自由で対等な働き方できる テレビマンユニオン・大島明さん 前編

<第1回> 就活ナビ編集部
大島明さん。受付には、番組が受賞した数々のトロフィーが並んでいる=東京都渋谷区
大島明さん。受付には、番組が受賞した数々のトロフィーが並んでいる=東京都渋谷区

 新型コロナウイルスの影響で、2021年卒採用の就職活動の状況は大きく変わりました。老舗の映像制作会社・テレビマンユニオンのディレクターで、採用責任者の大島明さん(37)に、採用方法の変化や、自身の経験を踏まえた求める人材を聞きました。2021年卒の担当だった牧有太さん(39)にも同席してもらいました。「情熱大陸」「サラメシ」「遠くへ行きたい」など、名だたる番組を手がける制作会社。前編はまず、独特な会社のシステムを中心に聞きました。

▼テレビマンユニオン公式サイト

―― まず、会社について。2020年は創立50周年だそうですね。

 そうです。1970年、当時TBSにいた社員が中心となり独立して作りました。通常の会社には人事があって異動があります。異動したら、制作現場から外れることがあります。それが嫌で、ずっと現場にいたい、という人たちが立ち上がりました。

―― いわゆるテレビ制作会社の中では異色ではないでしょうか。

 日本で最初に出来た映像制作会社です。異色と言えば異色だったでしょうね。会社のシステムも変わっています。僕が入社した時に「あなたは個人事業主です」と言われました。

若手でも経営に関われる

働き方について説明する大島明さん=東京都渋谷区
働き方について説明する大島明さん=東京都渋谷区

―― どういうことですか?

 メンバー全員が株を保有しています。社長を決めるのも、2年に1回開催される選挙です。メンバーになれば、入社時期は関係なく、投票の権利があり、会社の経営に一人ひとりが携わります。会社の方針なども、メンバーが集まる総会で話し合いが行われ、そこで決定されていきます。なので、社長が勝手に決めることはできません。

―― 特有の「メンバーシップ制度」という仕組みだそうですね。

 新入社員だと、大体2年ほど「正社員期間」があり、採用時の責任者が番組の配属を決めます。様々な番組に配属され、制作のノウハウを教わり、関係者にも顔を知ってもらいます。

 期間終了後に、メンバーにするかどうか総会で話し合われ、賛同を得られたら、晴れてメンバーになれます。そして株を買うことができます、そうなれば、社長であれ、誰であれ、同じ権利を持つことになります。これが「メンバーシップ制度」です。メンバーになると、給料は出来高制。だから、フリーや個人事業主に近いんです。

  メンバーは「自立したクリエーター」です。クリエーターとしてどういう環境がふさわしいのかを自分たちで整える必要があります。そのためにはクリエーターであり経営者としても組織と向き合っていかなければいけません。だから、自分たちの代表である社長も選挙で決める。組織として重要な事項もメンバー総会という場で決められます。こうした仕組みを社内では「合議・対等・役割分担」と呼んでいます。

―― 「対等」でいえば、人事部がないそうですね。

  はい。僕らの組織には人事部はありません。年に1回、採用委員長が任命されます。僕は2021年卒担当で、10月からは大島が担当しています。毎年変わる採用担当者によって、その年ならではの個性ある人が採用され、組織に様々なタイプのクリエーターが集まります。

―― 他に特徴的なことはありますか?

 一番怖いのは、固定給がほぼないところです。例えば、5年目のメンバーが30年目のベテランより収入が多いことはよくあります。人によって給料が全く違う。一つのものに集中したい、という考えだったら、それだけに時間を注げます。ずっと企画を書いていてもいいんです。だけどその間は、ほぼ収入はありません。それは個人の自由です。給料の保証はないけれども、クリエーティブな生き方は守られています。「これをやれ」と言われても拒否権は常にあります。

 例えば、企画を書いて1億円のプロジェクトが決まった場合、そのうちの何%かのプロモート料とギャラを受け取れば、年に1回稼いでそれ以外は働きません、という働き方でも自由です。定年もなく、会社の重延浩会長は79歳ですが、まだ現役のプロデューサーであり、ディレクターをしています。僕らと立ち位置は一緒なんです。一応。

―― 新入社員の働き方についてお伺いします。まずはADとして現場に配属されるんですか?

 そうです。でも企画さえ通せば、すぐにディレクターになれて、AD期間がない人もいます。だから「企画を書いたもん勝ち」です。入社3、4年目で映画の監督をしている人もいます。そういう面ではすごく恵まれています。企画を書けば、プロデューサーが実現させてあげようと動いてくれますし、まれですが、成立するケースもあります。

▼「コロナが変えた就職活動」

「僕らがいないとテレビは作れない」

「世界ふしぎ発見!」のロケで、ウユニ湖を撮影する様子(大島さん提供)
「世界ふしぎ発見!」のロケで、ウユニ湖を撮影する様子(大島さん提供)

―― 現場のテレビ局との関係性を教えて下さい。

 会社の理念では「対等」です。でも実際は、テレビ局がなければ、僕らの仕事はないわけで。それでも僕個人としても対等だと思います。番組は、僕らがいなければ作れないと思っています。

―― 番組の企画はテレビ局発案ですか? 持ち込むんですか?

 両方あります。他の制作会社に多いのは、局が考えている案に参加してください、という形。うちは、どちらかと言えば、企画を自分たちで考えて持っていくことが多いかもしれません。局から見れば「面倒くさい会社」と思われているかもしれませんが、「クリエーター魂が強い」というイメージがあるからでは、と思っています。

  テレビのレギュラー番組って、一つの番組にいくつかの制作会社が入っている場合が多いですけど、例えばTBSの「世界ふしぎ発見!」は、うちだけで作り続けています。関わり方に関しても独自のものがあります。番組スポンサーさん、テレビ局との信頼関係が大きいと思います。

―― 制作会社といっても数多くあり、質の悪い会社もあると聞きます。

 そういう会社があるのは事実です。でも、僕らが自信を持って言えるのは、お金はかかるかもしれませんが、それに対するいい番組は作れますよ、と。その自信はあります。

(後編へつづく)

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