愛知県日進市の市役所周辺で18日夜あった花火大会で、福島県産の花火に対して市民らから「放射能をまき散らす恐れがある」などの声が寄せられたため、打ち上げを中止したことが19日わかった。
大会には11万人が来場し、約2千発が打ち上げられた。福島県川俣町の業者がつくったスターマイン1基(80発分)も打ち上げる予定だった。しかし、地元商工会や市職員有志らでつくる実行委員会によると、17日昼過ぎから電話やメールで市民らから「汚染された花火を使うな」など約20件の抗議や苦情が寄せられたという。実行委は放射能を測定する機器がないなど「大会までに安全性が確認できない」と中止を決め、愛知県内の業者の花火に替えた。
花火大会は昨年、7年ぶりに復活した。今年は東日本大震災の「復興支援」がテーマで、日進市に転居した被災者43人を特別席に招待し、18人が鑑賞した。実行委は「普通は花火の産地まで公表しないが、今回は東北3県の業者名をチラシに入れたことで注目を集めたのかもしれない」という。
市は花火を含む祭りに850万円を補助して、事務局を担当。萩野幸三市長は「市民の安全を守るのが市なので、実行委の判断を受け入れた。難しい決断だったと思う」と話した。
川俣町は一部が原発事故で計画的避難区域に指定されているが、花火を作った業者は区域外にあり、敷地内の放射線量は避難の目安となる基準を大きく下回っている。業者は「東海地方に避難している人もおり、福島の花火だと喜んでもらえると思い協力したのに残念」と話した。
一方、日進市産業振興課によると19日、中止を知った市民から「なぜ中止したのか」「放射能にあまりにも敏感すぎる」といった意見が市役所に電話で50件以上寄せられたという。(前川和彦、小泉浩樹)