先輩たちの就活ストーリー⑦ 芸人タイプの“面白女子”からCAに内定

<第34回> 文 ライター・小元佳津江
手袋を着用してパックのお茶を提供する客室乗務員=2020年6月4日(C)朝日新聞社
手袋を着用してパックのお茶を提供する客室乗務員=2020年6月4日(C)朝日新聞社

 先輩たちの就活ストーリー、最後に紹介するのは、芸人タイプの面白女子ながらANAのCA職に内定した、陽菜(ひな・仮名)さんのお話です。

 航空業界に憧れていた陽菜さんは、エアライン内定者を多く輩出する大学に入学し、英文学科に在籍。学内のエアライン就職支援のプログラムを受けていました。

 少しぽっちゃりしていて常に明るい陽菜さんは、人を笑わせることが大好きで、サービス精神も旺盛。いわゆるクラスのムードメーカーでした。

 たとえば、「質問タイム」などに誰からも質問が出ず、周囲がしーんとしていたら、「こういう場合、私がいったほうがいいですよね」と切り出し、何かしら質問をひねり出す。「皆で面白いスナップ写真を撮ろう!」となれば、率先して何かやらかして皆を笑わせる。実際、おしゃべりも上手なので、困ったら彼女にふれば何とかしてくれる。そんな、典型的な芸人タイプの学生だったのです。

CA受験を勧めるも、一貫して「GS志望」

 陽菜さんは、私にも周囲の学生にもずっと、「GS(グランドスタッフ)志望だ」と言っていました。確かに、正直なところ外見的な面からも、彼女のそんな雰囲気からも、一見してCAタイプに分類される感じではありませんでした。でも私は、かなり早い段階から「CAを受けなさい」と彼女に言い続けていました。

 それは、ほかならぬ陽菜さんのそのキャラクターに、CAとしての素質を感じ取っていたからです。ハプニングなど何かネガティブなことが起こったときにも、うまく乗り越えられる。いい意味で鈍感で、細かいことを気にしない。そして、誰からも好かれるキャラクター。クラスの中で彼女のことを嫌いだという学生は、おそらく一人もいないだろうと思われました。

 今の航空業界では、こうした明るくて精神的にタフなタイプが求められているのです。おそらく陽菜さんであれば通過できるだろう。そう考えた私は、ことあるごとにCAを勧めました。でも、彼女はかたくなに拒み、ずっと「GS志望」を貫いていました。

 陽菜さんは英語力もかなりのもので、TOEICの点数は800点ほどありました。話すのも上手なので、気になった点といえば言葉遣いくらいでした。

 「やっぱ」「ちがくて」などの学生言葉や、「同期の友人が」と言うべきところを「同期の子が」と言うなど、幼稚な表現が飛び出すことはしばしば。気づくたびに注意しましたが、陽菜さんの場合、言葉遣いを気にかけるあまり、彼女の明るく楽しい性格が表現できなくなってしまうことは避けねばなりません。そこで、可能な限り日常生活で改善し、面接の場ではそれらをすべて忘れ、身についているという感覚でやりなさいと伝えていました。

 そして陽菜さんは、見事GSから内定をいただきました。

最後の最後に、こっそりとCA受験?!

 ところが、陽菜さんが4年生となった6月のある日、そっと彼女から打ち明けられたのです。

「有可さん、実は、次がCAの最終面接なんです」
「え?! 受けていたの? どうして教えてくれなかったの」
「驚かせたかったんです。本当は、内定を取ってからご報告したかったんですが、最終となると、どうしたらいいのか不安で……」

 聞けば、自信はなかったものの、私が言い続けていたことから、「CAにも挑戦するだけしてみよう」という気持ちになり、勇気を振り絞って受けてみたというのです。私は驚きましたが、元々彼女なら大丈夫だろうと思っていました。

 だから、「ずっと言い続けてきたとおり、私はあなたならCAになれると思っているの。そこまで残ったということは、実際、ちゃんと認めていただいているということだから。とにかく落ち着いて、いつもの調子で受ければ大丈夫だから」と励まして送り出しました。

 そうして迎えた面接当日。いつもの陽菜さんのキャラクターが、よい形で発揮できたのでしょう。面接担当者は終始笑いっぱなしだったそうです。陽菜さんは見事、ANAからCA職の内定をいただいたのでした。

 後日、私の元にやってきた陽菜さんは、お礼を言いながら号泣していました。

 「本当にありがとうございました。でも、どうして有可さんは、私に何度もCAを勧めてくださったんですか?」

 そう聞かれたので、私は思っていたままを答えました。

 「性格が明るくて元気で、何を言われてもへこたれないし、打たれ強いでしょう。航空会社は今、そういう人を求めているから。だから、陽菜さんならきっとお仕事できるはずだと思ったから」

自分の気持ちにフタをせず、とことん向き合う

Wittayayut(Getty Images)
Wittayayut(Getty Images)

 陽菜さんが心の奥底ではCAに憧れていることに、実のところ、私はかなり早い段階から気づいていました。それも告げると、彼女も素直に認めました。でも、その気持ちにずっとフタをし続けていたために、自分でも本心がわからなくなってしまっていたようです。だから、私からそう言ってもらえたことがうれしかったのだと言っていました。

 ややぽっちゃりした体形であること、また、はた目からはさほど気にならないものの、少し出っ歯であることも、本人はとても気にしていました。「CAはきれいな人がなるもの」という強い思い込みもありました。また、彼女が受けていたエアライン就職プログラムには、CA志望者が集まるため、やはりきれいな学生も多かったのです。

 そういうなかで、自分のキャラクターや集団内での立ち位置なども考え合わせると、「とても、CA志望とは言い出せなかった」のだそうです。

 CAが広告塔であった時代は、はるか昔のことです。今は、容姿端麗でなければ受からない、というわけではありません。それよりも、きちんとプロとして業務をこなせることが重視されます。

 自分のなかの勝手なCA像やコンプレックスによって、夢への扉を自ら閉ざしてしまうなんて、実にもったいないことです。陽菜さんは、最後の最後でそこから抜けだし、挑戦してくれて本当によかったと思います。

 一度しかない人生です。みなさんも、どうか自分の気持ちに正直になり、思い描く未来にアプローチしてほしいと思います。

 これまで、長きにわたり読んでくださり、ありがとうございました。本コラムは今回で終了となりますが、コラムで発信してきたことが、就活で闘う皆さんの一助となれば、こんなに幸せなことはありません。

 特に今は、新型コロナウイルスの影響などで、就活も大変な状況下にありますが、皆さんの未来が輝かしいものとなるよう、これからも陰ながら応援しています。

古澤有可(エアラインスクール進化系「ストラッセ東京」主宰)
プロフィル 古澤有可(エアラインスクール進化系「ストラッセ東京」主宰)

1988年10月、エアラインを目指す女性の支援活動を開始。自身も超難関である欧州航空会社の客室乗務員となり、9年半、ドイツ語、英語を駆使して世界のお客様へ接客をする。2018年には、支援者一人では困難といわれるエアライン内定数延べ100名超え(120名)を達成。年間2000名以上に、内定の術を指南する。女性のキャリア支援のパイオニアとして、幅広く活動。ストラッセ東京 公式HP http://strasse-tokyo.com

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