとりに求められる一方、企業にはプラごみ減らしだけでなく、プラスチックに代わる製品づくりが期待されます。企業にとってはビジネスチャンスでもあります。

「魚<プラごみ」に?

 安くて軽く、加工が簡単で腐らないプラスチックは、便利な半面、捨てられやすく、捨てられると分解されずに自然界に残り続けます。2016年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、少なくとも世界で年800万トン以上のプラスチックが海に流出しているとの報告書が示されました。「毎分、ごみ収集車1台分のプラごみを海に捨てているに等しい」といいます。世界のプラスチック製品の生産量は増え続けていて、2030年には毎分ごみ収集車2台分、2050年には4台分が流出すると予測し、2050年までに海中のプラスチックが「世界中の魚の総重量を超える」と警告しました。

 中でも近年、問題視されているのがマイクロプラスチックです。微粒子になると表面積が増えて有害物質が吸着しやすくなります。有害物質を吸着したマイクロプラスチックが魚介類の体内に取り込まれ、食物連鎖で人間に悪影響を及ぼす恐れがあります。すでに、魚介類や海鳥の体内だけでなく、人の便からも見つかりました。ただ、人の健康被害につながるかどうかはまだわかっていません。

2050年に新たな海洋汚染ゼロ

 海洋プラごみに対する世界の危機感が高まったのは、数年前、鼻にストローが突き刺さったウミガメや、海岸に打ち上げられたクジラの体内から大量のプラスチックが見つかった映像や画像がSNSで世界中に広まったのがきっかけでした。2019年に大阪市で開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、2050年までに新たな海洋汚染をゼロを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有することが首脳宣言に明記され、国際社会がプラごみ削減に足並みをそろえました。日本政府は、プラ資源循環戦略で「2030年までに使い捨てプラを25%削減」を掲げています。

 米・ジョージア大などの推計によると、プラごみを海に流出させている上位20カ国中、半数以上がアジアの国々です。中国が年最大353万トンで最も多く、最大129万トンのインドネシアが続きます。日本は5.7万トンで30番目です。日本近海のマイクロプラスチックの平均密度は1立方メートルあたり3.74個。世界平均の約27倍にあたり、「ホットスポット」になっています。東京理科大の二瓶泰雄教授が全国の29河川を調べたところ、河川の水に含まれるマイクロプラスチックの平均密度は3.23個で、日本近海とほぼ同じでした。国外から流れ着くのに加え、私たちの生活からも出ているわけです。

分別して捨てているのに

 でも、日本では、ごみは分別収集されていますよね。プラスチックの多くがリサイクルされているはずなのに、と思う人も多いと思います。

 プラスチック循環利用協会の2017年のデータによると、国内のプラごみはプラスチックとして再生されたり(マテリアルリサイクル)、熱利用や発電のために焼却されたり(サーマルリサイクル)しており、有効利用率は86%でした。ただ、国際的にはサーマルはリサイクルに含めないのが一般的で、これに合わせると日本のプラスチックリサイクル率は27%になります。ドイツ39%、スペイン37%、英国32%、イタリア29%などと比べて低い水準です。36カ国による経済協力開発機構(OECD)の2015年の調査では平均34%でした。サーマルは焼却によって発電と熱に利用するなど、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO₂)をたくさん排出します。

 しかも、「汚れた廃プラスチック」の輸出入が「バーゼル条約」によって2021年から規制されることになりました。汚れたプラごみが放置されたり、洗浄の廃水が川に垂れ流されたりして環境問題や住民の健康問題が起きたからです。日本のマテリアルリサイクルの多くは中国や東南アジアに輸出して処理されてきましたが、輸入規制が強まり、国内で処理しきれないプラごみの量が増えています。

「3R」の原則

 プラごみは、家庭などから出る一般系廃棄物と、工場や企業などから出る産業系廃棄物に分けられますが、圧倒的に多いのは使い捨て容器包装で、全体の半分近く、家庭に限ると8割近くを占めています。

 プラごみ減の3原則は、リデュース(削減)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)の「3R」だと言われます。日本はこれまで、使用量を減らすよりリサイクルを重視してきましたが、大量の散乱ごみやリサイクル可能量を考えると、リデュースによる脱プラをするしかないわけです。レジ袋は使い捨てプラの数%に過ぎませんが、リデュースの第一歩です。ここにきて、新型コロナウイルスの感染拡大の予防策としてテイクアウトやデリバリーが増え、世界中で使い捨てのプラ製品を使う場面が増えてしまう、という新たな課題も出てきました。「新しい生活様式」との整合性もはからなければなりません。

企業の取り組み

 企業も脱プラの取り組みを始めています。2018年には、国内外の飲食チェーンで脱・使い捨てプラスチックの動きが広がりました。スターバックスやマクドナルドなどのグローバル企業に加え、すかいらーくグループは「ガスト」や「バーミヤン」などで、セブン&アイ・フードシステムズは「デニーズ」で、使い捨てストローを原則廃止しました。代替素材として有望視されているのが、微生物によって分解されて土にかえる「生分解性プラスチック」です。化学メーカー大手カネカが開発した素材は100%植物由来で、世界各地の飲食チェーンから問い合わせが相次いでいるといいます。資生堂は、生分解性プラスチック容器をカネカと開発中で2020年中に商品化を予定しています。三菱ケミカルなど他の化学メーカーでも商品開発が進んでいるほか、製紙業界は紙による代替品を開発しています。

 食べられる食器を開発した会社もあります。愛知県の丸繁製菓は、バレイショでんぷんを使った「イートレイ」と銘打つ食器や、食用のイグサを使った食べられるお箸も販売。小麦製のスプーンを近く売り出すほか、食べられるコップも開発中です。大阪市の木村アルミ箔は、食材を使った「食べれるうつわ」シリーズを販売しています。米国では海藻を原料にしたストロー、ニュージーランドではクッキー製のコーヒーカップが登場しました。

 プラごみから再生繊維を作り、衣類やシューズ、バッグにする企業もあります。スペイン発のブランド「エコアルフ」は、漁師が海から引き上げたプラごみを原材料にした生地で、衣類やスニーカー、バッグの製造を始めました。この会社は、プラごみを回収した場所で製品を作るのが基本的な方針です。このブランドの日本展開を準備している三陽商会は、2021年をめどに日本でも漁師が回収する海洋プラごみから生地を作り製品化できないか模索しています。ドイツのアディダスは、海岸沿いで回収されたペットボトルや漁網のプラスチックを再生した繊維で、スニーカーやウェア、バッグを2015年から製品化。欧州サッカーのマンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリード、ユベントスといった強豪チームのユニホームにも使われました。2019年には海洋プラごみ由来の再生素材を使ったシューズを1100万足製造、2020年は1500万足以上になる見通しです。同社は「1足につき約11本のペットボトルが海に流出するのを防いだ」「海を守る次世代の教育にも力を入れる」などとPRしてきました。プラごみの活用が「売り」になる時代です。

木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)
プロフィル 木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)

1986年入社。政治部記者、採用担当部長などを経て就職情報サイト「あさがくナビ」編集長。「朝日学生キャリア塾」を立ち上げて就活生の指導も。サイト「就活ニュースペーパーby朝日新聞」では就活に役立つ情報を日々発信中。大学などでの講義・講演多数。著書に「最強の業界・企業研究ナビ2017」(朝日新聞出版)がある。

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