働くって楽しいよ 東映・山野宏樹さん 中川友紀さん 後編

就活ナビ編集部
(左から)中川友紀さん、山野宏樹さん=東京都中央区
(左から)中川友紀さん、山野宏樹さん=東京都中央区

 厳しいながらも、復調の兆しが見えてきた映画業界。前編では、東映株式会社で採用を担当する人事労政部人事室課長の山野宏樹さん(42)と、同室の中川友紀さん(26)に、業界の現状や会社の事業内容などを聞きました。後編は、コロナ禍での採用面接の工夫や大変さを伺ったほか、2022年卒の就活生にエールを送ってもらいました。

▼東映公式サイト

―― 2021年卒の採用についてお伺いします。コロナの影響は大きかったですか?

 中川 会社説明会については、今年はたまたま1月中に終えていましたので、WEB実施をしませんでした。ただ、合同説明会など、いくつか中止になってしまったことがありました。最近ですと、WEBの合同説明会に参加しています。来期はWEB説明会をやろうか、と考えています。

合同WEBセミナーで企業説明の配信をする新入社員(東映提供)
合同WEBセミナーで企業説明の配信をする新入社員(東映提供)

―― 採用の流れを教えて下さい。

 中川 1~3月まで応募書類を受け付けました。4月中に書類選考して、4月末に結果を発表しました。当初の想定では、1次選考はリアルで対面する予定でした。ただコロナの影響で、4月末の結果発表の時点で、WEBで実施することをお伝えしました。

 山野 1次選考は東京の本社と、大阪の関西支社のどちらかに来てもらって、グループワークを想定していました。

 中川 1次選考は、動画の提出をお願いしました。アプリを起動すると質問が出て、その質問の答えを1分間でカメラの前で話して頂く動画面接でした。

―― どういった質問でしたか?

 中川 「自己アピールをしてください」「東映の好きなコンテンツは何ですか」という質問です。ちゃんと企業研究していたら答えられるでしょう、というもの。質問は、アプリを開いてみないと分からないため、答えられず、ずっと押し黙ってしまう動画も中にはありました。

 結果的に、学生も我々も、上手く利用できたとは言い難いツールでした。そういったことも含め、コロナ禍で、どういう手法があるのか色々とトライしてみた年でした。WEB上で選考する経験が全くなかったので、難しかったです。

 2次選考も、本当にギリギリまでできるだろうかと思っていました。結局、5月予定の面接を1カ月後ろ倒しにして6月実施にしました。そこまで延ばせば対面でできるかも、と思いましたが「(対面)かもしれない」では、学生を混乱させてしまうということで、2次とその後の3次選考はWEBで実施することにかじを切り、学生にもお伝えしました。

▼自己PR動画選考を突破するコツは?

初のWEB面接、リアル以上に丁寧に

―― WEB面接と、リアルでの面接との違い、難しさはありましたか?

 中川 会わずに画面でしか姿を見られないので、全部をちゃんと分かってあげられるのだろうか、という不安が大きかったです。だから、面接担当者はいつも以上にエントリーシートを読み込んで、漏れがないように聞くようにしていました。

 山野 対面の面接だと、ノックして、「失礼します」と言って、ドアを開けて、閉めて、歩いてきて、座って、と一連の動きを観察することができます。緊張の度合いなど、そこから得られる情報量が意外と多かったのだということを、WEBに切り替わったことで思い知らされました。面接中は、画面の学生の顔を見たいけど、実際は少し上のカメラを見ながらしゃべらないといけませんでした。

 中川 学生も同じだと思いますが、お互い目を合わせながらしゃべることができませんでした。普段から当社の面接時間は1人10~15分くらいですが、面接時間を少し長くして、話をするのは15~20分くらいにしました。通信環境が悪く途中でネットが切れてしまった場合は電話をして続けたこともありました。

―― WEB面接にしたことで、学生の地域的な広がりは出ましたか?

 中川 元々、本気な学生はどの地域からも受けていたので、大きな変化は感じませんでしたが、ハードルは下がったのかなと思っています。

 山野 最初からWEBと分かっていたら、もう少し地方からも、ということはあったかもしれません。次もWEBでやってみてどうなるか、というところです。

―― 最終面接もWEBですか?

 中川 最終面接は対面でした。役員面接なので、WEB慣れしていない役員もいるし、最後はお互いに会うことが大事だなと思っていました。当初の6月上旬実施を7月上旬まで延ばして、アクリル板を置くなどコロナ対策を講じた上で、実施しました。

 山野 今回の内定は13人で例年並みです。コロナのことはありましたが、人数は例年通り取ろう、ということは早くから決めていました。学生の質の変化については、学生の方は何社も受けてWEB面接に慣れていたところもあります。割とみなさん自分の実力は出せていたと思います。

▼オンライン就活の隠れた利点

―― 2022年卒の採用スケジュールや予定を教えて下さい。

 山野 採用人数は例年通りの予定です。選考は最初から対面とWEBの組み合わせで、と考えています。動画面接はやめて、本来やっていた対面でのグループワークに代わるものを検討中です。例年通り6月上旬内定を目指します。

