「トランプVSバイデン+ハリス」 米大統領選ここに注目

<第53回> 文 木之本敬介
次のホワイトハウスの主は誰になるのだろうか(C)朝日新聞社
次のホワイトハウスの主は誰になるのだろうか(C)朝日新聞社

 米国の大統領選挙は、ジョー・バイデン前副大統領(77)が民主党の候補に正式に指名され、現職の共和党ドナルド・トランプ氏(74)に挑む構図が固まりました。「アメリカファースト(米国第一)」を掲げて世界を分断してきたといわれるトランプ氏と、国際協調路線といわれるバイデン氏。世界一の超大国のトップ選びは、世界にも日本にも決定的に大きな影響を与えます。バイデン氏が副大統領候補に黒人女性のカマラ・ハリス氏を選んだことも大きな話題で、事実上「トランプVSバイデン+ハリス」の戦いです。投票日は11月3日。注目のポイントを整理します。

米大統領選「基本のき」…仕組みは?共和・民主どう違う?【時事まとめ】も読んで下さい。

バイデン氏は苦労人

 バイデン氏は日本時間の8月21日、民主党大会での指名受諾演説で「現在の大統領はあまりにも長く、米国を闇で覆い、怒りと恐怖と分断を生み出した」とトランプ氏を批判し「光が闇よりも強力だ。歴史が、米国の闇の終わりが今夜から始まったと言えることを願う」と訴えました。

 さらに、トランプ氏の新型コロナウイルス対応について「米国と米国人を守るという最も基本的な義務を失敗した」と非難。「私は米国を守ることを約束する」と強調しました。

 バイデン氏は上院議員を36年、オバマ前大統領のもとで副大統領を8年務めた穏健派の大ベテラン政治家で「史上最も経験豊富な大統領候補」とも呼ばれます。「苦労人」としても知られ、子どものころから吃音(きつおん)に悩まされ、最初の妻と長女は交通事故で死別。2015年には民主党の若手ホープだった息子が46歳の若さで死去しました。

 悲しみが癒えなかったバイデン氏は、翌年の大統領選への立候補を断念。政治家人生の終わりと思われましたが、トランプ大統領が誕生したことで「国の魂をかけた闘い」として今回は立候補し、大統領候補の座を3度目の挑戦でつかみました。庶民派で温厚な人柄で知られる一方、事実関係の誤りなどの失言が多いのが欠点です。

 今は、コロナ禍で大きな集会を開けないこともあり、バイデン氏はあまり表に出ず、トランプ氏の「敵失」を待つ戦略を取っているようです。選挙活動の大半はオンラインで、感染対策を徹底してトランプ氏との違いをアピールするほか、失言などのリスクを避ける狙いがあるとみられています。

 当選したら、来年1月の就任時には78歳という高齢もネックです。トランプ氏も高齢なので、どちらが当選しても史上最高齢の大統領になるのは確実です。

ハリス氏は「初の女性大統領」の可能性

 父親がジャマイカ出身の黒人で、母親がインド出身のハリス氏は移民2世。主要政党の正副大統領候補としては初めての黒人女性でありアジア系です。民主党が掲げる「多様性」を象徴する存在ともいえます。検察官やカリフォルニア州司法長官を経て、2017年から同州選出の上院議員を務め、鋭い舌鋒(ぜっぽう)で知られています。今回の民主党の大統領候補者選びに立候補し、一時はバイデン氏を厳しく批判しましたが、支持が伸び悩んで撤退。今年3月にバイデン氏支持を表明しました。

 ハリス氏が特に注目されているのは、米国史上初の女性大統領になる可能性があるためです。米国では歴代の大統領、副大統領はすべて男性です。1984年には民主党、2008年には共和党の副大統領候補に女性が選ばれましたが、落選しました。2016年には民主党のクリントン元国務長官が主要政党初の女性大統領候補になりましたが、トランプ氏に敗れました。

 敗北演説では「私たちはいまだ、最も高く、硬いガラスの天井(女性の社会進出を阻む、見えない存在)を破ることができていない」と語りました。米国では、大統領が任期中に職を務められなくなれば副大統領が大統領に昇格します。さらに、気の早い話ですが、高齢のバイデン氏は4年間務めたとしても次の2024年の大統領選への出馬は難しいとの見方が強く、その場合、ハリス氏が民主党の有力な大統領候補になると見込まれます。

バイデン氏リードだが…

 大統領選の行方を世界中が注目しています。仮にバイデン氏が当選しても、激化している米中対立の構造はトランプ政権と変わらないとみられています。一方でバイデン氏は、トランプ政権が離脱を表明した世界保健機関(WHO)や地球温暖化対策のパリ協定に復帰し、日韓や北大西洋条約機構(NATO)加盟国など同盟国を重視する協調姿勢を掲げています。どちらが当選するかによって、世界は大きく変わりそうです。

 選挙情勢は今のところバイデン氏が優勢です。トランプ大統領が国内や世界を「分断」する方向に導いてきたことに加え、世界最多の感染者を出しているコロナ対策への批判も強まっています。米CNNが8月17日に発表した世論調査の支持率では、51%のバイデン氏が42%のトランプ氏を大きくリードしています。ただ、投票まではあと2カ月以上あります。今後、コロナをある程度押さえ込めるのか、さらに患者や死者の数が増え続けるのかが大きく影響するでしょうし、テレビ討論での直接対決は毎回大きく結果を左右します。これからさらに増える米大統領選のニュースに注目して下さい。

木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)
プロフィル 木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)

1986年入社。政治部記者、採用担当部長などを経て就職情報サイト「あさがくナビ」編集長。「朝日学生キャリア塾」を立ち上げて就活生の指導も。サイト「就活ニュースペーパーby朝日新聞」では就活に役立つ情報を日々発信中。大学などでの講義・講演多数。著書に「最強の業界・企業研究ナビ2017」(朝日新聞出版)がある。

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