2011年3月26日19時38分
東日本大震災の被災地にたまったがれきの撤去をめぐり、菅政権は作業時の私有地立ち入りなどを認める「指針」をまとめ、関係7県に通知した。ただ、現場の実態を十分踏まえた内容とは言えず、撤去作業が滞る事例があちこちで起きている。
「船はどう扱っていけばいいのか」。26日、宮城県庁で開かれた災害対策本部会議で村井嘉浩知事が嘆いた。
出席した海上保安庁の担当者は、県沿岸部で漂流中の船を245隻回収したが、所有者に返したのは13隻にとどまると説明。「回収する船の数はまだ増えることが予想される」と報告した。
船は海上だけでなく、陸地にも膨大な数が打ち上げられている。だが、政府の指針はいったん「仮置き場」まで移動することを求めており、この規定が被災地を困らせている。
港は破壊され、街にはがれきがあふれ、船の保管場所を見つけるのは難しい。がれきを撤去しても、公用地の多くは仮設住宅の建設候補地だ。県内だけで行方不明者は6千人以上に上り、船の持ち主が分からないケースもある。
船だけではない。行方不明者を捜索していた自衛隊は25日、県南部のがれきの中から大型金庫を見つけた。重さ20キロ。扉は開かず、だれのものかも分からない。地元自治体に預かってもらうことになったが、保管場所が足りなくなるのは確実だ。
被災現場では、アルバムや写真など被災者の「思い出」につながる品々も見つかっている。自衛隊は現場で箱に入れて保管し、住民が手にとって見られるようにしている。ただ、いつまで置けるか分からない。自衛隊幹部は「どうすればいいのか、教えてほしい」と頭を抱える。
家屋をめぐっても課題がある。指針は、壊れた家屋の価値判断を土地家屋調査士に委ねているが、同県には282人しかおらず、全国から応援がなければ作業は滞りかねない。宮城県土地家屋調査士会の鈴木修会長は26日、被害が甚大だった石巻市や女川町に入り、がれきを前に「自分の家が勝手に処分されたといったトラブルがないように、早急な対応が必要だ」と語った。(堤之剛、川端俊一、田伏潤)