東京100days 新型コロナウイルスの記録 - プレミアムA

2020年、東京の風景は多くの人が思い描いていたものとは全く異なる姿になった。

1月24日。東京都内で初めて新型コロナウイルスの感染が明らかになった日だ。その後、街からマスクやトイレットペーパーが消え、五輪・パラリンピックが延期に追いこまれ、緊急事態宣言が出されることを、この時、誰が想像できただろう。

未知のウイルスとどう向き合い、誰がどう動いたのか。医療崩壊の危機に直面した首都の100日間を、小池百合子都知事らの動きと、東京都の感染者数のデータで浮き彫りにする。

公開 2020/5/15

更新 2020/5/22

屋形船に潜り込んだウイルス

2020.1.18(土曜日)

2019年末、中国・武漢で原因不明の肺炎の集団感染が確認された。

「武漢で初の死者」「新型コロナウイルス検出」「国内で初めて感染確認」……。年が明け、新聞の見出しは少しずつ大きくなった。それでも専門家は「過度に恐れる必要は無い」とし、日本で暮らす多くの人たちにとっては、対岸の火事と映っていた。

1月18日夜。氷雨が降り注ぐ東京・隅田川を進む屋形船で、約70人が食事やカラオケを楽しんでいた。後に参加者の新型コロナ感染が次々に判明し、東京都内で初めてのクラスター(感染者集団)とみなされることになるタクシー組合の新年会だった。

東京都は当初、屋形船と中国・武漢からのツアー客との「接点」を強調した。だが、小池百合子知事は3月の都議会で「屋形船が発生源でないことは明確」と発言した。当時、調査を担った保健所関係者は「都の勇み足のために、屋形船がクラスターの象徴のように扱われ、大変な迷惑をかけてしまった」と話す。「屋形船クラスター」の実像を、独自取材で追った。

記事と動画で詳しく
東京都内の感染者の日別数
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1
10
25
50
75
100
150
200+
都が保健所から報告を受けた日ごとに発表した人数を、色の濃淡で示した
1.24都内で初の感染者
2.13都内在住者、初の感染
2.19クルーズ船の大規模下船開始
2.27全国に休校要請
3.203連休初日
3.24東京五輪延期決定
3.29志村けんさん死去
4.7緊急事態宣言
4.16全国に緊急事態宣言
5.1安倍首相、宣言の延長を表明
現在
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14日後
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潜伏期間長くて14日ほど 日別増加数 累計
chapter1

国内上陸、身構える東京

1月24日、東京都内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認された。この日は、ちょうど東京五輪の開幕まで半年の節目だった。当時、その後の東京を想像できた人がどれだけいただろうか。

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新型コロナウイルスの潜伏期間は長くて14日程度とされ、濃厚接触者となった人への自宅待機要請も14日間だ。東京の日別感染者数を、14日後の人数と比較しながら100日間を追っていく。

day1

2020.1.24(金曜日)

都内で初の感染者

小池知事は記者会見で2020年度の予算編成が東京五輪・パラリンピック後をにらんだ内容になっていることを強調した。この日、武漢からの旅行者が都内初の感染者として確認されたが、50分超の会見で新型コロナウイルスに関する質問をした記者は1人。都の予防措置の強化などについてだった。

小池百合子・東京都知事

正しい知識を持って冷静に対応してほしいというのが、都民へのお願い

都危機管理対策会議で
小池知事

大会後の東京がいかに輝き続けられるか

2020年度の当初予算案発表会見で
朝日新聞2020年1月25日朝刊

day7

2020.1.30(木曜日)

チャーター便帰国者の対応について、政府に協力を申し入れる

東京都はチャーター便帰国者の滞在先として都の施設や都内のホテルを選出。空港から運ぶ都バスも手配し政府に協力を申し入れたが反応はなかった。帰国者は千葉県の勝浦ホテル三日月へ。

都幹部

我々の申し出には何もレスポンスがなかった。一体、何を考えているのか

武漢から羽田空港に戻ったチャーター機=2020年1月30日

day13

2020.2.5(水曜日)

ダイヤモンド・プリンセス号、乗員乗客10人の感染を確認

横浜港・大黒ふ頭に近づくダイヤモンド・プリンセス号=2020年2月6日

14日後乗客らの下船が本格的に始まる

day15

2020.2.7(金曜日)

ダイヤモンド・プリンセス号で新たに乗客41人の感染を確認

政府は集団感染はあくまで特殊な環境下で起き、国内とは違うと強調。知事は新型コロナ対策として補正予算案を編成する方針を明らかにした。同日時点で都内の感染者数は3人で、いずれも中国からの渡航者だった。

東京都の乗客男性

早く下りたい。目の前に横浜があるのに

取材で
加藤勝信・厚生労働相

閉ざされた空間に一定期間一緒にいて、接触が繰り返された結果、これだけ増えたんだろう

記者会見で
小池知事

今日はクルーズ船のダイヤモンド・プリンセスの乗客の感染などで41名が新たに加わったということでございますが、事態は、厳しいと言わざるを得ないと思います

記者会見で

day21

2020.2.13(木曜日)

