コロナでも映画業界踏ん張り 東映・山野宏樹さん 中川友紀さん 前編

<第2回> 就活ナビ編集部
(左から)中川友紀さん、山野宏樹さん=東京都中央区
(左から)中川友紀さん、山野宏樹さん=東京都中央区

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、映画館が休館したり、作品が公開延期になったりするなど、大きな影響が出た映画業界。「翔(と)んで埼玉」のヒット作や、テレビドラマ「相棒」シリーズを手がける東映株式会社で、採用を担当する人事労政部人事室課長の山野宏樹さん(42)と、同室の中川友紀さん(26)に、業界の現状や採用状況をインタビューしました。まず前編は、会社の事業内容などを詳しく伺いました。

▼東映公式サイト

―― まず、会社の主な事業内容を教えて下さい。

 山野 大きく分けても13の事業があります。主にコンテンツに関わるもので「総合コンテンツ企業」です。映画やテレビに始まり、そこから派生した様々な事業、加えて、不動産やホテルなども手掛けています。

 中川 映画から始まった会社です。派生してテレビドラマ制作にもいち早く取り組んだ歴史があります。また、ヒーローショーをはじめ、東映作品のキャラクターを生かしたイベントも数多く手がけています。さらにライセンスビジネス。この四つを採用HPのトップページで紹介しています。

―― 直営の映画館はどのくらいありますか。

 山野 本社がある銀座の丸の内TOEIと、渋谷の宮益坂にある渋谷TOEIの2館です。グループ会社のティ・ジョイのシネコンが、札幌から大分まで全国22カ所あります。

仕事内容を説明する山野宏樹さん=東京都中央区
仕事内容を説明する山野宏樹さん=東京都中央区

―― 映画で最近のヒット作に「翔んで埼玉」がありますね。テレビでは「相棒」「科捜研の女」などを手がけておられます。テレビドラマの作り方の流れを教えてください。

 山野 東映のプロデューサーとテレビ局のプロデューサーが一緒に企画を立てます。映画と違うのは、放送枠が決まっているということ。映画はまず企画ありきで、成立後に公開時期や公開規模が決まります。

 撮影所が東京の大泉学園と京都の太秦にあるので、テレビ撮影はそのどちらかでしています。東京の方は東映テレビ・プロダクションという子会社が制作を請け負います。皆さんが見慣れている刑事部屋や取調室なども、実在する訳ではなく実はセットだったりすることもあります。

 中川 今はコロナ禍で難しいですが、通常の新入社員研修で撮影所見学に行くと、相棒のセットを見ることができますよ。プロデューサーは撮影が始まると、本社にいるよりはほぼ撮影所にいます。テレビ局のプロデューサーに比べて、より現場に近いのが特徴です。

配信サービスで旧作掘り起こし

中川友紀さん=東京都中央区
中川友紀さん=東京都中央区

―― イベント事業は、コロナの影響をかなり受けているのではないでしょうか。

 山野 一時期は全く行えない状況でした。ようやく、感染防止対策を徹底した上で開催したり、観客を入れずに配信に切り替えたりして実施しています。映画館同様、ここから復調していくと思います。

 中川 制作したテレビ作品をもとにした「ヒーローショー」を、遊園地からホールまで様々な規模で実施しています。また、美術館やデパートの催事場における展覧会も企画しています。最近は、劇団少年社中さんらと本格的な舞台演劇の制作もしています。

 山野 特撮出身の若い俳優さんたちにも、舞台出演をして頂く。ヒーローショーから派生して、いま力を入れています。

―― ライセンスビジネス事業はどういうものがありますか。

 山野 東映で制作している作品は、納品して終わりではなく、東映に権利が残る形になっています。映画館での公開や放送のあともいかに皆さんに長く楽しんで頂くか、というのが我々の使命でもありますし、利益を生み続けるのがライセンスビジネスです。

 DVDやブルーレイなどのレンタル市場が縮小傾向なのは否めませんが、それを補うのが配信サービスです。コロナ禍でもあり、NetflixやAmazon、Huluなど、サブスクリプションという形で多くの人に見てもらっています。

 中川 東映として「TTFC」(東映特撮ファンクラブ)というアプリを運営していて、仮面ライダーやスーパー戦隊など、特撮に特化した作品を月額会員制で見放題にしています。Amazon Prime Videoでも、ジャンルを特化した有料のチャンネルを作って旧作を掘り起こしています。

―― 新卒採用者はこうした部門に散らばって配属されることになるのでしょうか。

 山野 そうですね。総合職として採用されるので、入社から2カ月ほどの研修後に、地域としては東京本社、大阪、福岡の各支社、東京と京都の撮影所のいずれかに配属されます。さらに、ティ・ジョイに出向して経験を積んでもらうこともあります。

 毎年14、15人採用し、部署としては、撮影所現場の最前線から管理部門まで、適性を見て各部署に基本的には1人ずつ配属されます。平均して3~5年で異動があるというイメージです。

映画館で接客中の新入社員(東映提供)
映画館で接客中の新入社員(東映提供)

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他社のヒット作でも業界全体に波及

―― コロナによる影響が大きい映画業界の現状を教えて下さい。

 山野 コロナ前のことから申し上げますと、配信で映画を見る人が増え、映画館に行く人は減っているのでは、と思われがちですが、2019年は過去最高の興行成績を記録するなど、非常に活況でした。例年、年間興行収入2千億円程度で推移してきましたが、昨年は2611億円でした。決して楽観はしていませんが、映画館で映画を見るというビジネスはまだまだ需要があると感じていました。

 しかし、コロナによる緊急事態宣言で全国の映画館がほぼ休業状態になりました。営業再開後は、座席を半分にしたり、飲食を禁止したりと、対策についても試行錯誤が続きました。そういった中で「今日から俺は!! 劇場版」「コンフィデンスマンJP プリンセス編」など徐々にヒット作品が出てきました。

 さらにこの10月に「鬼滅の刃」が社会現象とも言えるヒットとなり、映画館が連日満席になるような状況で、活気が戻ってきたと言えます。いずれも東宝さんの作品ではありますが、ティ・ジョイの映画館でも上映しているように、ヒットの影響は業界全体に及びます。

 1~10月の累計の興行収入は、昨年対比40%台ですが、10月単月に限ると「鬼滅の刃」の記録的ヒットにより、前年対比150%超です。映画館にお客さんが来るということは、予告編を見て次は東映作品の鑑賞にもつながりますし、他社作品のヒットであっても、ただ「うらやましいな」という感覚にとどまらないところが、この業界の良いところではないかと思います。

―― 撮影現場への影響もあるのでしょうか。

 山野 コロナに関しては一方、制作現場への影響はまだしばらく続くのでは、と見ています。そもそも撮影現場は密が生じやすい状況です。十分に対策を講じてはいますが、ひとたび陽性者が出れば、撮影自体が続けられなくなるリスクを負っています。

 あとはロケ場所です。特に屋内について、これまでは快く貸してくれていた所でも「どうぞ」と言いづらい状況だと思います。コロナ対策に加え、近場が難しくロケが遠方になると、それだけで撮影にかける期間が長くなり、どうしても制作費は高くなり、利益を圧迫することになってしまいます。

 とは言え、収束するまで手をこまねいて待っているわけではなく、脚本や撮影手法の創意工夫が生まれたり、ロケで行っていた撮影を合成に切り替えたりするなど、デジタル技術の活用が想定以上のペースで進むのではないでしょうか。

(後編へつづく)

【連載】シネマニア経済レポート

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