東日本大震災の津波の際、高速道路が住民の「避難場所」になったことを受け、主に海沿いの高速道ののり面などを避難場所にする動きが全国に広がっている。高速道は他の道路と交差しないよう高所につくられている例が多いからだ。国土交通省も震災を受け、道路と避難場所の一体整備へかじを切る方針だ。
震災時、仙台市若林区を通る「仙台東部道路」では、約230人が盛り土構造の道路に上って助かった。約3メートルの津波が押し寄せたが、道路の高さは約7〜10メートルだった。この事例を受け、愛知県、名古屋市消防局、大阪府、宮崎県西都市など29の自治体・行政組織が、国や道路会社に、高速道を避難場所として利用できるよう求めていることがわかった。
高速道は交通事故の危険性から原則、立ち入ってはいけない。しかし国交省や道路会社は、自治体が新たに津波避難ビルを造るよりもお金も時間もかからないこともあり、避難場所としての利用が可能と判断した。首都高速や阪神高速など交通量の多い大都市部の高速は消防や警察、物流確保のための緊急道路としての利用を優先するため、除外する方針だ。
すでに、被災地の宮城県では仙台市と名取市の仙台東部道路の6カ所に避難用階段を設置。岩沼市には仮設階段があり、亘理町でも調整が進む。国交省が整備を進める「三陸縦貫自動車道」でも、のり面に避難階段を付ける方針だ。
被災地以外では徳島県、徳島市が昨年8月、西日本高速と、四国横断自動車道(徳島IC〜鳴門JCT)に避難所を設置する協定を結んだ。のり面に数十人が逃げ込める避難所を設置する。11月には静岡市、焼津市が中日本高速と協定を結んだ。両市を通る東名高速の約10キロののり面を避難所に利用する。
西都市のように、海から約10キロほど離れているが、近くの川を津波が逆流することを想定し、避難場所への利用を求めている例もある。
道路会社と自治体の協議では課題もあるという。高速道を避難場所として利用する場合、もともとの整備目的からはずれることもあり、両者で階段設置費用の話し合いが必要となる。また、階段の設置で高速道へ人が入りやすくなる。通常時に子どもなどが入らないよう管理する責任をどうするかという問題も生じるという。(座小田英史)
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■高速道路を避難場所に検討する主な自治体、行政組織(朝日新聞調べ)
・仙台市、宮城県岩沼市、同名取市、同亘理町
・静岡市、静岡県焼津市
・愛知県、愛知県弥富市、同愛西市、同蟹江町、同飛島村、同大治町、名古屋市消防局
・三重県紀北町、同川越町
・兵庫県尼崎市
・和歌山県
・大阪府
・徳島県、徳島市
・高知県須崎市
・宮崎県西都市