「入社への思い、自分の言葉で」

WEB面接について振り返る(左から)山野さん、中川さん=東京都中央区
WEB面接について振り返る(左から)山野さん、中川さん=東京都中央区

―― 求める人材、重視する点はどういうところでしょうか。

 山野 社員数は350人程度と比較的小さい会社なので、なるべく早いうちから活躍してもらえるような人材を求めます。学生から社会人に変わるタイミングなので、完成されている必要は必ずしもありません。仮に即戦力でなくても、そこから数年でどのくらい伸びてくれそうか、という期待感、予感を感じさせる学生を採りたいです。

 そこを見極めるため、学生時代に何をしてきたか、などを面接で聞くわけですが、自分をどういう風に成長させてきたとか、先を見通した行動ができたのか、困難な課題に進んで挑戦する意欲を持っているか、というようなところから、活躍できるかをみていきたいです。そういった姿勢以外の必要なものは、入社してから身につけられます。

 中川 「なんで東映なの?」というストーリーがあると、納得して皆さんを受け入れられます。「何となくエンタメ」とか「何となく楽しそうだから」だと、入社意欲が弱いと感じます。ちゃんとしたきっかけ、理由はしっかり持ってきて欲しいです。そういうところから「縁」を感じたりします。

―― ちなみにご自身の場合はいかがでしたか?

 中川 大学の頃、公開を待ち遠しく思っていた映画が東映配給でした。岩井俊二監督の「リップヴァンウィンクルの花嫁」という作品です。大学での企業説明会で、映画3社が来た日がありました。当時はメーカー志望でしたが、たまたま東映の説明を聞きに行ったら、開始前に会場で流れていた予告集の中に、その作品があったんです。「ポスターも貼ってある!」と興奮した記憶があります。説明を聞くと、映画だけでなく、色々なことができると知りました。私は何か一つを極めるよりは、様々なことに興味を持つタイプだったので、楽しそう、と思ったその日からどんどん本気になっていきました。

―― まさに「縁」ですね。

 中川 縁です。作品の完成披露試写会にも行っていて、作品からかなり影響を受けたんです。一般学生だったので、テレビや映画といったいわゆる「業界」と呼ばれる会社は受けようとしていませんでした。人脈や経験のある人が採用される業界、というイメージからエンタメ業界に関わることは絶対にないだろう、と思っていたからです。ですが、この作品は「自分次第で人生は切り開けるよ」と言ってくれるような映画で、就活前に観たときに「何をウジウジしてるんだろう。やってみないと分からないのに」と奮い立ち、東映を受けようとエントリーシートを出しました。

東京撮影所で働く新入社員。所内で荷物を運ぶターレットを運転中(東映提供)
東京撮影所で働く新入社員。所内で荷物を運ぶターレットを運転中(東映提供)

―― 最後に。就活生へのメッセージをお願いします。

 中川 今話したことにも共通しますが、何事にも諦めないで取り組んで欲しい、と思います。最近は総合職一括採用や新卒者一括採用は「柔軟ではない」とか、通年採用も増えてきたので、ネガティブに捉えられがちです。でも、私にとっては、一回リセットして、1人の人間として他の学生と同じ土俵に立てるチャンスでした。

 同じ時期に同じ会社を受けられるのは、何も持ってない人や不安になっている人にとっては格好の舞台です。何か持っている人と同じスタートラインから取り組めるチャンスだと思っていました。物おじせず挑戦し、チャンスをものにしてほしいです。私も挑戦したから今があります。

 また、世の中にある「就活対策本」などに頼ると、どうしても画一的な感じになっていってしまいます。ES選考や面接をする我々にとっては、そういう対策をしたものは目に留まりません。ちゃんと自分の言葉で話して、書いて、思いを伝えて欲しいと思います。

―― 対策をしたものだと、分かってしまうのですか。

 山野 エントリーシートはたくさん読んでいくので、どうしても既視感が出てしまいます。

 中川 自分の言葉でしっかり書いている学生って、見え方が全然違うと思います。そこを折れないで欲しいです。

▼「受かるエントリーシート」の書き方は?

―― 山野さんもメッセージをお願いします。

 山野 一つの会社に一生勤めるということが当たり前ではなくなってきています。就活が全くやり直しがきかないということではないのです。とはいえ、新卒一括採用で入って、そこでしか得られない入社同期の仲間と切磋琢磨して働くのは一生に一度のチャンスだと思います。二十数年間、いろんな人との関わりの中で生きてきて今があるはずです。それを振り返り、自分について普段とは違う視点から考えたり、積極的に人にアドバイスを求めたりするいい機会だと思います。

 就活の中で、落ち込んだり、つらいことがないわけはないと思いますが、社会人の先輩としては「働くって楽しいよ」ということを伝えたいです。

―― 必ずしも自分がやりたいことでなくても楽しむことが大事ということですか?

 山野 逆に言えば、どんなことにでも楽しさを見いだせる人になってほしいですし、好きなことを仕事にしたとしても、つらいことの方が多いかもしれません。それでも「絶対に楽しいことはあるよ」と伝えたいです。達成感や人との関わりの中で、楽しい瞬間は絶対にあります。

▼コロナ禍の就活、企業が評価する点は?

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