2011年3月29日7時52分
津波で市街地がほぼ壊滅した宮城県南三陸町の志津川中学校で28日、延期されていた卒業式が開かれ、96人が巣立った。大津波の夜、口ずさんで励まし合った歌を、この日は新たな道に踏み出す決意を込めて歌いあげた。
津波が町をのみこんだ11日は卒業式の前日だった。学校は高台にあり、生徒は無事だったが、家には帰れない。停電した校舎で、避難した住民約250人と夜を過ごした。
あかりは理科室から持ち出したろうそくだけ。情報もなく、不安が募る。そんなとき、3年1組の教室から歌声が響いた。
〈思い出が時間を止めた 今日の日を忘れるなと〉
人気グループ、EXILEの曲「道」。式のために練習した歌を誰かが口ずさむと歌声が広がり、下級生も加わって大合唱になった。
半月遅れで迎えた卒業式。式には校内で避難生活を送っている住民も参加した。停電でマイクは使えず、菅原貞芳校長(58)が大きな声で一人ひとりの名前を読み上げた。卒業生代表の山内拓さん(15)は「心の中は不安でいっぱいですが、希望の光をともさなければいけません」と決意を述べ、あの曲を卒業生全員で歌った。町の復興を願う歌声が、体育館に響き渡った。(武田肇、三浦英之)