ソフトバンク、史上最高益5兆円!! トヨタ「堅実経営」際立つ

<第69回> 文 木之本敬介
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(C)朝日新聞社
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(C)朝日新聞社

 ソフトバンクグループ(SBG)が国内企業として過去最高の巨額利益をたたきだしました。2021年3月期決算で最終的なもうけを示す純利益は約5兆円と、これまで最高だった2018年3月期のトヨタ自動車の2倍の数字です。携帯電話事業も好調ですが、もうけの7割を占めるのは世界の新興IT企業への投資事業。世界的な株高を背景に、投資がうまくいった結果です。孫正義会長兼社長は「SBGは投資会社に完全に軸足を移す」と宣言し、将来性のある「金の卵」を育てる会社になると語りました。日本企業としては新しい形ですが、常に大損失のリスクも抱えています。一方、トヨタはコロナ禍で売上高は減ったものの、生産コストを下げて純利益は前年より1割増の2.2兆円で「堅実経営」が際立ちました。「ハイリスク・ハイリターン」の投資会社と、着実なモノづくりの会社。日本のトップ2社の決算から、企業のあり方や存在意義を考えます。

世界3位の純利益

 SBGの純利益は最近の決算で比べると、世界1位の米アップルの6兆円、サウジアラビアの石油会社サウジアラムコに続く3位で、米マイクロソフトや米グーグルの親会社アルファベットを上回りました。稼ぎ頭は、2017年に立ち上げたグループの投資会社「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」です。世界中の投資家から10兆円を超える資金を集め、多数の企業の株を買ってきました。この1年は、コロナ禍で各国が金融緩和をしたことで世界の株式市場に余ったお金が流れ込み、米国などの株価が歴史的な高水準になりました。投資先には飲食の宅配やネット会議サービス、オンライン教育などコロナ禍で事業が伸びた会社が多く、新規上場時の株価が買ったときの10倍以上になったところもありました。これまで国内の企業はリスクをとって巨額投資をすることには慎重でしたが、SBGは孫氏のもとで成長企業を見極め、かつてない純利益を達成しました。

スマホの会社から投資会社へ

 もちろん、投資にはリスクがつきものです。実際、SBGの1年前の決算では、投資した企業の事業失敗などで1兆円近い大赤字を記録しました。孫氏は決算発表の記者会見で「ほんの1年前には史上最大の赤字というようなこともあった。SBGにとっては1兆、2兆の利益だ赤字だというのはもうニューノーマル。その程度であまり驚かない方がいいという状況だろう。(今回は)たまたまのたまたまのたまたまが重なって一時的な利益がふくれ上がった」と語りました。

 子会社であるソフトバンクの携帯電話事業のイメージが強かったSBGですが、孫氏は今後について、「金の卵の製造業になる。5兆円、6兆円で満足する男ではない。10兆円でも全然満足していない。去年を大きく上回る数の上場があると見込んでいる」「まだまだ満足していない。これからもっと大きな夢を達成してみせる。まだ成長の余地があると思っている」と述べました。投資会社として数倍の規模をめざす考えです。

トヨタは世界1000万台回復めざす

 一方、この1年のトヨタ車の売れ行きはコロナ禍で大きく変動しました。ダイハツ工業と日野自動車を含むグループの世界販売台数は、上期(2020年4月~9月)が前年同期比19.0%減の401万台でしたが、下期(2020年10月~21年3月)は米国や中国の景気回復で12.4%増の507万台に。年間では5.1%減の991万台でしたが、調達部品や物流網の見直し、業務を効率化するトヨタ流の「カイゼン」を進めて生産コストを削減。日産自動車など他社が赤字や減益に苦しむ中、減収 増益となりました。世界的な半導体不足で各自動車会社の工場停止も相次ぎましたが、トヨタは東日本大震災以降、半導体を使う部品を積み増して1~4カ月分の在庫を確保しており、大きな影響はなかったといいます。改めて手堅い経営を印象づけました。2022年3月期の世界販売台数は2年ぶりの1000万台回復をめざします。

決算ニュースで会社を知ろう

 SBGの投資事業には、同社に莫大な利益をもたらすだけでなく、国内外の成長性の高い先進企業を見いだして支援することで世界の技術革新を進めるという意義があります。今後はSBGのような大胆な投資に力を入れる企業が他にも出てくるかもしれません。

 これに対し、トヨタは電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の開発を進め、静岡県裾野市に実験都市「ウーブン・シティ」を建設するなど大胆な試みもしていますが、自社やグループ会社で技術開発を進める地道なモノづくりの会社です。

 今回の決算ニュースを通じて対照的な両社の事業について企業研究を深め、どんな会社が自分に向いているのか、考えてみてください。志望企業の決算の発表資料に目を通すのもオススメです。何をめざすどんな会社なのかが見えてきますよ。

produced by 就活ニュースペーパー

木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)
プロフィル 木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)

1986年入社。政治部記者、採用担当部長などを経て就職情報サイト「あさがくナビ」編集長。「朝日学生キャリア塾」を立ち上げて就活生の指導も。サイト「就活ニュースペーパーby朝日新聞」では就活に役立つ情報を日々発信中。大学などでの講義・講演多数。著書に「最強の業界・企業研究ナビ2017」(朝日新聞出版)がある。

この記事をシェア