気候危機は「人類への厳戒警報」 1.5度上昇で熱波8.6倍に

<第75回> 文 木之本敬介
21年7月に起きたドイツ西部のバート・ノイエンアール・アールワイラーでの水害の様子(C)朝日新聞社
21年7月に起きたドイツ西部のバート・ノイエンアール・アールワイラーでの水害の様子(C)朝日新聞社

 猛暑の中での東京五輪が終わったと思ったら、各地で豪雨による被害が相次ぎ、夏の甲子園では連日の雨天順延で多くの試合が先送りされる異例の事態になっています。そんな中で発表された「国連の気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の新たな報告書が注目されています。異常気象を引き起こしている地球温暖化が人間の影響であることは「疑う余地がない」と、これまでより表現を強めて断言。今後20年以内に産業革命前からの気温上昇が1.5度に達する可能性があるとし、熱波、干ばつ、豪雨がさらに増え、氷河の消失や海面上昇は長ければ数千年続くとも予測しています。国連のグレーテス事務総長は「これは人類に対する厳戒警報」と評しました。地球や私たちの暮らしを守っていくため、各国の政府はもちろん、企業の温暖化防止の取り組みがさらに求められます。みなさんの就活、企業選びにもとても大きな影響を与えるテーマです。

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何世紀も続く環境変化

 気候危機は世界中で起きています。今年だけで、カナダ・米西海岸の熱波、ドイツや中国での洪水、ギリシャやトルコでの山火事などが頻発しています。日本列島も近年、過去に例がないような豪雨に見舞われ、毎年のように大きな被害が出ています。

 今回の報告書が確認したのは、地球は人類が経験したことのない環境変化のただ中にあり、それが何世代にもわたって続くということです。報告書によると、今の大気中の二酸化炭素(CO₂)濃度は過去200万年のどの時期よりも高く、この半世紀の気温上昇は少なくとも過去2000年で最も速く、夏の北極の海氷面積は過去1000年で最小になりました。20世紀以降の海面上昇も、過去3000年で経験したことがない速度で進んでいます。

1.5度上昇で「50年に1度の熱波」が8.6倍に

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 IPCCは気候変動について科学的な評価をする国際的な組織で、195の国と地域からたくさんの専門家や政府関係者らが参加しています。自ら研究を行うのではなく、最新の論文などをもとに報告書を作成。国際的なルール作りのための交渉や、各国が温暖化対策を考えるときの根拠になります。これまで、1992年の「気候変動枠組み条約」の採択、先進国に温室効果ガスを減らすよう義務づけた1997年の「京都議定書」の採択などにつながりました。18世紀の産業革命からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度におさえる目標を立てた2015年の「パリ協定」も、IPCCの報告書をもとに決められました。

 今回の報告書では、温暖化が進むと災害が何倍にも増えるという見通しを示しました。気温が1度上昇した現状でも1850年から1900年までの平均と比べて、「50年に1度の熱波」は4.8倍になっているのですが、1.5度上昇で8.6倍、2度上昇で13.9倍、4度上昇だと39.2倍にもなります(上の世界地図参照)。「10年に1度」レベルの熱波、干ばつ、豪雨の起きる確率も何倍にも増加(下の図参照)。温暖化対策を取らないと大変な事態になることがよくわかります。

 地域ごとの影響も分析しています。日本を含む東アジア地域については、豪雨の頻度と強さが増し、土砂災害が増える地域があり、台風も強くなり発生頻度も増えると指摘しました。

希望も示す

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 ただ、報告書は希望も示しています。今後、多くの化石燃料を使い続けると、今世紀末までに気温は4.4度上昇します。しかし2050年ごろまでに温室効果ガス排出を実質ゼロにして、植林や回収で大気中のCO₂を減らせば、上昇幅は一時的に1.5度を超えても、今世紀末に1.4度に戻る可能性があるというのです。

 いま各国は競うように温暖化防止策を打ち出しています。日本政府も昨年、2050年の温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にすると宣言。今年5月には目標を明記した改正地球温暖化対策推進法が成立。新しいエネルギー基本計画案では、再生可能エネルギーを「最優先」とし、2030年度の再エネ比率目標を36~38%として主力電源に位置づけるなど、脱炭素策を進めています。世界にとって大きいのは、米国の大統領が「温暖化はでっちあげだ」と公言していたトランプ氏から、対策に積極的なバイデン氏に代わったことです。米国はトランプ政権時代に離脱した「パリ協定」にも復帰しました。

企業の取り組み調べよう

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 国際エネルギー機関(IEA)は5月、「2050年実質ゼロ」に向けた報告書をまとめ、脱炭素社会への道筋を示しました。
◆新たな化石燃料の開発をやめる
◆2030年までに先進国で石炭火力発電全廃
◆すべての新築建物をゼロ排出仕様に
◆2035年までに内燃エンジン車の販売禁止
いずれも取り組みの主役は企業だということが分かります。

 日本企業や各業界の具体的な取り組みについては、
「脱炭素」新目標へ企業は必死! 志望企業の対応は?【2021年4月23日のイチ押しニュース】 で取り上げました。自分の志望企業がどう対応しているのかも調べてみましょう。

木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)
プロフィル 木之本敬介(朝日新聞社 就活コーディネーター)

1986年入社。政治部記者、採用担当部長などを経て就職情報サイト「あさがくナビ」編集長。「朝日学生キャリア塾」を立ち上げて就活生の指導も。サイト「就活ニュースペーパーby朝日新聞」では就活に役立つ情報を日々発信中。大学などでの講義・講演多数。著書に「最強の業界・企業研究ナビ2017」(朝日新聞出版)がある。

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