2011年5月7日3時1分
東京電力福島第一原発事故で避難中や避難後に体調を崩し死亡した人の遺族について、厚生労働省が「災害弔慰金」の支給対象とする見解を福島県に伝えたことがわかった。災害弔慰金は自然災害で死亡した人の遺族に支給すると定められているが、地震などに発した原子力災害に適用される初のケースとなる。
原発事故の損害賠償をめぐっては、国の原子力損害賠償紛争審査会が4月下旬、主な賠償対象を示した1次指針で「避難などを余儀なくされ健康状態が悪化して死亡した逸失利益など」も含むと明示。ただ、具体的な賠償の額や日程は示されておらず、災害弔慰金の支給は遺族の早期救済の意味も持つ。
第一原発周辺の市町村によると、避難後に死亡した高齢者らは少なくとも60人以上いるという。今後、市町村が死亡届の記載内容などから因果関係を判断し、支給の可否を決める。
政府は原発事故の起きた3月11日、第一原発から半径3キロ以内の住民に避難指示を出した。12日に半径20キロ圏内と、福島第二原発から半径10キロ圏内に拡大。4月22日には第一原発の半径20キロ圏内を警戒区域に設定し、原則として立ち入りを禁じた。
避難を余儀なくされた住民の中には、移動を繰り返し、衰弱したり持病が悪化したりして死亡した人がいる。県や市町村には、遺族から、原発事故に伴う避難でも弔慰金が支給されるか問い合わせがあるという。
厚労省は今月2日、今回の震災に伴う災害弔慰金を速やかに支給するよう各自治体に周知し、予算措置するよう各県に通知。一方、福島県が、原発事故の関係も支給対象になるか照会したのに対し、同省は「今回の原発事故は地震・津波と因果関係があるため、支給対象となる」との見解を示したという。
阪神大震災や新潟県中越地震では、市町村が医師や弁護士らで構成する審査会を作り、診断書などをもとに関連を調べて災害関連死にあたるか判断した。(北川慧一)
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〈災害弔慰金〉 「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づき、市町村が条例を定め、洪水、地震、津波などの自然現象で死亡した人の遺族に支給する。ほとんどの自治体の支給額は、生計を担う人の死亡の場合500万円、それ以外は250万円としている。財源の負担割合は国が2分の1、都道府県と市町村が各4分の1。家屋の倒壊や津波に巻き込まれるなど直接的な死亡のほか、被災のショックや避難生活のストレス、疲労などで持病を悪化させるなどして亡くなる「災害関連死」も対象で、阪神大震災では約900人が関連死とされ、遺族に支給された。