都内初の日本人感染者確認

都内初の日本人感染者が確認された。70代のタクシー運転手の男性で、神奈川県在住の親族の女性は国内最初の死者となった。2日後、このタクシー運転手と屋形船で居合わせた7人の感染が判明。都は夜に記者会見を開いた。この時点での都内感染者14人の中で感染経路の手がかりがない人はいなかった。

内藤淳・都福祉保健局局長

都民の皆さまには安心して頂きつつ、正しく恐れてもらいたい

記者会見で
吉田道彦・都感染症危機管理担当部長

屋形船がきっかけで感染が拡大した。ただ、今は決して手に負えない状況ではない

15日、取材で

14日後安倍晋三首相が全国の学校に休校を要請

chapter2

狭まる自粛包囲網

東京都内では、日本人の初感染が確認された後も、感染確認が1日数人程度にとどまっていた。東京マラソンは五輪代表選考のエリート枠に絞って開催されることに。ただ他の自治体では、クラスター(感染者集団)が判明しつつあった。感染は点と点がつながり、広がっていた。

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day25

2020.2.17(月曜日)

東京マラソンの一般参加枠中止を発表

東京マラソンを主催する財団は、東京五輪の代表選考を兼ねる「エリートの部」は実施するとしたが、沿道での応援は自粛を呼びかけテレビなどでの観戦を勧めた。例年の大会では約100万人が沿道に繰り出すが、異例の対応となった。

都幹部

トップランナーはちゃんと走ってもらわなくてはいけない。五輪の選考があるのだから

取材で
都の対策会議に臨む小池知事=2020年2月17日

day26

2020.2.18(火曜日)

新型コロナウイルス対策の補正予算案を発表

都はテレワーク促進企業支援などを盛り込んだ補正予算案を提出。そのほか、検査体制の強化や観光客減少などに伴う経済対策を計上した。

小池知事

日本社会でテレワークを一気に加速させるという思いを込めて取り組む

補正予算案の発表で

day27

2020.2.19(水曜日)

ダイヤモンド・プリンセス号から大規模下船開始

せきや発熱がなくウイルス検査で陰性だった乗客は公共交通機関などで帰宅したが、その後に感染が判明した乗客もいた。

ダイヤモンド・プリンセス号から下船する乗客=2020年2月19日

day32

2020.2.24(月曜日)

政府の専門家会議が見解示す

国の専門家会議が「瀬戸際」と指摘したこの日までに、都内での感染者は累計32人。1日あたり数人程度で、感染者が確認されない日もあった。

専門家会議

これから1~2週間急速な拡大に進むか収束に向かうか瀬戸際

菅義偉・官房長官

国内の複数地域で感染が明らかではない患者が発生し、現時点では大規模な感染拡大を防止する上で重要な局面

翌25日の記者会見で

14日後花見シーズンが間近に。警戒した小池知事は花見自粛を呼びかけていた

day34

2020.2.26(水曜日)

都内在住者で初の死者

安倍首相が大型イベントの2週間自粛を要請する中、都教委は都立学校での春休みの前倒しなど、これまでより踏み込んだ対策を発表した。

安倍晋三首相

多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベントは大規模感染リスクがある

政府対策本部の会合で
小池知事

ここは正念場だ、これは戦いだ、見えない敵に向かっての戦いだ

記者団に
テクノポップユニット「Perfume」の公演が中止になった東京ドーム=2020年2月26日

14日後WHOがパンデミックを宣言

day35

2020.2.27(木曜日)

首相が全国の休校要請表明

「安全第一」として、全国すべての小中高校などに臨時休校を求める異例の要請に踏み切った。

安倍首相

何よりも子どもたちの健康、安全を第一に考える

政府対策本部の会合で
小池知事

色んな課題はあると思うが、できるだけ早く整理したい

記者団に
長女が区立小に通う女性会社員

信じられない。来週からなんて急すぎる。年度末で会社は休めない

29日、取材で
黒板に貼られた卒業式までのカウントダウンカレンダー=2020年2月28日、長野県須坂市立小山小

IOC幹部が五輪開催の是非について言及

国際オリンピック委員会(IOC)幹部の発言に波紋が広がったが、都庁内では重みを持って受け止められず、都幹部は「今年の7月開催に向けて動くのみ」と述べた。

コーツ・IOC調整委員長

五輪を予定通り開催するかを3カ月以内に判断する

豪州のメディアに
都幹部

突然で唐突。淡々と受け流せばよい

取材で

day36

2020.2.28(金曜日)

北海道で週末外出自粛求める独自の「緊急事態宣言」

鈴木直道・北海道知事

北海道で感染を抑えこめば全国のモデルケースになる

記者会見で

14日後五輪・パラリンピックを延期する案が関係者の間でも浮上する

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第3章以降では、五輪中止の回避を模索する動きや、緊急事態宣言をめぐる都と国との駆け引きを中心に、舞台裏を追う。