2018年11月15日、北海道地震の被災地へと向かう機内。天皇、皇后両陛下は窓際へと移り、厚真町の方向を見つめていた。
9月6日に発生した北海道地震は最大震度7、死者43人にのぼった。道内全域で一時停電が起こるなど、暮らしも大きく混乱した。中でも厚真町では土砂崩れが起こるなどして、道内の死者の大半が集中した。
昼過ぎ、両陛下を乗せたマイクロバスが、厚真町役場近くの、救援活動の拠点となった施設に到着した。
自宅が全壊判定を受けた女性は沿道で手を振った。「地震以来何もする気になれなかったけど、気持ちを切り替えようと思えた。こんなに遠くまでお越しいただいて、本当にありがたい」。父母と祖母を亡くした町職員の男性は、皇后さまから「しっかりとお元気でお過ごしください」と声をかけられ、「これからの人生で、つらいときに何とか踏ん張れる糧になったと思う」と話した。
同行した高橋はるみ・北海道知事は、両陛下の訪問に先立つ9月25日、皇居・御所でお二人に被災状況を説明する機会があった。約40分にわたりメモを取りながら熱心に話を聞く、お二人の姿が心に残っていた。
北海道からお見送りする空港では、皇后さまから「お大切に」と声をかけられた。「北海道民すべてに、これから寒い冬のなか『大切に、復旧復興を急いでいってください』というお気持ちの表れ」だと受け止めた。
「平成」は多くの自然災害に見舞われた時代でもあった。
雲仙・普賢岳噴火や阪神大震災、東日本大震災……。天皇陛下は退位の意向をにじませた「おことば」を公表した後も、西日本豪雨や北海道地震の被災地を訪れた。「祈りの旅」を続けられた。