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2012年1月5日8時35分
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被災地の寺社、再建できず 檀家・氏子被災で資金難

写真:災害危険区域内に残された墓地。新年を迎え、墓参りに訪れる人の姿があった=4日午後2時40分、仙台市若林区荒浜拡大災害危険区域内に残された墓地。新年を迎え、墓参りに訪れる人の姿があった=4日午後2時40分、仙台市若林区荒浜

 東日本大震災の被災地で、寺や神社の再建が行き詰まっている。政教分離の原則などで直接の公的支援を受けることができず、檀家(だんか)や氏子らが被災したため震災前のようにお布施などを募るのも難しい。地域の風習を支えてきた寺社が消えようとしている。

 「ここまでひどいとは……」。宮城県南三陸町の神社では、大みそかから元旦にかけての参拝客が約30人しか訪れなかった。例年の10分の1だという。

 津波で壊滅した地域にあるこの神社では、約1100戸あった氏子のうち約8割の家が流失。親族に死者が出たため初詣を自粛する人も多かった。「氏子の方々が果たしてこの地域に戻って来るか。なんとか踏ん張りたいが、現状を考えると何とも言えない」と宮司(75)はうなだれた。

 すでに神事を執り行えなくなった神社もある。同町沿岸部の地区では元日、数えで33歳になる女性の「厄払い」をする。例年は厄払いを受ける側から、地域に二つある神社のどちらかに神事を依頼してきたが、今年はいずれからも「もうできない」と断られた。隣の地区の神社に頼んで、ようやく実施できたという。参加した女性は「神社さんにも色々な事情があるのはわかる。でも、地域の神社が消えてしまうのはやっぱり寂しい」と話した。

 同町の別の神社は、高台の本殿は無事だったものの、境内にある社務所や鐘つき堂は壊れ、復旧の見通しは立っていない。母親が今も行方不明という宮司(69)は「この地域では氏子に維持金などを求めていないし、わずかな寄付やお札の代金などで細々と運営している状況だ。子どもに跡を継いでくれとはとても言えない」と打ち明ける。

■政教分離 公的支援なし

 仙台市若林区荒浜の浄土寺の墓地には、横倒しになったままの墓石が並ぶ。東京から墓参に訪れた会社員の男性(56)は、一人暮らしの母(79)を震災で亡くしたが、墓石が壊れ、納骨できないという。「早く落ち着かせてあげたいんだけどね」と話し、土台だけになった墓に手を合わせた。

 寺は本堂や庫裏が津波で根こそぎ流失。檀家約140人も犠牲になった。市は昨年12月16日、荒浜地区の大半を住宅の新増築ができない「災害危険区域」に指定。跡地を公園などの形で再開発する計画だ。住職の中澤秀宣さん(62)は檀家に「墓石の修復は最小限で」と書いた文書を送った。

 中澤さんと家族も元の場所に住めなくなった。礼拝施設だけなら元の場所で建て直すこともできるが、檀家も今後、集団移転するため、移転先の近くに寺を再建することを考えている。しかし、住民から移転の希望が出ている4キロ内陸の場所で、今と同じ広さの境内地と墓地を購入すると6億円かかる計算だ。「とてもそんなお金を、全てを失った檀家に(お布施として)求められない」と中澤さんは嘆く。

 新しい墓地をいつ造れるか分からないため、元の場所には、宗派からの義援金でプレハブの小さな「仮本堂」を建てることを決めた。3月11日の「一周忌」に間に合わせたいという。檀家の安達肇さん(78)は「寺は地域の核。行政ももう少し支援できないものか」と話す。

 東日本大震災で被災した個人や法人の事業者の建物のうち、住宅を兼ねる事務所や店舗などには国の防災集団移転促進事業で移転費や解体費などの助成がある。事業用途のみの建物に同じ助成はないが、自治体が移転元の土地を買い取ることはできる。

 しかし、文化庁によると、寺や神社などの宗教法人は、憲法が定める「政教分離の原則」により、直接的な公的支援を受けることができない。集団移転に伴うこうした助成も対象外で、庫裏など住居を兼ねる施設への助成が法的に可能かどうかの解釈も定まっていない。

 全日本仏教会と神社本庁の昨年7月末までの集計では、震災で179の寺院、309の神社が全半壊した。同5月までに住職21人、神職8人が死亡、行方不明になっている。(中村信義、三浦英之)

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