東京電力福島第一原子力発電所の事故によって大気中に放出された放射性セシウムの総量は、最大約4京(けい)ベクレル(京は兆の1万倍)に上るという試算結果を気象庁気象研究所などがまとめ、28日公表した。
旧ソ連のチェルノブイリ原発事故での放出量の約2割に相当し、従来の国内外の機関による推計値の約2倍だ。今回は北太平洋79地点で採った海水の放射能の実測値をもとに計算したのが特徴で、これまでの試算に比べ、より実態に近いと期待される。
原発事故で放出された放射性物質の3割は陸、7割は海に広がったとされる。そのため、海のデータを考慮しないと、正確な放出量を試算することは難しい。
気象研の青山道夫主任研究官らは昨年4〜5月時点の海水のセシウム濃度を測定。これをもとに、大気や海洋での拡散モデルを用いて原発から大気中への放出量を計算したところ、セシウムの総量は3京〜4京ベクレルとなった。
このほか、このうちの約7割にあたる大気から海への降下分と、東京電力が原発から海に放出した汚染水の放射能を合わせると、推定約2.4京〜3京ベクレルが海に流出したと推定された。
セシウム137の大気への放出量(1.5京〜2京ベクレル)で比較すると、日本原子力研究開発機構の値は0.88京ベクレル。国内外の研究者が出したデータは0.7京〜3.5京ベクレルとばらついていた。
研究結果は茨城県つくば市内で開かれている「環境放射能」研究会で発表された。(岡崎明子)
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東京電力は28日、福島第一原発の港で、作業船から海底に試験的にセメントを流し込む工事を始めた。海底を覆い、たまった放射性セシウムが巻きあがって沖合に広がるのを防ぐ。3〜4カ月で完了させる。
防波堤の内側の海底約7ヘクタールを覆う予定。試験注入では、どれぐらいの厚さで覆うと効果が出るかを確かめる。悪天候で海が荒れ、工事が中断していた。